白雪姫

6物語はまた始まる・・・話

白雪姫


この物語はいろいろなパターンがあるが、一番有名なのは絵本版。


ある所に、可愛らしい王女の白雪姫と義母の王妃がいた。

王妃が『真実の鏡』に、この世で一番美しいのは誰か?と聞くと、鏡は「白雪姫」と答える。

怒った王妃は白雪姫を殺すように命じるが、憐れんだ家来(あるいは、狩人とも)は白雪姫を逃す。

そうとは知らない王妃は、ある日再びまた、鏡に同じことを尋ねると同じことを鏡が答えた。

白雪姫がまだ生きていると知った王妃は、老女に化け、白雪姫の所に向かう。

その頃白雪姫は、森の中で七人の小人と出会い、一緒に暮らしていた。

だが小人がいない時に、老女に化けた王妃は毒りんごを白雪姫に渡し、彼女にそれを食べさせた。

毒りんごを食べて意識を失った白雪姫。

白雪姫が死んだと思った小人たちは、彼女をガラスの棺の中に入れる。

そこへちょうど通りかかった王子が白雪姫にキスをすることで、彼女は生き返り、二人は結ばれる。

                           めでたし。めでたし。


ちゃんとしたグリム童話版だと、白雪姫は後二回ほど殺されかけていたり、喉に引っかかっていた毒りんごが、棺の揺れで運良く喉から飛び出したり・・・。また、悪女の王妃は最後に、熱々の鉄のサンダルをはかされて、永遠と踊らされたり・・・。

とにかく色々なパターンがあり、正しい伝承と言われている物語はない。


 それにしても、今回は誰への転生だろうか?

 前回のシンデレラ物語ではは王子だったが、今回もまた王子か?

 いや、それとも狩人か? 小人か?


深い深い眠りから再び目が覚めていく。

今回も前回と同様に、体が揺れる感覚、鳥のさえずりや人の声が聞こえてくる。

馬車の中にいるのはわかっている。

まさか毒りんごにやられた白雪姫を、現代医療の知識を駆使して救う医者役とか?

そんなわけないか。


「・・・。・・王!。」

誰かの声がする。

「王!王よ!」

目を開けると、前回とは異なり、ほっそりとした人物が目の前にいた。

ただ、白いシャツに黒いタキシードを羽織っていて、どうやら彼も執事のようだ。

「王。どうされたんですか?」

・・・・はぁーーー!!!お、王だと!

い、いつ、どの場面で出てくるんだ?

白雪姫の父親か?

馬車の窓を見る。

そこに映っていたのは、金髪の髪の毛に髭。整った顔立ちの40代くらいの男性で、赤いローブを羽織っており、頭には金色の王冠だ。

 今度は王様転生とは・・・


前回のように、脳裏にこれまでの出来事がスクリーンのように流れる。

森を散策中、たまたま出会った女性と結婚、その人が「白雪」で・・・

・・・ちょ、ちょ待て〜〜〜!!!

つまり、俺が転生しているこの王は、物語上、白雪姫と出会ったあの王子か?

・・・・・・物語終わってるんですけど!!!

ど、どういうことだ?

お〜い神。お〜い。説明を求む!!

 いくら呼べども、返事なし。

仕方ない。この男の記憶をもう一度たどり直すか。

この王は、今まで国外で外交をしていて、7年間、国に帰っていなかった。

そのため、久しぶりの帰国となる。

さらに、王には娘が一人いる。

白雪姫と結婚する前の前妻との間にもうけた子どもだ。

白雪姫と結婚をする、という理由で離婚した。

・・・最低だぞ、この王は。

とまぁ〜、これがこの王の記憶か。

だが、いずれにせよ白雪姫の話は終わってるぞ!

ここから何がどう展開されていくんだ?

馬車の中で揺られながらずっと考えていた・・・。


「・・・王!着きましたよ。」

執事が言う。

久しぶり?の城に着き、我が部屋に向かう。

部屋に入る前、誰かが後ろを通り過ぎようとしていた。

振り返ると王妃の白雪姫だった。

その美しさは変わらず、長く光る、金髪の髪をなびかせながら歩いていた。

だが、

「・・・お帰りなさい。」

そう一言だけ言って、立ち去って行ってしまった。

7年ぶりの夫の帰国だというのに・・・。

 この二人の夫婦関係は冷え切ってしまっているのだろうか?

まあ、どちらでもいい。俺には関係ない。


広々として豪華な寝室に入る俺。

そのままベッドに倒れこみ、再び考えをめぐらせた。

 どうなっているんだ、この世界は? よくわからん。

ふと壁を見ると、そこには手紙のようななものが貼ってあった。

そう言えばそれは結婚式の日に、白雪姫の父親から受け取った手紙だと思い出した。


『 過去は繰り返され、君は自分の過ちを知るだろう。 』

    

それだけしか書かれていなかった。

 どういう意味だ? なにかヒントになるのか?

しばらく考えた。


ー 娘に会いたい。


俺の体の中で王の魂が言う。

 おい、親バカ・・・てほどでもない。当たり前か。


俺は部屋を出て近くにいた衛兵に聞く。

「娘はどこだ?」

威厳たっぷりの声。

「そ、その〜、王女様ですが、7年前に忽然と、す、姿をお消しになられて・・・。これまでも必死に行方を捜しているのですが・・・。王様もご存知かと思っておりましたが・・・」

俺は思わず天を見上げてしまった。



 城の一角

広々とした部屋には、大きな鏡があった。

そこに向かって、一人の女性が話しかけていた。

「あの人が帰ってきた。で、でも、バレやしない。私が食べたのだから、魂はないはず。」

一人つぶやく。

「そ、そうだ、久しぶりにあの質問をしよう。」

一呼吸置き、鏡を見て言う。

「鏡よ鏡。この世で一番美しいのは誰だ?」


ー それは、この国の王女『白雪』であります。


自分の名と同じ名前を言われ、顔を真っ赤にして憤る。

が、すぐに行動に移した。

黒いフードを被り、一人闇に消えていった・・・。

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