魔女と海と、決意

 道中で買ったフラペチーノを半分残し、バシャバシャと音をさせながら僕らは砂浜を並んで歩く。

 ザリザリと足音を鳴らしながら、何も言わずに砂浜を歩く。

 彼女はやっぱり一人で波打ち際へ駆け寄り、打ち寄せる波と引く波と追いかけっこをしている。

「ほら、あなたもこっちにおいでよ」

 彼女はそういうと靴も靴下も僕の隣に置き去りにして、素足を波に撫でさせながら僕を手招きする。

「おいで、くすぐったいよ」

 彼女のその言葉に僕も彼女の靴の隣に置き去りにして、彼女の元へ歩いて行く。

 バシャッ――

 彼女は両手で波を掬うと僕に放り投げてきた。

 僕の前髪やシャツが濡れる。

 その姿を彼女は笑う。

 僕も負けじと波を放り返すと「やったなー」っと言って彼女は僕にタックルをしてくる。

 二人して波に倒れ込み、当然僕は彼女の下になり彼女が覆いかぶさる形になった。

 波が今度は僕の後ろ髪を撫でては引いていく。

僕らが倒れた衝撃で二人して波を被りびしょびしょになった。

 彼女から零れる雫が僕を伝い、波へと帰っていく。

 その瞬間が数滴あった後、僕らは二人して笑いあった

 ひとしきり笑いあった後砂浜と道路の境界に位置するコンクリート壁の上に足を投げ出しながら二人で並んで寝転んだ。

 ふと横を見るとシャツが濡れたせいで彼女の水色のブラが透けて見えた。

 彼女が下着を揃えて身に着けるタイプなら下も同じ色だったのだろうなぁっと学校でのやりとりを思い出した。

「エッチ.....」

 彼女は空を見たまま呟いた。

 「隣には僕しかいないんだけど」

「だから、あなたに言ってるのよ」

 ソウデスネ......

「ある人に人生託されたんだけど、しんどいなぁって」

「しんどいなら、辞めたらいいじゃない。あなたじゃなくても、別の誰かがやってくれるわよ」

「僕じゃないとダメなんだって言われたんだよ」

 空に浮かぶ雲を目で追いながら口に出した。

「あなた馬鹿ね......。そんなに辛いなら私が何度でも連れ出してあげるわよ」

 「僕の奢りで......な......」

 「当然よ、ふふっ」

 横目に彼女がこっちに顔を向けているのがわかる。

 それに気付きつつも僕は彼女へ顔を向けない。

「次は水族館へ連れて行ってね」

「そうだなぁ、約束したもんな」

 そういった後彼女の方を向いた、すると彼女と目が合った。

 「そうよ、約束破ったら針千本飲ませるからね」

 彼女は笑いながら僕の手を握った。

 僕はその手を握り返す、だけどすぐその手を離した。

「そろそろ帰るよ」

「わかった、またいつもの場所で」

 そう言って、自分の伸びた影を踏むように彼女に背を向けて歩き出した。

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