新しい仲間との出会い! きっと最高だ!

 セカンの街ににたどり着いたことだから、まずは冒険だ!

 そんな心持ちで、この街にあるダンジョン、ナダラカ平原へと向かうことにした。

 セカンの温暖な気候はどんな文化を育んでいるかには興味がある。

 太陽が照りつけていて暖かいから、衣装は日よけができる雰囲気が多い。

 まあ、後々ゆっくりと観光しよう。まずはダンジョンだ!


「ミリアさん、今日はナダラカ平原に向かいますね」


「はい。クリスさんとソルさんなら大丈夫だとは思いますが、気をつけてください。セカンライノに出会ったら、逃げてくださいね」


 セカンライノとは、いわゆるユニークモンスターといった敵。黒くて足が速くて角の長いサイだ。

 ナダラカ平原を歩き回っていて、出会ったら逃げることを推奨される。

 初見では突っ込んでいって全滅した思い出がある。まあ、今の俺なら楽勝なんだけどな!

 ただ、初心者が逃げることを覚えるためにはちょうどいい敵だ。

 なにせ手出ししなければ、ある程度の距離しか追いかけてこないから。


「大丈夫です。ボクは勝てない敵には挑みません」


「どっちかというとアタシのほうが危険だよな。まあ、しっかり逃げるさ」


「なら、安心ですね。今日はダンジョンの内部を覚えることを優先してください」


 とは言っても、ナダラカ平原は見渡しのいい場所だ。

 敵に急に襲われるなんてことはまず無いし、道に迷うようなダンジョンでもない。

 それでも、心配は素直に受け取るつもりだけどな。無理をする人だと思われれば、依頼を受けにくくなるかもしれないし。


「分かりました。じゃあ、行ってきますね」


「はい。帰りをお待ちしていますね」


 それからナダラカ平原に向かい、何体かの敵を倒していく。

 ここには動物をモチーフにした敵が多い。ライオンみたいな敵、イノシシみたいな敵、チーターみたいな敵。

 みんな単独で挑んでくる上に、見晴らしの良さもあるから対策が簡単だ。

 どの敵も弱点がハッキリしているので、倒しやすい。とはいえ、俺達のパーティには魔法使いがいないから、効率は悪いが。


 そろそろ属性が弱点になる敵が出てくるんだよな。まあ、今の2人でも十分に勝てる相手ではある。

 ライオンはバランスが良く、イノシシは力が高く、チーターは素早さが高い。

 それでも、俺が足止めをしてソルが攻撃していけば、大きなダメージを受けずに倒せるんだ。


「スラッシュ! 今回の敵はこれで終わりか。アタシも少しは成長してきたかな?」


 実際、何度も敵に攻撃を繰り返しているからな。攻撃力のステータスは上がっているはずだ。

 一撃二撃で倒せるほどではないとはいえ、十分短い時間で倒せる程度には。

 うんうん。ソルが成長しているのも嬉しいな。仲間と一緒に冒険をすると、今みたいな喜びもあるんだな。

 やっぱり、もっとパーティメンバーを増やしてみても良いかもな。とはいえ、どうやって誘えば良いのかは分からないが。


「はい。強くなったと思います。ダンジョンが変わると敵も強くなるので、実感しにくいですよね」


「ああ、確かに。なら、もっと楽になることは無いのか」


「そうですね。むしろ、こちらの成長より敵の成長が早い場合もあります」


 まあ、ある程度スキルの組み合わせを知っていれば、ステータスで負けていても簡単に倒せたりする。

 そうだな。ソルはこれからどんなスキルを覚えていくんだろうか。戦士のスキルだと、自己強化とか、かばうとかか。火力スキルはスラッシュが強くなったようなものだけだからな。

 いちおう全体攻撃や2回攻撃もあったか。ソルの成長が楽しみだな。

 ソルにも人生があるのだし、あまり口出しできないことではあるが。それでも言えるのなら、かばうは要らないと思う。


「なら、頑張って訓練していかないとな。クリスに恥じないパーティメンバーになるためにも」


「ソルさんはボクの大切な仲間ですよ。恥ずかしがることなんて、何も無いです」


 敵も見当たらないので会話をしていたら、遠くから声が聞こえてきた。

 そちらの方を見ると、だんだん近づいてくる様子だ。よく見ると、セカンライノに追われている。

 これは、どっちだ? 手を出したのか、まだ見つかっただけなのか。

 いや、考えていて手遅れになったら最悪だ! とにかく、助けるぞ!


