Case3-31 少女

 やけに長い階段ではあった。

 少女の感覚としては、四、五階分は降りたのではないだろうか。途中で思わず、この階段は下へと永遠に続くのではないかと考え、引き返しそうになったほどだ。

 だが、言ってしまえば目立ったことはそれくらい。

 少女は現在、最下部の踊り場にまで辿り着き、電子パネルが添え付けられた自動開閉式の鉄扉の前にまで来ていた。

 それも、拍子抜けするほど呆気なく、当たり前のように何事もなく。


 ただ問題はここからで、おそらく母の“らぼ”は鉄扉の先にあるのだが、少女にはそこに進むための手立てがなかった。

 自動で開くものだと思い、鉄扉の前に立つ少女……鉄扉はうんともすんとも言わない。


「……」


 今度は扉横のパネルに目を向けるとそちらへ。

 自分の身長より高い位置に設置されたパネルの前に立ち、背伸びをして画面を覗き込む。真っ暗だ。

 なんとなくタッチしてみる少女……うんともすんとも言わない。


「……」


 もう一度タッチしてみる少女……うんともすんとも。


「……」


 もう一度……うんとも。


「……」


 もう一度…もう一度…もう一「う゛うう!!」

 応えないパネルに苛立った少女は、とうとうバシッ!っとパネルをぶっ叩いた。

 すると次の瞬間――

 バツリッ!という音が響いたかと思うと、なんと辺り一面が真っ暗になってしまったではないか。

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