第32話 奥へ

 蜘蛛型兵器の居たフロアへと戻ってきた。

 そして天井を見上げた。

 そこには直径20m程の丸いゲートがあり、固く閉ざされている。

 蜘蛛型兵器は多分ここを通って何処かへ移動したに違いない。


 俺はそのゲートに向かってブラストを放った。

 すると、ゲートは大きな音を立て歪んだ。

 その際、少しの隙間が出来たためそこからゲート内に侵入した。


 中はゲートの形と同じく円柱状で、垂直に上へと続いている。

 手をかけられるような場所は無く、ツルツルとしている為、

 俺は指先のエンハンス出力を2に上昇させ、壁を指で突き刺しながら登っていった。


 しばらく登ると巨大なベルトコンベアが真っ直ぐに伸びる通路に出てきた。

 そのベルトコンベアの周囲には機械のアームやよく分からない機械などが設置されている。


「まるで巨大な工場だな……」


 そう思いながら静止したベルトコンベアの上を真っ直ぐに歩いた。

 そして、その先には大きな空間が広がっており、ベルトコンベアの脇でアームがデットマンティスマシンを組み上げている。


 その光景を見て俺はただ驚くばかりだった。

 魔法とかがあるファンタジーな世界で、こんな機械工場を見る事になるとは思わなかったな。


 デットマンティスマシンを組み立てているその奥では、蜘蛛型の機械が二機格納されていた。

 その内、一機は頭部の砲台を溶接されている。

 多分、俺が傷つけた蜘蛛型兵器だろう。


 今まで見た情報から察するに、

 ここはマシンのつく魔物を生産する施設で間違いないようだ。


 しかし、これほど巨大な施設で稼働しているにもかかわらず、人の気配は一切しない。


 人が稼働させているのであればそいつに止めさせれば良いとは思っていたけど、

 現時点では難しそうだ。


「少しだけ壊してみるか。人が来るかもしれない」


 俺は蜘蛛型兵器を溶接しているアームとベルトコンベアのゴム部分を破壊してみた。

 すると、第3生産工場にて機器トラブル発生。

 メンテナンスモードへ移行します。

 とアラート音と共に英語でアナウンスが流れた。

 そして、忙しそうに動いていたデッドマンティスマシンを組むマシン含め、全てが停止した。


 第3生産工場か……。

 少なくとも3つ生産場所があるという事か。


 そして、しばらく待つとドローンのような機械が現れ、壊したアームのスキャンをし始めた。

 人が来る気配は相変わらず無い。


 思いっきり壊さないとダメなのか?

 しかし、今はこの施設の情報が欲しい。

 破壊するのは簡単だが、それでは根本的に解決はしない気がする。


「生産が止まる程度には破壊しておくか……」


 そうしてもう何本かのアームを折っておいた。


 修理する為の部品が必要なはずだ。

 そう思って、部品の流れを確認した。


 部品はコンテナでここまで運ばれてくるが、そのコンテナはベルトコンベアに乗ってこの部屋まで運ばれてきていた。

 そのベルトコンベアを逆にたどっていくと、大型の昇降機が見えてきた。


 昇降機ではコンテナをベルトコンベアに乗せるロボットや仕分けする機械などが忙しそうに動いている。


 一通り終わると、昇降機はそのまま下へと移動していった。


「どこまで降りるんだ……?」


 下へ移動し始めてから10分程経過している。

 一体どれだけ深い場所に行くのだろうか。


 それからしばらくすると昇降機が止まった。

 降りてきた場所は正方形の部屋の中心だった。

 広さはテニスコート二面分程で、

 周囲の壁は大きな引き出しで敷き詰められており、

 ドローンが引き出しを開け、中から何か部品を取り出したりしている。


 そして、俺と一緒に昇降機を降りてきたコンテナに部品を運んでいる。

 様子を見ているとベルトコンベアのゴムと思われるものや、アームの部品などを入れていた。


 この部屋には1か所だけ線路が引かれた通路がある。

 ここまで来たのなら最後まで調べなければならない。


 そう思い、俺は線路の方へと向かった。

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