小暮コーポレーション②

 ホテルの部屋では、九時半までスマホを使ってもいい。それ故、多くの生徒はスマホを享受することに全力を注ぐ。

 そこまでではない。とにかく、俺が蛙と連絡を取り合う、まあ、友人とスマホ上で連絡を取り合うのは校則上禁止だが、それは不自然ではなかった。

「何か策とかはあるのか?」

「実は」

 しばらく、言っても十数秒だが、間が空いた。

「僕は交換の能力を持っているんだ」

 しばらく、こちらはしっかりとしばらく、間を空けてしまう。ただ、小道のように、能力者の知り合いはいたので、そこそこ飲み込むことはできた。と、言うか。自分も能力者なのだ。

「なるほど、どう言う能力なんだ?」

 能力に無知の振りをするには、少し話が分かりすぎな気がしたが、蛙は都合がいいと判断したらしく、淡々と説明をしてくれた。

「物と物の位置を入れ替えるんだ。君の近くに何か目印のあるものはないかい?」

「今読んでる小説なら」

「何てタイトルだい?」

「『星屑の家』」

 ああ、天野眼鏡のか。彼女はその小説、さらに作者も知っていたらしく、反応した。

 その次の瞬間、の、一秒後くらいに、俺の本が無くなった。正確に言えば、違う本になった。さらに、ペンのおまけ付きだ。

「本だけじゃなくペンもきたけれど」

「僕の交換はね、交換した物の上にあるものも、交換されるんだよ」

 またその数秒後、元に戻った。これは人から借りたものなので、無くす訳にはいかない。なんなら、同室の上野圭助から借りたものなので、俺の心持ちから考えても、絶対に無くせなかった。

 これはフラグでも伏線でもない

「それも何かに使えるかもしれない」

「まあ、一番は説得だけどね」

 それはそうだ。ただ、姫路城破壊を企てる者に通じるか、だが。

「通じなければ、少し荒々しい手段を取らなければいけないかもしれない」

 拘束とか。いずれにせよ、不用意かもしれないが、どちらかが見張っていれば大丈夫だろう。これも、フラグではない。はずだ。

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