第17話 SSS級宮廷錬金術師、爆誕

 多くの冒険者が集まり、彼等あるは彼女たちはエンシェントオークへ目掛けて突撃していった。す、すごい熱気……!


「な、なんだこの人間の数は!!」


 さすがのオークも大慌て。

 エンシェントドラゴンに命令を下すも、圧倒的な人数の前に成す術なく。冒険者たちがドラゴンに攻撃を加えていった。


 わたしも加勢しなきゃ!


「イベリスさん、マーガレットさん、わたしたちも!」

「そうですね、一気に畳みかけましょう!」

「了解です!!」


 全員で突っ込み、わたしは爆弾ポーションを投擲とうてきした。冒険者を巻き込まないよう投げつけると、エンシェントオークに命中。



「がァ!! こ、小賢しいマネを!!」

「これでも倒せないのね……」

「当然だ。そんな爆弾ごときでオレを倒すなど不可能なんだよ!」



 斧を振り回してくるけれど、冒険者たちが盾で防いでくれた。良かった!


「ありがとうございます!」

「いえいえ、アザレアさんの為ならこの命……捧げれますとも!!」


 ナイトの冒険者が全力で守ってくれた。

 他のみんなも同じように、わたしを守ってくれる。良かった~、ダンジョン配信していて!



「クソ、クソ、クソがああああああああああ!!」



 怒り心頭のエンシェントオーク。すっごく怒ってる……!

 ガンガンと斧を振り下ろして盾を割ろうとさえしていた。でも、物凄い防御力で、ビクともしなかった。このナイトさん何者!?



「この為に全財産叩いてS級の盾を買っておいて良かった!!」

「えー、そうなの!!」



 その隙にイベリスがプラントポーションをいくつも地面に投げつけていた。複数の植物が現れ、鞭のような根がエンシェントオークとドラゴンに絡みつく。


 そうだ、わたしだってプラントが使える。


 ドリアードを召喚して、周囲にヒールをしてもらった。これでマーガレットの負担が減らせる。



「おぉ~、アザレア様は不思議な植物を召喚できるのですね!」


 マーガレットが驚いていた。



「そうなんです。わたしが作ったドリアードちゃんです!」



 これで冒険者をサポートできる。

 さらにポーションも投げて回復させていく!



「アザレアさんのプラントとポーションの嵐、すげぇぞ!!」「これが宮廷錬金術師の力か!!」「かっけええなぁ!」「この回復量、圧倒的ではないか!!」「攻略不可能とされていたオークダンジョンを突破できるぞ!!」「あのオークをぶっ倒せ!!」「っしゃあああああああああ!!」「アザレアさん、これを使ってください!!」



 わたしの手元に落ちてくる“青紫色の液体”が入ったポーション。な、なにこれ。とても禍々しい。

 って、今ポーションを渡してきたのはプリムラ!


「ふふん、実は自分も参戦していたのです!!」

「いつの間に!?」

「キングゴブリンは後回しです。今はエンシェントオークを討伐します!」


 そっか、どうりでナイト系の人が多いと思ったら、そういうことだったんだ。でも嬉しい。これだけの戦力があればきっと勝てるはず。


 プリムラから貰ったポーションの効果を覗いてみた。



【バーサークポーション】

【詳細】

 飲んだ者の能力を一定時間三倍アップする。攻撃・移動速度もアップ。植物やホムンクルスに対しても使用可能。



 こ、これは初めてみるポーションだ。



「これはいったい……」

「それは……私が作ったポーションです」

「イベリスさんが!?」

「はい。以前、プリムラに頼まれて数本作りました。ですが、コストが掛かり過ぎて大量生産には向かなくて」

「確かに、凄い効果ですもんね」


 自分が飲んでも、たいした戦力にはなれない。なら……ドリアードに投げる!


 自分の召喚した植物に投げつけると、ドリアードは明らかにパワーアップ。凄い速さで治癒魔法を発動して、冒険者たちを回復させていた。こ、これは……すごい!



「おおぉぉ!!」「この回復速度なら余裕だぜ!」「毎秒ヒールってやばくね!?」「最強じゃねーか!!」「ひゃっほーい!!」「いくぜええええええ!!」



 ダメージを受けても即座に回復する環境が完成し、こちらの勢いが更に上がった。そして、ついにエンシェントドラゴンを撃破。



「バ、バ、バカなァ!! オレのエンシェントドラゴンが……そんなァ!!」



 ひとりになって焦るエンシェントオーク。

 よし、この勢いでオークを討伐する。


 爆弾ポーションを使おうとすると、イベリスが止めてきた。



「アザレアさん、これをお使いください」

「え、これはなんですか?」

「新型のファイアポーションです。これを表に出すつもりはなかったのですが……アザレアさんになら託してもいいと判断しました」


「ファイアポーション?」


「ええ。フレイムフェンリルであるゼフィランサスに協力してもらい、ついに完成した特殊ポーションです。超高コストでしたが、爆弾ポーションの上位互換。かなりの火力を誇ります」



 そんな凄いものを開発していたなんて……さすが師匠。これがあれば、エンシェントオークを仕留められるかも。


 やるしかない!



「みなさん、エンシェントオークから離れて!!」



 わたしが叫ぶと、みんな距離を取った。



「なんだ!? クズ共が急に離れた。まあいい、そこの女錬金術師を食って回復してやる!!」



 エンシェントオークがわたしに襲い掛かってくる。けど、その前にファイアポーションを投げつけた。



「これで最後です!!」

「そんなポーションごときで――んなァ!? ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」



 ファイアポーションが激突すると青い炎が炸裂。エンシェントオークだけを激しく焦がし続けていった。青い炎の柱が天井を突き抜けていく。な、なんて火力!


 やがてエンシェントオークは燃え尽きた。



「やったああああああああ!」「アザレアさんがエンシェントオークを倒したぞ!!」「つえええええ、めっちゃつええええ!!」「やっぱり、アザレアさん強いわ」「可愛くて強いとかズルい~」「今の戦闘、ばっちり配信しておいた!」「これでアザレアさんの人気がまた上がるな」「おつかれー!」「みんな生きているぞー!!」



 ……終わったぁ。

 マーガレットもずっとヒールを続けていたいせいか、疲れて地面に腰掛けていた。わたしも同じように脱力。



「お疲れ様です、アザレア様」

「マーガレットさんも皆さんにヒールをたくさんして疲れたでしょう」

「いえいえ、わたくしはそれしか出来ないので」


 残念ながらマーガレットの元パーティは帰らぬ人となってしまった。けれど、かたき討ちは出来た。少しは報われるといいな……。


 そんな風に思っていると。



「あの~、アザレアさん」

「なんでしょう、イベリスさん」

「配信者ランキング一位おめでとうございます」


「へ……」


「これで晴れて“SSS級宮廷錬金術師”です」


「!?」


「配信者ランキング一位になると階級が一気に上がる特典があるんですよ」



 なにそれ、知らなかった!!

 そうだったんだ。

 わたし、師匠を超えちゃった……?

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