Case3-21 少女

 そこに突然、慌ただしげなノック音が響く。体をびくつかせて扉に目を向ける少女。

 返事を待たずして扉が開かれる。

 すると、初老と見られる男が、焦りを浮かべて室内に入り込んできた。

 青色ベースの一般警備員服を身につけた男は、足早にまっすぐ少女のもとへ。


「レナちゃん、ちょっと緊急事態が起きちゃったから、この研究所から外に出よう。ね。ほら起きて」


 そう言って少女の体を起こしソファに座らせる。

 男は床に揃えられていたポップで可愛らしい靴を手に取ると、片方を少女に手渡し、もう片方を少女の足にかせはじめる。

 少女もまた、急な事態に困惑しっぱなしのままではあったが、いかにも大変そうな警備員のおじさんに合わせて渡された靴をせっせと履き終えた。


「よしじゃあ行こう」


 準備が完了するやいなや、少女は男に手を引かれて移動を急かされる。悪夢でかいた寝汗は既に冷えていて、急に動くと服と擦れてじっとり気持ちが悪い。

 ――と、そんなことに気をとられている間に、気がつけば既に警備員用の休憩室を後にしていた。

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