大麦をかき分け走り目指す処は

麦畑を駆ける


麦畑の中を駆けていく


子どもの頃の 記憶


あれは、水田ではなかった


大粒の実がなっていた


大麦だったのだろう

そう、

ちょうど

麦茶の粒粒

そのくらいの大きさだった


かさかさ

がさがさ


褐色の葉や茎は、それでもなお

硬く

まっすぐで


あれだけの粒を実らせながら

穂は垂れることなく まっすぐで



その中を 駆けた


近道をしたかったのだろう


あぜ道が隠れるほどに 実っていたし


道路も 今ほど整備されていなくて


家も まばらで

田畑に 囲まれ


突っ切っても 叱られなかった


咎められることはなかった

けれど

あれが

最初で 最後だったのかもしれない


田んぼや畑の中を通るのとは違う


匂い


まるで 外国の物語のワンシーンを演じているかのような 錯覚


麦畑の中を駆ける



麦を かき分け 走った


あの夏

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