2.飯の時間?
「飯の時間だ。出ろ。このクソども」
白い服を纏い、白い翼を持った。どうやらこいつらは看守の下級天使のようだが……。何て言いようだ、言うに事欠いて、俺達をクソどもだと?
俺が頭にきて、その看守の天使を睨みつけようとしたら。同じ檻に入っていたガタイが良くて無口なガゾって男が、俺の頭を押さえて下を向けて。囁いた。
「殺されるぞ、エイタ。あいつらは俺らの命は虫ほどにも大切にはしない」
ってな。なんてこった、俺は本来なら今頃。可愛い嫁のちーちゃんとのデートで、エオンモールで映画見てる筈だったのに!!
鎖で、俺達の手枷を繋いで。縦一列に並べ、俺達をどこかに連れて行く、看守天使ども。
飯の時間って言っていたから、大食堂にでも行くのかな?
そう思っていたら辿り着いたのは。
地下に設営されている、大空間。
真ん中に砂地の円形の土台があって。
その外側周囲は、塀で仕切られ。段になるように、どう考えても。
『観客席』が設えてあった。
「おい、テーブルはどこだよ? 飯だろ?」
俺がそう言うと、看守天使が。こちらを見てニヤリと笑った。
「まあ心配するな、クソども。お前らには勿体ない程の新鮮素材でもてなしてやるさ」
そう言うと、同僚らしき別の看守天使とクスクス笑ってやがる。何だってんだ。
「ナイフが必要だな、肉を喰うには」
看守天使の長がやって来て、そう言うと。そいつは空中に手をかざして、何かを呟いた。すると、剣や斧や槍が大量に現れ、砂地の地面に落ちて小さな山を作る。
「好きなものを好きに使え。ここはテーブルマナーにそうは煩くはない。何しろ、クソどもの管理所だからな」
看守天使の長は、何がおかしいのか。そう言った後にゲラゲラ笑った。
「では、諸君、クソども。ランチタイムを愉しむがいい」
奴がそう言うと、看守天使どもが、俺達の手枷足枷を外す。
それから、どう見ても食堂ではなく。
『闘技場』にしか見えない、この場所の。
観客席にその翼で飛び上がって、席についてこちらを見下ろしている。
「さてと。スクラップビースト。出番だ」
看守天使の長が、手に握った濁った緑色の水晶結晶を握り砕くと。
俺達、異界から召喚された者たちの前に!!
なんだか、『おかしな』身体を持った、巨大な野獣が出現した!!
「なんだありゃ!! 首の後ろから足生えてるし!! 胴体から虫みてぇに腕が何本も!! 目の数が5つ? 奇数じゃねーか?! 何だアレ、見ててめっちゃ気色ワリィ!!」
俺がそう叫ぶと。ガゾの奴が、武器の山から斧を拾い上げながら、構えて言う。
「エイタ。アレが俺達の飯だ。この神帝国キリスタリアの兵器獣開発部が、実験体に使って失敗した『神獣』のなりそこないだ」
「あんなもん……!! 食えるかっ!!」
「他に食う物はない。死にたくなければ、アレを殺して食うしかない」
「……ちっ!! ひでぇひでぇ!! 何だってんだこの世界はっ!!」
ガゾが身振りで、武器を構えろと促してくるので。俺は槍を一本、武器の山から拾って構えた。
じっさい、何で槍を選んだかというと。
俺には、現実世界というか、地球では。
武器なんかに触れる機会は、28年間生きていて一度もなかったので、どの武器に関しても全くの素人であり。
そうであるなら、一番リーチが長い武器である槍がいいだろうと単純に思っただけなんだが。
ガゾと俺が武器を拾うと、俺達と同じ牢にいた連中や、また。
別の牢からも連れてこられたらしい連中も、めいめい各々武器を拾い始めた。
「はっは。準備はいいようだな? クソども諸君!! ではかかれ!! スクラップビースト!!」
看守天使の長が、そう言うと!!
スクラップビーストというらしい、神獣の出来損ないは大きく息を吸い込んだ!!
* * *
「アシッドブレスアタックが来る!! 皆、散れっ!!」
どうやら、俺達の牢で一番戦い慣れているのは。意外にも一番無口な、あのガゾのようだった。
戦闘が始まった途端に、表情が迫力を持ち。声も凛然としてよく通るようになった。
ガゾの言うように、大きく息を吸い込んだのちのスクラップビーストは。何かヤバい緑色の液体を含んだ、霧の吐息を俺達に浴びせてくる!!
「ぎゃあっ!! 肌が!! 肌が溶ける!!」
くっそ!! 俺は何とか、砂地の上を転がって回避したが!!
あの酸の霧らしき吐息を喰らった、同じ牢で話した仲の人間の一人が!!
腐食して焼けただれる全身を押さえて、もがきまわる!!
「てっめえぇ!!」
俺は頭にきた。通じようがどうだろうが知らねぇ!! あいつの仇、取ってやる!
そうおもって、槍を構えて。
スクラップビーストに向かって突っ込む!!
「……ほう?」
なんか、耳障りな。看守天使の長の嘆息が聴こえたが。
あのクソ天使共の事なんぞ、俺は知らん!!
ドスッ!! と!! スクラップビーストの腹に、槍が刺さる。
手ごたえありだ、やったぜこの野郎!!
『……ゴゥア……アッ!!』
俺が、槍で脇腹を突き通してやった、スクラップビーストは。
赤い五つの目の付いた頭をこっちに向けて。睨みつけてくる。
気色わりーんだよ、この野郎!!
「エイタ!! そいつをそのまま抑えて置け!!」
ガゾの声が聞こえた!!
その声がした方を振り向くと!!
ガゾが大斧を振りかざし、大跳躍をして。
スクラップビーストの首筋に、凄まじい一撃を。
叩き込むところだった!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます