第11話 解散と入会


「で?調査結果は?」

「レベル63に多数のスキルがあります。いまは無所属であの弱小クランと繋がりがありそうですが、不明です」

「レベル63か、なら俺なら勝てるよな!俺が出るか」

 サイは椅子から立ちあがるとクランメンバーにいった。

「これからレクトを殺してやる。お前らもついてこい!」



「暁のダンジョンはまぁまぁだな」

 五十層を突破してオーブで帰ってくる。

 クランでこんなダンジョンを独占してたらそりゃ有名クランになるだろうさ。

「何勝手に入ってんだテメェは!」

「おっ!やっと本命のお出ましかよ」

 サイは調査でレクトがここに出入りしていることを知っている。

「ここで殺されても文句は言えないよな!」

「言えないけどそっちも同じだよな?」

「あははは、俺に勝つつもりか?レベル63のくせに」

 あぁ、隠蔽しといてよかったよー!

「勝つつもりだよ?だって弱いだろお前」

「誰が弱いって?まさか俺のことか?」

「おう、裸の王様って感じ」

「おい!ふざけてんじゃねえぞ!」

 おぉ、怒ってらっしゃるねぇ。

「お前ら囲んどけ、逃げないようにな!」

「逃げも隠れもしてないけどな」

 いっぱい連れてきちゃって。

「この炎龍槍の餌食にしてやるぜ!」

「俺の魔剣とどっちが強いかな?」

「俺に決まってんだろ!!!」

 突きはそれなりに速いな。

「なっ!」

「それだけか?」

「そんな馬鹿な!」

「それだけかって聞いてるだろ?」

「馬鹿にしやがって!炎龍槍刃陣」

 突きの連打に名前つけてるよ!?

「あはは、これはなかなかだな」

「そ、そんな」

 んじゃこっちもやるかね。

「魔剣」

 なんかいい名前が思い浮かばなかった。

 ご自慢の炎龍槍は切り刻まれてボトボトと落ちている。

「俺の炎龍槍が」

「魔剣なんだっけ!まぁいいか」

 鎧も服も切り刻んで裸にしてやる。

「こ、降参だ!」

「でもまた来んだろ?」

「もうしない!ここも使って構わない!」

「それは申し訳ないね、勝手に使うけど」

「このやろう!」

「だからこう言うやつがいるんだよな」

 後ろから攻撃してきたやつを同じ目に合わせる。

「ひ、ひぃ!」

「なに漏らしてんだよ!」

 きったねーな。

「他には?」

 みな首をブンブンと振っている。

「んじゃ解散するの?」

「それは勘弁してください!」

「じゃあ、ここでお前が死ねば解散か?」

「か、解散します」

「本当に?」

「ほ、ほんとにです!だから生命だけは!」

 土下座のサイは涙を流して懇願する。

「みんな聞いたよな?解散だって!」

 

 それからは蜘蛛の子を散らすように暁のメンバーは逃げていき、裸の男二人がダンジョンから出たところで捕まった。誰かが通報したのだろう。俺はお咎めなし、だってなにもやってないもん。


 暁の解散はギルドビルを騒がせたみたいだがまだ有名なクランは幾つもあるらしいからすぐに収まるだろう。


 んで俺はヒナ達のクランにお呼ばれしたわけだが。

「レクト君がきてくれるなんて本当に感謝しかないよ!」

 白髪が多い親父に抱きつかれている。

「いや、見学に来ただけですから」

「ぜひ見ていって!いまはヒナとミアが中級ダンジョン制覇したからみんなやる気になってるんだよ」

 って、子供達が稽古してるだけだけどね。

「あの子は剣術、あっちの子は槍術なんだ。なかなかの腕前でしょ?」

 まだ体格が小さいからなんとも言えないな。

 でもここはなんかいいな。クランマスターがあたたかい感じがする。

「ヒナとミアも昔はあんな感じでイテッ」

「余計なことは言わないの!」

「そうよ、やっとレクトが来てくれたんだから」

「はい」

 マスター弱いな!

「ここに入ってもいいですか?」

「え?え?ぜ、ぜひ!本当に?」

「はい、マスターが良い人だったんでね」

「「いやったぁーー!!」」

「俺は結構勝手に動きますけどいいですか?」

「そりゃもちろん!ここは束縛は極力しない方針だからさ」

「んで、ノルマは?」

「つ、月に二十万、いいかな?」

「あはは、それ以上稼いで来ますよ」

「本当かい?あ、ありがどう」

「泣かないでくださいよ」

「だっで、この二人がいつも頑張ってくれてたから嬉しくて」

 ヒナとミアが頑張ってたんだな。

「これからですよ」

「はい!頑張ります!」

「俺が頑張りますから」

 クランマスターは斎藤さんと言う人だった。涙もろくて情に熱いタイプみたいだな。


「さて、稼ぎに行きますか!」

「「はい」」

 上級?いや、まだ中級でいいだろ!

 中級ダンジョンで稼ぐのとモンスターにもっと慣れないとな!

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