魔女と病院

 僕は今、またあの病院へと来ていた。

 

 正直あの白髪野郎の言葉なんてどうでもいいけど、ただこのまま終わるのが気持ち的に嫌だった。

 逃げるような、怯えるように逃げる自分の顔がいまでも脳裏に張り付いて消えなかった。

 そんな情けない姿のまま終わらせるのももやもやするし、ここに来ればそのもやもやも多少は変わるのではと思ってまたここまで歩いてきた。

 てっきりこの駅にたどり着くには彼女の存在がなければならないのだとばかり思っていたから、駅に着いて正直少し驚いた。

「もしかするとこの剣を受け取ったからか……」

 正直どっちの手にその力があるのかわからず、両方の手のひらを交互に見た。

 手に変わったところはない。

 首を傾げて、病院へと歩む。


 道中歩きながら託されたらしい剣が出せないか、掌と甲をクルクルさせながら見るが何もない。

 それを両手で繰り返しても何も起きないし、何もない。

 見渡しても田んぼしかない、アスファルトで舗装されただけの道を道なりに歩きながら数度繰り返しながら歩いた。

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