第26話  街道を作ろう

 街道を作ろう


 ~~~マリィ

 マリィの屋敷


 真冬の冷たい風が頬に当たり気持ちいい。

 無理を言って作ってもらった部屋の一面を占める窓はいつでも出れるようにカーテンごと開けている。

 装備も部屋の角に木製のマネキンに着られたニクス2型が立ち、中が見える細工鞘に入った霊石の大剣が太陽の光を受けて煌びやかに立てかけてある。

 ここの近海は大河の河口が近いので川下りしてきた大き目のウォータードラゴンパピーが出るがその相手には十分だ。

 近くで倒すと他の理由もあるけどアリス以外の魔法使いたちがまずいので私が真っ先に北の浅瀬方面へぶっ飛ばすのだ!


 コンコンとノックが聞こえる。

 低いテーブルに布団がかかった珍しい様式の机に溶けている私が返事をする。

 こたつあったか~い…


「どうぞ~」


 金髪のメイドが時計を見せながら意見具申する。


「マリィ様、街道整備のお時間ですよ!この時計を見てください!」


 家の執事をやってくれてるペルスラン氏についてきた双子の片割れなメイドさんだけど、この通り金髪ちゃんのアーリは時間にうるさい。


「マリィ様、本日のご予定は10時から街道整備12時から1時間休憩1時から街道整備で4時に帰宅ですよ!お忘れなく前にプレゼントした時計をお持ちになってください!」


 自腹を切ってでも主に時計を持たせて時間を守らせようとする執念に気圧されながら、待機モードだったニクス2型に座って包まれ、着込んで結晶剣を鞘ごとマウントする。


 机の中に置いていた発火器と、机の上の時計を首に下げて出発だ!


 と飛んでいくようなことはしないで、丁寧に窓を閉めて、金髪メイドのアーリがカーテンも閉める。

 戸締りはしっかりと!

 魔導鎧も暖気?した方が調子が良いからね!

 装備したのを認識したのか機能が働いてくる。


 ドアを出ると後ろをついてきてドアを閉めて施錠してくれる。

 そのまま、真っすぐと出口に向かうと正面玄関にアーリの双子、銀髪のアールが待っていてオーダーメイドの作成が間に合わずサイズの合ってないギルドマスターの巨大な襟付きマントを魔導鎧に纏わせてくれる。

凄く動きにくい!裾がずってしまいそうだ。

二人がドアを開けてくれるのでそのまま通る。

 服は大変だけど、楽ちんだ!


 背後から行ってらっしゃいませと聞こえる。

二人はお留守番だ。

執事のペルスランは折衝やら、交渉で忙しくて家にいない。

 何だか偉くなった気分だけど、私の仕事は肉体労働だ!

 大戦士は出力がめちゃくちゃだからね!

 人間重機だ!

 街道を作る前にメテオストライクで丘を吹き飛ばして整地するのが、今の私のお仕事!

 開拓は爆発だ!!!

あと、目立つ格好でアピールも仕事だ!


 庭師のおじいちゃんパウロがスキル無しの大剣で庭木を四角四角した形に整えて左右対称にするのを横目に見ながら、歩いていく。

 いつ見ても流れるような動作で剣を振って、同じ形に整えている。

 最初はその辺の木を植えただけだったのに、毎日パウロが整えてるお陰でまるでお屋敷の庭園みたいだ!

 玄関からの道がずっと、四角く整えられた木の葉っぱで道の外枠みたいに整えられていてカッコいいぞ。

 しんめとりー?っていうんだっけ?

 屋敷もそういう意識で建てられてるから、庭木も同じにしてるんだって。


「お嬢、お気をつけて。」


 枝葉を集める歴戦の彼がいつも通りの注意喚起をくれるので手を振りながら笑う。


「行ってくるよ!」


 でかい服をはためかせながら低空を飛び立ち、現場へ向かう。

 忙しく飛び回るルーチン?で自動化したアリスのフロートに並走しながら遅れたのか走って現場に向かっていたリンの脇に手を入れて回収する。

「連れてくよ?」

 音響検査で地面の中をある程度、観てもらいながら整地をやるんだ。

 もろに遺跡にあたったら大事故なので!

機械やモンスターがうじゃうじゃだ!


「ありがとう!」


脇にいれた手の裾が掴まれたのを確認して飛び出す。

この街も大きくなったものだと思う。

ルーチンで動いてるフロートがかなり力になってると思う。

こんなに動かせるのは魔法使いがたくさん派遣されてる今だけだ。

マリアが言うには最初の印象が肝心らしいから、全力稼働している!

最初の印象とインパクトがずっと記憶に残るんだって。

フロートを見るたびに思い出されると最高だって。

 私がウォータードラゴンパピーをふっ飛ばしてるのもドラゴンキラーがいるんだぞ!安心だぞ!っていう強い印象を与えて~それを商人に伝えさせて諸国を牽制するためでもあるんだって。

 最初は虚名みたいなものだったけどアテナで本当にドラゴンを削り倒したし、使える名前はドンドン使っていこう!

街の宣伝をしながら、マリアの目的の手伝いも出来ちゃうんだ!

新しいギルドマスターのドラゴンキラー!マリィをよろしく!


フロートに並走して絶景に目を細めるリンをぶら下げながら、ゆっくり飛んていると、倉庫以外の街の様子が見えてきた。

 たくさんの貸し倉庫に傭兵用の宿屋と飲み屋!色々な店!

港にはたくさんの船が停泊してて、それぞれの物を下ろしたり上げたりだ!

 傭兵やら外国人観光客もわらわらしている!大成功だ!

衛兵のみんなも仕事が多くて新兵さんが叫んでたけど、楽しそうにやっている。

 全部、私と仲間たち、エレノアの出資だ。

魔法使いのみんなもお店?工房?を出したりしている!

このまま、居着いてほしいぞ!

私たちで街を作ったんだ!

 私はゲーム知識で全部倉庫にしようとしてたけど、エレノアと仲間たちに止めてもらって、皆でいろいろ作ったんだ。

 思い返すとヤバいことをしようとしてたと思う。

 倉庫だけの街ってなんだ!?

 このローナの港町が倉庫に埋まる光景を想像する。

 島も浜も試練の前も街道脇も全部倉庫だ。

 その倉庫の間を永遠と、このアリスのフロートが行き交うのだ。

 異様な光景を想像してしまう。

 ぼ、貿易ボーナスが極大になるから…


 まあ、これで好かったと思う。


 思うところがあったので、税率は最安で3割程度だ。

 2割は国に収めるから手元には1割だけど、出資で十分儲かってるから気にならない。

 明日になったら!私の戦艦が来るんだ!

 わ!た!し!の!戦艦だ!

 名前は戦艦ローナにした!

 港町の宣伝込みだ!

 ローナの遺産で作ったし!(あっあっ)

戦艦とドラゴンキラーのいる港町!

絶対に強いぞ!誰も手を出さんだろ!左うちわは目前だ!

 木製のフロート船でペルスラン氏に見てもらいながら練習してるから、仲間たちだけで戦艦を運用できるはず!


 戦艦ローナを使って、稼ぎ場所とか、戦場を巡る予定だ!

名前に力を追い付かせないとね!


 この前の戦い?でレベルが上がってレベル12だ。

これで破軍…英雄級らしい。 

物騒な名前、軍を破壊するってなんだ!?

直近の戦いがあれだったので実感が湧かないけどスキルの出力や、魔導鎧の出力はダイレクトに高まっている。

前はちょっとした丘を吹き飛ばしたけど、今は地形破壊みたいな吹き飛ばし方でちょっと自分の攻撃力に引いている。

やっぱり戦争のほうがレベルが上がるんだ。

 強い相手が、次々と倒せるから経験値が良いんだと思う。

 ただ、仲間がやられるのは悲しいから、安全な相手を選んでいこうと思っている。

 この前の戦い?みたいな感じが最高だけど、そうそうあんな状況にはならないから、しばらくダンジョンや、モンスターで稼ぎかな?

 セコイとは思うけど、生きてれば何とでもなるし、苦戦するような相手もレベルを上げていい装備を付けてたら、いつかはひき潰せる。

急ぐべきではない、相手が動かなければ…。


 逆のことをされないように、色々情報は集めてるけど、とりあえず格上殺し系の隠し装備…遺産装備レガシーウエポンは回収していきたい。


 私がさっさと先に回収すれば大丈夫なはず…。


 よく考えると、自分が繋ぎとして回収した勇者装備の[貫通]と[瞬防]が一番危険な気がする!?


防御無視と攻撃無効だ…敵が使ったら怖すぎ!?

私って怖すぎ!?


 強力な装備の管理はしっかりしないと…

 封印ってこういう意味もあったのね。


 まあ、考えてても仕方ないし今日も肉体労働に勤しみますか!!


~~~発火器

港街ローナ近郊


 また一つ人力でクレーターが出来上がり、みんなで平らにして、街道が伸びた。

 その最初の足跡はとんでもなく深いが少女の物で踏み込みが深すぎて怒られていた。


 加減は強者のたしなみらしい。

 街道にある大量の足跡も実は結構気を使ってるのかな?

 

マリィが吹き飛ばした丘の影響で崩れた場所に少し気になるものが見えるので揺れてマリイに伝える。

あれは…地面に扉がある?リンの範囲外だったのか!?

金属の門、旧文明の施設か!?

アテナの資料が本当なら運がいいぞ!?


「!! 一番乗りだ!!!」


「あー!待って!」


[確認]旧文明の施設_金属製_関係者以外立ち入り禁止_軍事施設

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