第9話 一人でレベル上げするには

 ――と、ここでちょっと考えてみる。


 生活を豊かにするためには、もっともっと、いーーっぱいアプリが必要だ。目指すはaで始まってzで終わるような総合的なショッピングアプリ。楽して暮らすには必須のアプリ。

 そのためには、魔力数を上げる必要がある。よって、レベル上げは必須。


 ――さて。


 この先、アドルフとテオドールのサポートなしで、一人で戦うとしよう。まあ多分、確実にそうなると思うけど。

 今ある武器は短剣一つだけ。風の加護がついていて、接近しなくても攻撃できる点はありがたい。でも、のろくて弱い敵じゃないと、竜巻攻撃だけでは勝てない。

 もうちょっと確実に仕留められるような武器が欲しい。うーんと強いやつが。でも、この世界の武器を使って真っ当に勝つには、それなりの使い手にならないと難しいはず。


 ――となると。


 手っ取り早いのは、前世の世界の武器使用だ。いや、本物の物騒な武器じゃなくて、サバゲーレベルの武器、とはいかないまでも、飛び道具っぽいおもちゃとか。

 そんなのをどうにかこうにかして、チートな威力を出せるようにできないものか。



 うーん。

 うーーーーん?

 やっぱ分からん。



 サバゲーのBB弾って、確か植物由来とかの商品があった気がする。

 プラ製品は、なんとなくこっちの世界にばら撒いちゃいけない気がするんだけど、バイオ系で生分解されるなら大丈夫かな?

 でも、あの小ささよ。

 硬い皮膚に覆われた巨体な魔物だと、ピクリともしないかも。

 ちょっと使えないか。


 じゃ、短剣にプラスαする形で考えてみよう。

 風と相性がいい武器。やっぱ火かな。風で威力を増すもんね。火炎放射器の炎がブワーって広がるみたいな。

 でも火って、爆弾とは違うよね。爆弾だと、やっぱりこっちの世界にない素材がいっぱい散らばっちゃうから、なんかダメだよね。

 自然に還らないっていうのは、ルール違反というか、子どもが口に入れたりしたら大変だし。いや子どもって――。人間の子? 魔物の子? さて? はて?


 ああー。やっぱ炎とか、魔法でポッと出せたら楽なんだけどな。結局そこなんだよね。

 炎……マッチ? いやいや。マッチすったところで、風で消えちゃうじゃん。

 大量の火薬なら花火でなんとかなるかもしれないけど、それって結局、爆弾に近づいているし。風の威力でどうこうじゃないよね。

 ガソリンをまいたところに誘い出して、マッチをシュッてやるのは、ちょっと狂気じみていて怖い。それも風と関係ないし。



 …………。


 とりあえず保留。もう分かんない。しばらくは竜巻で倒す。よっし。数をこなすことにしよう。


 そうと決まれば、ポーションを買っておかないと。一番いいやつを買おう!

 ふっふー。




 改めて道具屋訪問。金ならあるし。意気揚々と入っていく。俺は間違いなく上顧客だぞ。


「こんにちはー」

「いらっしゃいませ。今日は何をお探しですか?」


 店主はすっごい笑顔だ。しかも、もみ手付き。どうやら覚えていてくれたらしい。まあ昨日の今日だしね。


「あの。ポーションなんですけど。一番いいやつをください」

「一番いいやつ? ええと。当店が取り扱っているものですと、こちらになりますが」


 店主が遠慮がちに勧めてくれたのは、魔力と体力をそれぞれ5,000相当回復するものだった。


 よっし! それそれ!


「じゃあ、それを一つずつください」


 どーよ。値段も聞かずに即購入。ふっふー。俺の身なりからはお金持ってなさそうに見えたでしょう?

 心配ご無用。金ならあーる! 何度でも大声で言いたい。金ならあるのだー!


「で、では、合わせて百四十ギッフェになります」


 なんだか、「買えますか?」って言われたみたいに聞こえた。

 買えるのです!


「ちょっと待ってください。ステータスオープン」


 うっひっひ。ああ、変な笑い声が漏れちゃう。いくら使っても無くならない感覚って最高!


「はい、どうぞ」

「は! あ、ありがとうございます。では、こちらを」


 ポーションゲット! 当分はこれを増やして使えば問題ないな。


「ちなみに、魔力ポーションと体力ポーションは同じ値段なんですか?」

「え? ああ、いいえ。魔力ポーションの方が高いのです。そちらは、魔力ポーションが百二十ギッフェで、体力ポーション二十ギッフェです」

「そうだったんですね」

「あのう。何か問題が――」

「いえいえ! 大丈夫です。それではまた!」

「は、はい。ありがとうございました」


 店主は、平民の俺に高額商品がなぜ買えるのだろうかと、最後まで不思議そうな顔をしていた。


 まず、忘れないうちに、ポーションを両方とも四つに増やしておく。それから森だ。




 森の中に入ると、とにかく数をこなすのだと、手当たり次第やっつけていった。


 マリモみたいなのが集団で襲ってきたけど、竜巻でバーン。うさぎの耳がついた芋虫っぽいのも、三匹まとめて、かまいたちでシャシャシャーン。

 そんなこんなで十五匹は倒したのに、レベルは12。12! はっ!


 

 ああ、そういうことか。だから時間がかかっていたのか……。


 アドルフは、効率的にレベルが上がるように魔物を選んでくれていたんだ。

 魔物に関する知識ゼロの俺は、もしかしたら、アホみたいに本当にザコばっかり倒していたのかもしれない。とほほ。


 まあ、一撃必殺なのは楽でいいんだけど。いかんせんレベルが上がらない。

 だめじゃないか!

 ちょっとだけ外に――この国の外に出てみようか?


 アドルフによれば、「国外には強い魔物がうようよしている」らしいから。

 そりゃあ魔物にしてみれば、勇者がいる国の森なんて、おちおち住んでいられないよね。そんな国、出ていくに限るわ。

 国の外への出方って聞いてないけど、まあ門番みたいな兵士がいるよね、きっと。担当に聞くのが一番。

 さっそく行ってみよう。


Lv:12

魔力:5,120/7,100

体力:2,000/2,300

属性:

スキル:虫眼鏡アイコン

アイテム:ゴミ箱、デリバリー館、ウィークリー+、ポケット漫画、緑マンガ、これでもかコミック、魔力ポーション(4)、体力ポーション(4)、19,420ギッフェ

装備品:短剣

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