【超短編】勇者の分際で王に反乱を起こしたのでサッと倒して来ます。

@couzu

本編

 見回りをしていた部下が息を切らして私に告げた。


「——我が王よ! 大変です! 冒険者らしきパーティーがこの城に攻めてきました! そのパーティーの人数は・・・・五人です!」


 え、私は驚きのあまりそんな声が出そうになった。


 私はこの世界の住民に重税を課しているわけでもないし、まして住民の権利を奪っているわけでもない。

 

しかし、それ以上に私が驚いたことには理由がある。 


「なぜだ! この城の周りには私の信頼できる部下たちを配置させていたはず・・・・。 まさか・・・・」


「——はい、そのまさかです。 彼らも含め、城の周りにいたものは一人残らずそのパーティーに惨殺されてしまいました」


 私はこの国で最も強い者から順に部下として採用したはずなのだ。王である私には勝てなくとも、並大抵の冒険者では百人が束になっても太刀打ちできないだろう。 


それをたった五人で——


「勇者のパーティーか・・・・」


 この国には、勇者が存在している。勇者は魔王を倒すという目的のため神様に選ばれた一般の冒険者の約千倍ほどの力を持つ存在だ。


 その勇者がこの城に攻めてくるとはな。 それでは私の部下でも相手ができるはずがない。

 

 それ以前に、私がその勇者に勝てるのだろうか。だが、私がここで勇者に負けては、勇者から命からがら逃げて来た者も一緒に消されてしまう。そんな不安があった。


 しかし、私は落ち着いた様子でこう言った。


「勇者の分際で王に歯向かいおって・・・・ 私がその勇者の相手をしよう。 なぁに軽く倒してくるだけだ」


 正直言うと私はその勇者を恐れていた。私達の一族はどうも冒険者に憎まれているらしい。先代の王も奇襲をかけられ冒険者にやられている。

 

 だが、ここで私が弱音を吐いていたならば他の者の戦意も奪ってしまう。そうなれば完全におしまいだ。


 先代の時とは違い今回は奇襲ではない。勇者とは真っ向勝負ができるだろう。さらに私は先代よりも強いという自信がある。



「——ご武運を魔王様!」


そんな部下の声に耳を傾け、私は戦場に向かった。

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