第48話 対人戦

――1ヵ月後


 決闘修行場に俺、セレナス、フーチェ、マグ、アミナが来ていた。

 その周囲には岩剛斎やリリアナ、道場の人達も集まっている。


 俺とセレナスはこの1ヵ月、二人で魔装魂での決闘修行を行っていた。

 だが、色々なパターンと戦った方がいい。という事で、今回初めて皆に来てもらった。


 フーチェ達は神徒だったが魔装魂を知らなかった。

 だが教えてみると普通に使用する事が出来たため、決闘に協力してもらう事となった。


「これ……全力で戦っても死なないからすごくいい」

「おねーちゃん! これ楽しいね!」


 マグとアミナは魔装魂の状態でぴょんぴょん動き回っている。

 その姿を見ながらセレナスは、


「ユニークリング……思ってたより生き残っているんだな」


 と呟いた。


 そういえばフーチェの姿が見えないな。

 そう思って俺はサーチを行い、フーチェの場所へと向かった。


「フーチェどうしたんだ?」


 木に寄りかかって空を見上げていたフーチェに俺は話しかけた。


「あ、ロフルさん!」


 フーチェは少し驚きつつ、そのまま


「ロフルさん、セレナスはフロストハート家なんですよね?」


 と質問してきた。


「そうだけど?」


 俺がそう言うと、やっぱりそうですか。

 んーと何やら悩んでいた。


「セレナスとは知り合い? 会うと気まずいとか……?」


 俺がそう聞いてみると、フーチェは


「セレナスは、私の弟です!」


 と答えた。

 俺がその回答にビックリすると、そのままフーチェは説明してくれた。


 まず、フーチェのフルネームは、フーチェ・B・フロストハートだった。

 そして、マグ達もそうなのか?

 と聞くと、マグとアミナは姉妹だから同じでしょうけど、私だけは違う一族です。

 と答えた。


 俺はてっきり三姉妹だと思っていたから少し驚いた。


「セレナスはまだ赤ちゃんだったから、姉の私がいた事さえ知らないかもです」

「何というか……どう接すればいいのか分からない訳だな?」

「そうなんです……」


 そういうフーチェに、

 向こうが覚えてないのならいきなり姉ですとか言っても困惑するし、

 友人と接すれば良いのではないか? と提案した。


「そうですね。今更打ち明けたいとも思いませんし! それで行きます!」


 とフーチェは明るい表情に戻ったので、

 一緒に決闘修行場へと戻っていった。


 そして、戻ってくるとセレナスは生身の状態でマグとアミナの戦いを眺めていた。


「あれ、セレナスは戦わないのか?」


 俺がそう質問すると、


「マグに負けたよ。くそっ……」


 と悔しそうな表情を浮かべた。

 マグ、セレナスに勝つとはな……!


 そう思いながら俺も二人の決闘を観戦し始めた。


 アミナも2週間程前に俺と試練に行った為、六輪に成長している。


 特性は氷結、名前の通り魔法に氷を付与する能力だ。


 アミナが放つブラストを見ると、水蛇の槍からでる氷のブラストと瓜二つで着弾時に氷山を発生させていた。

 氷山の大きさなどは槍に比べると小さいが……。


 そしてマグの戦闘スタイルは久々に見たが大きく変わっていた。

 キーキューブを発動しつつ、中からデッドマンティスマシンの鎌を加工した刃を取り出し、それを巧みに操っていた。

 相手に高速で射出したり、身を守る為に自身の前方で留めたりしている。


 磁力の操作がかなり上手くなっている。


「きゃぁ!」


 アミナの魔装魂に刃が突き刺さり魔装魂が解除された。


「二連勝頂き」


 マグはガッツポーズをしながら言った。


「お姉ちゃん明日も戦おうね!」


 アミナの問いにマグはもちろんと答えた。


 その時、マグと俺は目が合った。


「ロフル、一勝負しよう」


 マグが俺を指しながら言ってきた為、

 快諾し、魔装魂になった。


「マグ、磁力の使い方、凄く上手くなったな!」

「ふふ、でしょ?」


 マグはドヤ顔になっていた。


「では始めるぞ!」


 岩剛斎が審判となり、開始の合図を行うようだ。

 マグとの闘い……結構わくわくしている。


「初めッ!」


 開始と同時にマグは3本の鎌を取り出し放ってきた。

 それぞれ円軌道を描き俺に向かってきた。

 エンハンスの力だけでかなり高速で飛ばせるようだな……。


「四輪バインド!」


 俺は、飛んできた鎌二本をバインドのチェーンで巻き取り無力化した。

 1本は俺の頭上を通り過ぎて行った為見過ごした。

 しかし、前方を見た瞬間、マグの姿は消えていた。


――カッ!


 頭上の鎌から音がなった。

 瞬間的に上をみたら、マグが一瞬で鎌の上に移動していたのだ。

 どうやら自分自身を鎌に吸い寄せ、高速で移動していたようだ。

 そして、すでに魔法を唱える寸前だった。


「六輪バースト」


――ドンッ!!


「直撃だ。マグの三連勝か!?」


 周囲はそのように騒めいているが……。


「闘爆衝(とうばくしょう)!!」


 俺は爆風に紛れ、マグに強烈な一打を放った。

 そして、マグの魔装魂は消滅した。


「何故ダメージが無い……?」


 セレナスは俺達を見ながら呟いた。

 マグも同じ疑問を持っており、

 質問をしてきた。


「成功するか分からなかったけど、キーキューブで防いだ」


 俺はそう言って、説明を始めた。

 キーキューブは50cm程のサイズと決まっているが、俺の特性制御を用いれば、サイズを弄る事が出来る事に気がついた。


 だから、1m程まで広げて、バーストに向かって箱の口を開いた。

 そしたら、バーストは箱に吸い込まれていった。


 ドヤ顔でそう説明すると、よこからリリアナが来て、


「キーキューブは他者に見えないから……他人から見たら見えないバリアね。でも中身は大丈夫なの?」


 と聞いてきた。

 俺はハッとし、咄嗟に開けてみると……


――どんっ!!


 とバーストが箱から噴射され俺の魔装魂も破壊されてしまった。

 そして……


「ああ、中身が全部ぐちゃぐちゃだ……」


 と原形をとどめていない中身を見て落胆した。

 万が一これをまたやる場合には、何も入れていないキーキューブでやらないといけないな……。


 その日を境に魔装魂が出来るメンバーでほぼ毎日集まり、試合形式で修行をした。


 そして、さらに1カ月が経ち……

 いよいよ上層へ向かう時期になっていた。

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