旧メンバー1 中二病に罹患した闇魔道士

剣士


「あー、ひどい目にあった。あいつ(見習い魔導士)とモンスター討伐なんかしてたら命がいくつあっても足りねえ……。そうだ。一年前、共に旅をした仲間達も冒険に誘ってみよう!」








◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇








剣士


「ここが俺の元パーティーメンバー、闇魔道士がやってる飯屋か……。早速入ってみよう」








闇魔道士


「おい、始まりの瞬ときはまだ……、むっ。貴様は」








剣士


「よう、闇魔道士。元気そうだな」








闇魔道士


「ククク……。いかにも! 我は全ての邪悪を飼いならし、闇の力を統べる者――、十三棺流闇魔法の正統継承者†クラウス・K・レイヴンフィールド†である」








剣士


「いやエプロン姿でそんな痛ましい事を言われても」








闇魔道士


「それで貴様は飯でも食いに来たのか?」








剣士


「お前もうすっかり飯屋が板について来たな。いや今回は違うんだ」








闇魔道士


「ほう、ならばこの邪悪を飼いならし、闇の力を統べる者――、十三棺流闇魔法の正統継承者†クラウス・K・レイヴンフィールド†に何の用だ」








剣士


「それ全部言わなきゃいけない決まりでもあるの? いや実はまた魔王を倒すための冒険に出ようと思ってるんだ。それでお前の力を借りたいと思ってな」








闇魔道士


「そうか。要するに冥界の王――その瞳は万物に呪いを掛け、その吐息は灼熱の砂漠を氷河に変え、その口は72柱の悪魔を使役する角笛――を倒すために、魔王を凌駕するこのクラウス・K・レイヴンフィールドの支配する†闇†が必要だと。敢えて言うならば――神の下す罰に牙を立てうる唯一の存在。†太陽を呑む竜†――を解き放とうと言うのだな」








剣士


「ごめん、一言も意味わかんない」








闇魔道士


「だがそれは怨嗟で満たされし石棺を開ける行為――あえて言うならば、現世というこの箱庭に鮮血の緋と、虚無の黒を流し込み、嘆きの墓標で埋め尽くすこと――貴様にその覚悟があると言うのか!」








剣士


「そろそろ人語喋ってくれない?」








闇魔道士


「しかし我は少々†黄昏のゆりかご†にて微睡みの時を享受しすぎた……。敢えて言うならば」








剣士


「言わんでええわ! とりあえず平和ボケしてるってことだろ? それなら、あとどれくらいで勘を取り戻せそうだ?」








闇魔道士


「――芽吹きたての草が、天を衝く霊樹となるまでの時を――」








剣士


「お前何千年生きるつもりだよ!!」








闇魔道士


「それにしても暫し待て、剣士よ。我は今†暗がりに潜み汚れを導く旗手†を処刑台に送っていたのだ」








剣士


「えっ、まさか店内にモンスターが!?」








闇魔道士


「いや†鼻毛†を抜いていたのだ」








剣士


「普通に言えや! 何だよ、汚れを導く旗手って!! 鼻毛と鼻くそじゃねえか!!!」








闇魔道士


「静かにしろ、ちぎれかけのチーズ」








剣士


「何で俺の呼び名だけ乳製品なんだよ!!」








闇魔道士


「そろそろ†血に飢えし亡者ども†が来る――列をなして――」








剣士


「何だ、今度こそモンスターか!?」








闇魔道士


「いや客だ」








剣士


「客じゃねえか!!!」








――その時、扉を開けて目を血走らせたお客さんたちが入って来た。








剣士


「ちょっと待て! 何かこの人たち殺人鬼みたいな目してんだけど!?」








――剣士は人ごみでもみくちゃにされる。








剣士


「うわあああああああ!!! くっそお、こうなったら作戦変更だ! おい闇魔道士!」








闇魔道士


「何だ」








剣士


「唐揚げ定食一つ!!!」








闇魔道士


「まいどあり」








おわり


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る