平凡だと思い込むボンクラ第四王女は広がった世界を知りたい

くうき

第1話:鳥籠の中いる少女

 私の人生は、ずっとこの鳥籠王城の中で過ごしてきていた。私、シルフィア=フォン=バルチックはこの国スペルプラクティス王国の第4王女として生を受けた。しかし私は、姉や兄たちのように傑出した才能は無かった。その結果、私は貴族たちが15歳になったら必ず行かなくてはいけない学園に行くことは許されず、一人王城に与えられた一室でただただ退屈で、憂鬱な日常を送っていた。


 そして、数年の月日が流れて私が18歳になったころ、突然父上から謁見の間へ来るようにと言われて有無も言わされることも無く引っ張り出されてしまった。

厳つい顔立ちに少しだけは江木派が白く染まりつつある壮年の男。そんな姿のした男が偉そうな椅子に座り私のこと冷たい眼で見ていた。そして、隣には生母。つまりこの国の正妃さま。


「さて………シルフィアよ。久しいの。」

「はい、父上も相変わらずお元気そうで。」


 当たり障りのない話を淡々とする。形式ばったものに少々、肩肘に力が入ってしまいましたが何とか無難にやり過ごすことができました。そして、突如父上は話題を転換した。


「時にシルフィアよ。其方は社交界に出ることなくどのくらいが経過した?」

「はい。およそ、3年くらいかと。」

「そうか。………では、我の名代として其方の従妹であるミロナ公爵令嬢の誕生祭に顔を出してもらいたい。」

「………は、はぁ。」

「なんだ?間延びした声は?余を愚弄しているつもりか?其方の返事は『はい』しかないと心得よ。」

「は、はい分かりました。父上。それで期限は。」


 あまりにも突然のことを言われてしまって私はつい、言葉を失ってしまった。そのあとのことは覚えていない。でも、私はそこからとんとん拍子で従妹のミロナの誕生祭に向けての準備をしたのでした。


 ミロナの誕生祭当日。私は幾年かぶりに見た馬車に乗って、カスピ公爵家へ馬を走らせていきました。あっ、カスピ公爵家っていうのはミロナの家の家名です。


「………はぁ。」


 馬車から眺める街並みの景色はいつも見ている王城の窓から見る空よりも美しくて気高さがあった。なのに、私の気持ちはずっと曇り空………はたまた海の暗い底なのか正直分からなくなってしまいました。

 そんな、溜息が一つだけ本音のように出てしまいました。侍女の方々はそんな私を見ながらも無表情に仕事をこなしていくのでした。


「今、何やってるのかしら?私は・・・。」


 遠くに行ってしまった王城を片目にして小さな独り言がついつい出てしまったのでした。


 そして、事件は起こってしまうのでした。私はカスピ公爵にもとい、叔父上に今回のことを話して久しぶりの社交界へ足を踏み入れました。私は、王の名代ということもあり様々な爵位を持つお偉い方々とお話をしたり近況を聞いたりと、少しでも外の見聞を知ろうといろんなお話をお聞きになりました。

 そんなときでした。私の目の前を突然通ったと思えば私の頭上へ飲み物を垂れ流し、それを悪いとも思わず嬉々とした笑みで私を見下す少女が一人いました。


「やっほーシルフィア。およそ、3年ぶりかしら?」

「………お久しぶりですね。ミロナ公爵令嬢。」

「それにしても、ずいぶんとみずぼらしい格好のこ・と。貴女は淑女としての自覚がなくって??」


 ミロナの言動にカスピ公爵は顔を青ざめながら彼女を止めようと必死に動いた。しかし、それは虚しく彼女は突然言い出したのだ。


「あぁ、そうそう。貴女と私の父上ですが………今日を持って王族籍を剥奪されるそうよ。」

「えっ??」


 彼女が言った言葉に誕生祭の会場は、人を祝うような会場から断罪をするのではないのかという期待なのか、はたまた私たちが何かしらの罪を犯したと思う侮蔑なのか分からない視線がそこにはあった。


 そして、何も抵抗することも無く、私と叔父上は突然王族から除外された。罪状は………国家転覆の疑い、だそうだ。母上は、父上に必死の弁明をしたけどそんなことは王の目の前では塵芥と同等のようなものでした。

 一方叔父上は、何もわからないまま冤罪を訴えられどういうことなのか分からずじまい。結果としては私は王城から追い出され、平民となった。一方叔父上は打ち首にされ街の中央で3日3晩雨風の上に晒され続けていた。


「どうしましょう。これから。」


 突然、しかも無一文で家から追い出された私は何もないただの少女になり下がりました。そして、敷かれていたレールから突然落とされて何をすればいいのかもわからず、ただ、城下町をふらり、ふらりと歩き回りました。


 お金の稼ぎ方なんてわかりません。だって王族にはお金があるから。


 服を買う場所も分かりません。だって、商人があっちからやって来るのだから。


 ご飯をどこで食べればいいのか分かりません。だって、勝手に出てくると思ってるのだから。


 1週間、何もかもに絶望しました。そして見えていなかった世界を知って恐怖を抱きました。そして、私はまだまだ幼稚で拙いただ身体的にしか成長していない子供なんだと痛感させられました。


「………ホント、自分が嫌で、嫌でたまらないわ。」


雨が降りしきる街のはずれで一人、膝から崩れ落ちて意識が遠のいていくのを感じました。それと同時に怒号にも近い叫びが私の耳に刺さってきました。でも、もう疲れちゃいました。


「おい!!嬢ちゃん!!しっかりしろっ。嬢ちゃん!!おい、お前ら!!急いで家へ帰る!!それと医者を手配してくれ!!」


 ある一人の青年は彼女が誰なのか知らない。でも、それでも何故か助けたいと願った。









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