第8話 私は、座敷わらしです!

「『全部聞いた上で、一言いいか』って? 一言だけですよ?」


「『俺がお前を幸せにする』?」


「ん? 何の話でしたっけ?」


「一言以上喋って良いですから、何の話か説明してください」


「好きな人ができたっていうのは、私のことだと?」

「いやいや。え?」


「そんなことありますか?」



「佐々木さんの考え私に伝わってくるんですよ? うーん。納得いきませんね」


「『考えないようにしてた』って」

「『私がずっとあの部屋にいるだけだったから、私が行きたいところに来たんだ』って。いやいや、まだ納得できません」


「携帯でいっぱいメール送ってたじゃないですか。『あれは男友達に相談してただけ』と」


「視覚共有はできないですけれども」


「いまさら携帯画面見せてくれても……。あ、本当だ。グループライン。男の人がいっぱい。男の人っぽいアイコン」


「これ。みんな親身になって相談に乗ってくれてますね。佐々木さん、人望ありますね」


「って、私。浮気を疑うウザイ女みたいじゃないですか。大丈夫ですか? 本当ですか?」


「けどです。何かまだ怪しいです。さっきの私の話を聞いて急に鞍替えなんてしてないですよね?」


「そんな分けないって、証拠を見せてください!とっておきがあるって、何ですか?」


「ちょっとしたことじゃ、私の心は動きませんよ? 佐々木さんに好きな人ができたって話を聞いて、私ショックだったんですからね!」


「それも毎日毎日携帯でメールばっかりして。私の事ほったらかして」


「って、これですか? これって、あれじゃないですか」


「その四角いフォルム。ちょっとふわっとした手触りの小箱」


「真ん中からパカッと」


//SE 小箱が開く音。


「あ、佐々木さんが開けてくれるんですね」


「うわ。これ。え。これ。指輪じゃないですか……」


「『結婚してください』って」



「私。座敷わらしですよ……。妖怪なんですよ……」


「それも、おしゃべりなんですよ……」


「私と一緒になんかなったら、ずっとしゃべり続けちゃいますよ。好きなアニメの話とか、映画の話とか。それこそ、10年前くらいから見貯めていた作品の数々のお話……」


「全部聞きたいって。私の事もっと知りたいって……」


「だけどだけど、私、胸とか小さくて。大人になれてますけど、女の人の魅力なんて全然無くて……」


「それでもいい……。むしろ好きだ……。……ばか。変態」


「だけど、私……。やっぱり一番のハードルは妖怪なんですよ」


「それでもいいって。そんな小さいこと気にするなって」


「そんなの、好きなものをあきらめる理由になんかならない、ですか」



「気にするなら、俺が妖怪になってやる? 一回死ねば、座敷わらしになれるなら、今からでも死んでやるって」


「真面目な顔でそんなこと言って。バカですよ佐々木さん。本当のバカですよ……」



「……とっても嬉しいです。神様っているんですね。もっと毎日感謝しなきゃです」


「私に恋までさせてくれて、しかも両想いにもしてくれて」


「私。座敷わらしに生まれ変われて良かったです。佐々木さんに出会えて本当によかったです」


「もう一回プロポーズの言葉言ってください」


//少し間を開ける。


「ふふふ。ありがとうございます」


「けど佐々木さん? それは、逆なのです」


「私からもプロポーズさせてください」


「私が、あなたを、一生かけて幸せにします」


「なんていったって、私は座敷わらしですからね!」



 了


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最後までお読み頂きましてありがとうございました。

こちらは、『第2回「G’sこえけん」音声化短編コンテスト』参加作品になっております。


一次選考は読者選考となっておりまして、もし楽しかったと思って頂けましたら、☆を頂けましたら幸いです。



こちらの近況ノートにイメージ画像を用意しております。合わせてお楽しみくださいませ。(*_ _)

https://kakuyomu.jp/users/tahoshi/news/16817330660312556941


これからも、また面白い作品を書けるよう努めて参りますので、次回作にご期待下さいませ。

良ろしければ、作者フォローもよろしくお願い致します。(*ᴗˬᴗ)

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片田舎のボロアパートに住んだら、座敷わらし(25)が付いてきた件。 米太郎 @tahoshi

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