「もう追いかけてこないで~!」


「いま助けます!」


 魔女じみた格好をしている女をかばえる位置に入り、セカンライノの攻撃を受け止める。

 どうせダメージは大したことないから、即座にカースウェポンを連発していく。

 低HP時の運用をできるほどHPが減る前に、セカンライノは倒れていった。

 状況はよく分からないが、この人が無事で良かった。


「もうセカンライノは倒しましたよ。安心ですね」


「あ、男の子……? って、そうじゃない! ありがとうございます。助けてくれて」


 よく見ると、この人も美人だな。ミリアもソルもエリカも顔がいいし、この世界には美形が多いのかもしれない。

 彼女は青髪青目で、身長が高くてスレンダー。ぶかぶかな衣装を着ている割に、お尻は浮き出てしまっている。

 なんというか、ゲームのキャラだと考えると、だいぶ性癖が詰め込まれたなって感じだ。

 三角に尖った魔女帽子をはじめとした格好で、体型がこれだからな。


 まあいい。せっかく助けた相手だから、仲良くできるといいな。

 素直にお礼を言ってくれて、けっこう良い人だと思えるから。


「いえ、お気になさらず。大丈夫でしたか?」


「うん。大丈夫。薬草採取していたら、セカンライノに見つかっちゃって。逃げていたんだけど、怖かったよ」


「アンタは手出ししなかったのか?」


「それはもちろん。セカンライノに挑むようなバカじゃないよ」


 なら、もう少し頑張っていたら逃走できたのか。まあ、怖がっていたようだし、助けられたのは良かったことだ。

 そういえば、この人の名前はなんだろうか。せっかくだから、聞いてみるか。


「そうなんですね。ボクはクリス。冒険者です。あなたは?」


「あ、名乗りもしないでごめんね。私はセッテ。魔法使いだよ」


「アタシはソル。戦士で、クリスの仲間だ。それで、1人でこんなところにいたのか?」


「ここは見晴らしがいいから、近寄ってくる前に魔法を撃てば終わってたんだよ。まさか、セカンライノに見つかるなんて」


「なるほど。大した魔法使いなんだな、セッテは」


 確かにな。ソルはフルスラッシュを使えば1撃で倒せる可能性があるという程度だからな。相当強い。

 なら、俺達のパーティには魔法使いがいないんだから、ちょうどいいんじゃないのか?


「セッテさんは、パーティを組んでいるんですか? 仲間がいないのなら、ボク達と組みませんか?」


「それは嬉しいけど……さっき助けられたばかりなのに、良いの?」


「はい。ボク達のパーティには、魔法使いが必要だと思うんです」


「ああ、確かにな。なら、アタシも歓迎するよ」


「じゃあ、これからよろしくね。私の魔法で、君たちの力になるよ」


 新しいパーティメンバーも加わったことだし、今日は帰るとするか。

 それからミリアに事情を説明し、今回の冒険は終わった。

 さて、セッテはどんな魔法を使えるのかな。楽しみだ!



――――――



 セッテは魔法使いとして、セカンの街で活動していた。

 ナダラカ平原は比較的ラクなダンジョンなので、そこで生計を立てるために。

 毎日ナダラカ平原で冒険をして、慣れてきたころ。うっかりセカンライノに見つかってしまう。

 『セカンライノに挑む』人間は無鉄砲の代名詞であると言われるほどの存在に。

 逃げれば助かることが多いと分かっていても、冷静ではいられなかった。


 そんななか、セッテをある男の子が助ける。

 セカンライノの攻撃を受け止めて、反撃で倒していく子。

 そんな男の子からパーティに誘われて、セッテは喜んでいただけだった。

 だが、ミリアやソルから説明を受けて、セッテの心は大きく変わる。


 なんと、クリスの攻撃は自らのHPを削って行われるのだという。

 それはつまり、自分のうかつな行動でクリスが傷ついたということ。

 のんきにパーティを組めると喜んでいた自分が馬鹿みたいだ。

 自分がうっかりしていたばかりに。セッテの心は追い詰められていった。


「私のバカ。調子に乗って警戒を雑にするから、クリスくんが傷ついちゃった……どうやって償えば良いのかな……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る