第6話 楽しい会話、そして向かえる最終日

藤吉ふじよし「……ところで、この後どうするんだ? もう帰るか?」


星見ほしみ「んーそうですね~……まだ帰りたくないですぅ~!」


藤吉「え、そうなのか?」


星見「だって、まだお話足りないですしぃ~! それに、もっとフジヨシさんと一緒にいたいっていうか……」


藤吉「おっ、おいおい……そんなこと軽々しく言うなよ……」


星見「ふぇ? どうしてですかぁ~?(不思議そうに)」


藤吉(心の声)「こいつ、無自覚なのか……? それともわざとやってんのか……? いや、前者だろうな……たぶん……」


星見「むぅぅ……よくわかんないですけどぉ、とにかくもっとお話ししたいんですぅ~!」


藤吉「はぁ……わかったよ……。そこまで言うなら付き合ってやるよ」


星見「わーい! あ、そういえばなんですけどぉ、フジヨシさんってお仕事何されてるんですかぁ~?」


藤吉「えっ? ああ、俺は会社員だよ。一応、営業の仕事をしてるんだけどさ」


星見「へぇーそうなんですかぁ~! やっぱり、毎日忙しいんですか……?」


藤吉「あー……そうだな……それなりってところかな。最近は特に忙しくてさ、残業続きなんだよ」


星見「そうですか……大変そうですねぇ……。疲れとか溜まってませんかぁ……?」


藤吉「いや、大丈夫。こう見えても体力はある方だからさ」


星見「むぅ……フジヨシさんがそう言うならいいですけどぉ……あんまり無理しないでくださいね……?」


藤吉「わかってるよ。心配してくれてありがとな」


星見「えへへ~♪ どういたしましてですぅ~!(嬉しそうに)」


藤吉(心の声)「こうしてみると、やっぱり中学生くらいにしか見えないよなぁ……。本当にハタチ超えてるのか?」

藤吉「……そういう星見さんはどうなんだ? まだ学生だったりするのか?」


星見「わたしですかぁ? わたしは大学生ですよぉ~! 大学二年生になりますっ!」


藤吉「へーそうなんだ。……その割には随分幼い感じがするけどな(ボソッと)」


星見「むっ……! それはどういう意味ですかぁ!?(頬を膨らませて怒る)」


藤吉「あっ、悪い……! そんなつもりじゃなかったんだよ……!(慌てて弁解する)」


星見「もう! わたしだって気にしてるんですからねっ!」


藤吉「ごめんって……。そうだ、何か飲み物でも持ってくるよ。ちょっと待っててくれ(立ち上がる)」


星見「むぅ~……わかりましたぁ~……」


藤吉(心の声)「危なかった……危うく地雷を踏むところだった……。気をつけないとな……」


(しばらくして)

藤吉「お待たせ。はいこれ、コーヒーなんだけど……砂糖とかは好きに入れてくれ(カップを渡す)」


星見「ありがとうございますぅ~! では、遠慮なくいただきますねぇ~!(スティックシュガーを入れてかき混ぜる)」

星見「(一口飲んで)ん~! 甘くておいしいですぅ~!」


藤吉「そうか、それなら良かった。……星見さんは、甘いものが好きなの?」


星見「ごくごく……(カップを置いて)はい、好きですよ~! でも、それよりも辛いものの方が好きなんですけどねぇ~!」


藤吉「え、そうなのか? 意外だな……」


星見「よく言われます~。でも、辛いものを食べてるときが一番、生きてるって感じがするので好きですぅ♪」


藤吉「そ、そうなのか……?(困惑したように)」


星見「そうですよ~! フジヨシさんは、辛いもの苦手ですかぁ~?」


藤吉「いや、別にそんなことはないけど……」


星見「じゃあ今度、一緒に激辛料理食べに行きましょうよ~!」


藤吉「えっ……? なんでそうなるんだ……?」


星見「いいから行きましょうよ~! 絶対楽しいですから~!」


藤吉「そ、そうか……? いやでもなぁ……やっぱり遠慮しとくよ……」


星見「む~……残念ですぅ~……。あ、それじゃあ今度一緒にカレー作りましょうよ~!」


藤吉「カレーかぁ……まぁ、それくらいならいいか……。わかったよ」


星見「やったぁ~♪ 約束ですからね~!」


藤吉「ああ、約束するよ」


藤吉(モノローグ)「この日は、この辺りで解散することになったんだが、その後もちょくちょく星見さんは俺の部屋に遊びにくるようになった。その度に、他愛もない話をして過ごしたりしてさ……。正直、最初は面倒だと思ってたんだけど、今は不思議とそんな気はしないんだよなぁ……。そんなこんなで、気づけば友達期間も残り一日になっていた。だが、ここでまたちょっとした事件が起こってしまったんだ……」



【藤吉の住むアパート前】

藤吉(心の声)「はぁ……今日も疲れたな……。そういえば、今日で星見さんとの約束も終わりか……。長いようで短かったな……」


(階段を上りきったところで、星見が部屋の前でうずくまっているのを見つける)

藤吉(心の声)「あれ……? あそこにいるのって星見さんじゃないか? なんで部屋の前なんかにいるんだ……?」


(近づくと、星見が泣いていることに気づく)

藤吉「ちょっ……! お、おい、どうしたんだ!?」


(星見はゆっくりと顔を上げて)

星見「……ぐすっ……フジヨシさぁん(涙声で)」


藤吉「ど、どうしたっていうんだ……? なんで泣いてるんだ……?」


星見「うぅ~……わたしぃ、鍵、失くしちゃってぇ……中に入れないんですぅ~……」


藤吉「えええっ!? 鍵失くしたって、マジかよ!?」


星見「ごめんなさいぃ~! どうしよう~……!(さらに泣き出す)」


藤吉「お、落ち着けって! 大丈夫だから! そうだ、合鍵は?」


星見「部屋の中ですぅ~!」


藤吉「マジか……! 管理人さんに連絡……いや、こんな遅くに迷惑だよな……。仕方ない、とりあえず俺の部屋に入れよ。一晩くらいなら泊められるからさ」


星見「え、でも迷惑じゃ……」


藤吉「いいからいいから。ずっとそこにいたら風邪ひいちまうだろ?」


星見「そ、そうですね……すみません……(しゅんとする)」


藤吉「ほら、早く入ろう。な?」


星見「あ、ありがとうございますぅ……」

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