第8話 かませ犬は救いたい②

グレイブの両親の表情は先程とは全く別人のようであり、悪意や陰謀が一切なくなり、代わりに優しさや温かさがにじみ出ていた。周囲の人々は驚きと戸惑いを抱えて、その変化に目を見張っている。


俺はそんな二人に改めて視線を向けた。


夜中に街道に姿を現したら、間違って討伐されてもおかしくないほどの化け物じみた顔面。その顔は常識を超えるような存在感がある。その下にある、醜く太った山のような巨大な体は周囲に圧倒的な存在感を放っている。


うん、「けんま」で見た姿よりも何百倍も酷い風貌をしている。実際に初めてゲームでその姿を見た時でさえ鳥肌が立つほど気持ち悪いと感じたが、液晶越しで見るのと実際に目の前で見るのでは迫力が段違いだ。現に父親のインパクトが強すぎて、さっきからザマスザマス五月蝿い求愛中の孔雀より派手な格好をしたグレイブの母親の姿が霞んで見える。


 「愛しの我が息子よ、今直ぐにでもお前の快気祝いのパーティを開いてやりたいところだが、ちょっとだけ我慢してくれノーネ。今はこの餓鬼どもとお話し合いをしなければいけないノーネ」


ただグレイブの父親は、そんな姿に圧倒されて黙り込んでいる俺に、聞かれる前もなく今の現状をペラペラと話し始めた。どうやら突然現れた俺のせいで女をお預けにされている今、グレイブに構っている暇はないことを暗に伝えたいみたいだ。


その証拠にグレイブの父親の目線は先程からずっとエリスのことをロックオンしている。この様子では、何かと理由を付けていつ部屋から追い出されてもおかしくないだろう。どうやら悠長に親子の会話を楽しんでいる余裕なんてものははないようだ。


「その事なんだけどパパ、王女様を許・・・・・・・」


俺は一刻でも早くグレイブの父親に第三王女を許すように訴えようとした。しかし、その言葉を発しようとした途中で俺はどうしようもない違和感に襲われ、その言葉を途中で自ら飲み込んだ。

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