Case3-18 少女
わかっている。いるはずがない。
今までもそうだったのだ。この、ビルが
何も不安に思うことなんてない。
わかっている。
わかっているはずなのに、
それなのにも
少女は自分でもわからないまま
それは何故か。
少女は一つ、大きな勘違いをしていた。
確かに、蛇は怖い。あの得体の知れない体の動き、そして、思い出すほどに痛みが大げさになっていく牙のイメージ。
だが違う。それではないのだ。そんな表面的なものではない。
少女は自分でも気づかぬ間に、心の奥底で、「蛇」に対して、蛇なんかよりももっと強い恐怖を抱いていた。
その恐怖とは、「死」そのものである。
少女は、蛇という存在を通して、その先にある「死」を感じ取っていたのだ。
あの夜にて、産まれて初めて、死ぬという根源的怖れがその小さな体に鋭く刻み込まれた。それは蛇に対するものとは比べものにならないほどに支配的だ。
ただ少女は、幼いが為にその感情の名を知らなかったにすぎない。だから無意識に蛇という名をつけざるを得なかった。
突如姿を現し、理不尽にも命を連れ去っていく――少女にとって、「蛇」とは正に、「死」の象徴と化していた。
この恐怖は、どこへ逃げても、影と等しくまとわりつくもの。
いずれ鈍感になることはできたとしても、少女がこの恐怖を忘れることは、少女が生き物であり続ける限り、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます