第7話 食事は大事 

 食事は大事


 ~~~


 マリアの勧誘後、マリィは精力的に依頼をこなした。


 高速移動のスキルを持つマリィが、特注の背負籠にマリアを背負って駆け抜ける。


 何も持たないマリィが色々買い揃えながら、金のかかる食道楽もするものだからお金がかかるのだ。


 マリアもマリィの戦いへの意欲に関しては大変に気を良くしていて、暇があればマリィの世話を焼いた。


 マリィの狙い通りである!


 北の村が豚鬼に襲われれば斬首で首を跳ね飛ばし

 西の谷に大蜘蛛がでれば足狩で八つ裂きにして

 東の森に怪木が現れれば枝払で製材してやり

 南の川に魚人が出れば兜割で開きにした(うつくしい!)


 そんなこんなで半月後、

 僧侶の援護を受けたマリィは強力だった。

 強力すぎた。

 都市アレス付近の商会への対人以外の依頼を枯渇させるほどに。

 マリィはレベル7、マリアもレベル6になっていた。

 普通はこんなに早くレベルは上がらないので、恐ろしい成長速度である。



 そんな彼女たちにエレノアから提案されたのは、都市郊外の生産地への食糧輸送キャラバンの護衛であり、これにマリィは飛びついた。


 「今回の依頼を説明します。」


 お馴染みになった交渉室での依頼説明、いつもの前置きをエレノアが話す。

 いつもと違うのはボウケンジャーの皆が一緒に聞いている事だろうか。

 ボウケンジャーはエレノアの父親である会頭が育てた部隊で、護衛のエキスパートだ。

 彼らが初遭遇時に困っていたのは、エレノアの近くで撃破して魔法使いのエレノアがレベルアップしてしまうのを防ぐのに注力していたからで、今回も、もしもの時は気を付ける点だ。

 魔法使いのレベルアップは命がけで、増加した魔力の制御をしくじれば体が内側からはじけ飛ぶ。


 大変に危険なのだ。


「主目的はキャラバンの護衛で、撃退内容で契約書に書いてあるように追加報酬とします」


――――

 契約書

 モンスター

 A級 金貨10枚 B級 金貨1枚 C級 銀貨1枚

 その他

 盗賊 銀貨5枚 暴走機械 金貨1枚


 護衛費 一人に金貨5枚

 ――――


「なお、今回は私も同行するので、よろしくお願いします!」


 理由をつけてはいるが、まあバカンスに行くみたいなものだ。 (たのしめ)



 ~~~マリィ


 

 いろいろなものが増えた宿の部屋で、私は計画表を作っていた。

 

 都市アレス付近の地図を引っ張り出しては名産を書き写し、旬の季節を確認する。


 「この時期は、雨が多いらしいから雨天戦闘用のゴーグルを用意しておかないと」



 浮かれポンチにはならずに、装備の追加も忘れないキリングマシーンマリィちゃんだぞ。


 締めるところは締めて、金で解決できるところは金で解決するのだ。


 金満戦士な私だが、メインの装備更新は実はしていない。

 ちまちまとした強化はしているけど、相変わらずの軽装猪鉄服に副葬品短剣を挿している。

 別にケチっているわけではなく。


 上位の装備が手に入らないのだ。


 まず物理耐性付きの装備自体が稀、さらに少女用となると珍品や、家宝ばかりで流通する機会自体が少ない。


 そして武器については、肉体強度はともかくとして、私は体重が軽いから、軽量武器以外だと振り回されてしまうのだ。


 壁に飾られた大剣や、機械槍が寂しげに輝いている。

 私も諦めきれずに持っているが、スキルの制御に慣れることが出来なくてマリアから実戦禁止にされてしまった。


「カッコ良くて! 強いんだけどなぁ~」


 無駄遣いであったと自覚しているが、自分のゲーム時のメイン武器種は手放しがたくて、なんとか使ってやろうと思っている。


 眺めながら、お皿に入ったカット果物をシャリシャリ食べる。

 ルームサービスである。

プププと種を吐き出した。

 高いけどスイカと聞いてつい、頼んでしまった。

 ペペっと……。

 お皿に種を吐きながら幸せを感じる。


 ふむ……。


「また練習に付き合ってもらわないと、さび付くよね」



 今回の旅には、理由をつけて大剣を持っていこうと考えている。

 重量武器なので歩きになるだろうが、体力のある私にとってはいい運動といったところだ。


 雨になると整備が手間なので、機械槍はお休み!


「果樹園に牧場……ッ!そういうのもあるのか!!」


 食欲に流されそうなところで一旦切り上げて、マリアからの課題勉強を進める。

 あまりにも常識が無かったので、勉強に付き合ってくれているのだ。

 ノースアップ帝国…?南下してるのに、ほくじょう?


「北方面の国を倒しつくしたって事かな?改名とかしないのかな???」


 おかげさまで、色々、知恵をつけてきて生きる力を育めている気がする!!

 …

 棚からクッキーを取り出す。


「エリン森林にはエルフがいるのね。焼き討ちされたんなら人間嫌いかな? ヨソモノメーみたいな?」


 まだ行ったことのない場所について想像を働かせる。

 とんでもない機動力になったので、その場所に行くのが割と現実的なのだ。

 前は、自分の国もたいして見て回る機会が無かったので、ちょっと楽しみだ!


「南の共和国は山ね? 山登りは好きだけど、熊代わりにドラゴンが出てくるって厳しくない???」


 危険も事前に知ることが出来る。 おバカではないぞ?

 ちょっと忘れるだけ。

 マリアの試験が難しすぎるのだ。


 ボリボリと香ばしいクッキーをいただく。

 ナッツらしきものが練り込まれていて中々よろしい!

 合格だよ君ぃ……。


 あーっと……試験だったっけか、このレベル帯ならば、一般常識らしい!

 時間があった皆さんと違い。私は半月程度なんだが……。

 特に書き言葉を訂正されえるのが辛い、お役所代わりの傭兵ギルドに手紙を書くことがあるんだが、なんどもリテイクをもらっている。


「ほんじつは~おひがらもよく~いちしゅうかんご、にえんせいの!よてい?がありまして~」


 読み直しながら確認する。

 雨が降っているがあしたは晴れる! 晴れろ!

 勉強してないから、ちょっと雨天の挨拶はわからない。

 獅子さんのところの宿屋から見る大通りは、しとしとした雨に濡れていた。


 季節は夏の始まり梅雨だ……!


――確認――


[確認] 霊石の大剣_霊石製_戦士装備可_両手装備



[確認] 雨天戦闘用ゴーグル_クリスタル製_全職装備可_顔装備

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