第5話 見覚えのある戦い

 見覚えのある戦い


 〜〜〜マリィ

 

 そこからの道は金髪商人ちゃん(エレノアさんと言うらしい)の好意で馬車に乗せてもらって歓待されつつ街へ向かっている。

 街道は足跡だらけなので、もっとガタガタすると思っていたけど。

 なんの知識もない私にわかるのは、背中とお尻のクッションが柔らかい事だけだ。

 衝撃を来なくするためのカラクリが何かあるのかな?


 車輪が暴れてる音はするのだが……。


 途中、自分の足元に置いたカバンに吊り下げられているモノ。

 動かなくなり、大きな飾り物になってしまった発火器について尋ねられる。


「そちらの魔道具、魔力切れのようですが、よろしければチャージしましょうか?」


「おねがいします!」


 飾りになっても持っていたくらい思い入れがあったので、何も考えずに即答してしまった。

 だけど、払える物が無い事を思い出して諦めきれず、赤面しながら交渉する。


 資産は甘味の山菜だけだし、救援の報酬から引いてもらうか。


「あ~持ち合わせがありませんでした……。援護の対価から引いてほしいです。」


「大丈夫ですよ! これでも魔道具の勉強をしていたので、こんなビンテージ物に触れるのは楽しみかも!」


 かなりの勢いで押し切られる。


 えっびんてーじ? 私ってば、プレミアつくようなアイテムをガンガン使ってたのか!?


 エレノアさんは、素早く丁寧に私のカバンから金属製の小型七輪のような発火器を外すと、ポケットがたくさんある服から小さな工具箱を取り出し、1本、1本、工具を確かめた後に頷き。

 そのうちの一本の工具で、慎重に裏側の蓋を開き魔法陣?を露出させる。


 ……下手に触らなくてよかった。絶対に破損させてたと思う。


 魔法陣っぽいものに触れて数秒で光らせると、蓋を閉じて発火させて見せてくれる


「どうぞ!」

「わぁ~! 前より、よく燃えてる!!」


 車内なのを忘れて渡してもらった道具の火を点けたり消したりする。


 ふわふわとしたしたクッションと揺れのない馬車、いい気分で動くようになったお気に入りの発火器を眺める。


 「そんなに喜んで貰えてうれしいな! これと一緒にどんな旅をしてきたのか、教えてほしいかも?」


 ニコニコしながら、話を振ってくれる。


 私はゆっくりと語り始めた。


 ~~~


 確認のことはぼかしつつ、強敵に勝ったところまで語ると



「あ……自壊撃破かも……レベルアップすると、一瞬で回復するから、それを利用する方法として研究されてるかも。でも攻撃された瞬間とかは、ボロボロだったかも」


 と、腕を労わる様に触れてくる。


 え?回復?レベルアップ後って回復するんだ?

 ゲーム大戦士はステージ制のアクションゲームだったから、レベルアップに追加効果が有るなんて知らなかった。

 レベルアップはリザルト画面で確認するタイプのゲームだったんだ……。


『神々の加護は我にあり!』


 よくよく思い返すと……2段階目扱いされてたけど全回復する敵がいた。

 雑魚敵が画面の明滅と共に減って、ボスが強くなり全回復、味方殺しだったのか……。


 それにしても私って下手したらあそこで事故死してたのか、その後の行動も警戒心が無かった……。


 自分の強度を勘違いして過ごしていたんだ。


 だってあんなに吹っ飛ばされて体が無傷って最強じゃん?


 最強系だと思うじゃん?


 真っ青になって商人ちゃんにお願いした。


「色々と勉強をしたいので、勉強の道具を売ってほしいです」


 知識の更新をしないと……ハメ殺しのパターンが絶対に増えてるでしょコレって……。

 

「向上心のある子は好きだよ? 目指すはギルドマスターかも?」


 ぎゅっと抱きしめられる。


 気が付かないで事故死して偶然助かった子だと思われたようで、やけに優しくされる。

 ちょっと思っていた流れとは違うけど。

 その後、いい感じの条件で雇って貰えることになった。





 知識の有無は、生死を分けてしまうみたいだ。


 道中、話を聞いたが高レベル者はとても長生きになってお得だと、励ましてくれた。


 勉強をしたいと言ったので、色々と教えてくれる。


 レベル10の大戦士にもなると開拓民を募っての開拓が許可されるらしい。


 開拓に成功すれば、その功績が認められて議会での席も用意されるとかで、


 何がメリットなのかよくわからないが、エリートで良い事らしい。


 力=権力かも!と力説してくれる。


 だからみんな危険を冒してレベル上げするし、そんな人を倒したい人もレベル上げするから、都市付近の魔物や魔獣が、ほぼ絶滅し、人間が繁栄して戦争までやらかしてる。


 対人でもレベルが上がるから!!!

 

 私もレベル上げする予定だ。


 同時に知識も身に着けるつもり。


 対人は……ちょっと考える期間がほしい。


 #####


 都市アレス街壁前にて。


 マリィたちを乗せた馬車はアレスの街の前に到着した。

 合金製の街扉が黒々と輝き迎え入れる。

 しかし、街に入った直後に大地が震えて……割れた!


 地割れだろうか?


「例のダンジョン異常だっ!」


 屈強な衛兵たちが叫ぶ!


 割れた地面から門が形成されると魔物がポコポコ飛び出してくる。

(なんなのだこれは)

 衛兵が叫ぶ。


「大量のダンジョンの入り口だ! ものすごい数の魔物共が飛び出してくるぞ!」


 

 近くでモンスターが倒されると危ないらしいエレノアを逃がすと、マリィ達も覚悟を決めて防壁越しに配られた都市防衛用長槍を突き出す。



 〜〜〜マリィ


 何度突き出しても異常な数の魔物を削れた気がしない。


 時間だけが過ぎていく……。


 だが……。


 ひかりが、ふりおろされる。


 街の外壁の外側が真っ白に光ると、そこに殺到していた魔物達は幻のように消え去った。


 ムービーで見た。


 アレスの傭兵ギルドマスター [光の剣]のエイレンだ。


 もう一振りで、ダンジョンの入口も崩落させると、衛兵の面々に振り返り冗句を言いながら朗らかに笑う。


「今日はちょっと多かったな?俺のレベルアップも近いか?」


 衛兵達はその笑う顔に向けて陳情している。


「アンタ、これ以上強くなってどうすんだよ? 新しい槍をお願いしますよぉ~」


 消えてしまった槍先をツンツンしながら。

 よく見ると、みんなの槍先も無くなっている!

 すごい出費だなエイレン氏。


「あ〜……議会で予算が下りないかな? 憂鬱だぜ」


 茶色い短髪の頭を掻いて悩むエイレン氏。


 後続が来ない事と元気そうな面々を確認すると、動きにくそうにメチャクチャ襟の大きいギルドマスター用のマントを翻し、手を振りながら大歓声の中を去っていった。


(あれが大戦士……。あれになるって難しくない?)


 マリィは腰が抜けたので壁に寄りかかり腕を組んでいる。

 レベルアップして注目を集めているので、格好をつけているのだ。


 周りはニコニコして、お見通しみたいだが……。


 そういう日もある。





「確認」一人になれなかったためおやすみ


 ――あとがき――

 ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

 良ければ★やフォローをよろしくお願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る