第7話 カササギの恋

 七夕の夜、僕は一人で学校の裏庭にいた。グラウンドには多くのクラスメートが、そして体育館裏には親友と女の子がおり、僕はその二人の事を考えながら一人でベンチに座っていた。



「あの二人、うまく行ってると良いな」



 親友がその子を好きだと知ったのは少し前の事で、街で偶然出会った時に少し一緒に遊んだ事から好きになり、それからずっと頭から離れないと言っていた。


 その子は僕が少し気になっていた子の親友であったため、恋が成就すれば僕も少しは勇気が出て、その子にアタック出来るんじゃないかと期待していた。


 ただ、思っていたよりも親友は奥手だったために二人を一緒にさせるのにも苦労し、今夜のクラス会でようやく二人きりにさせられたのだ。



「苦労したけど、これで一安心かな」



 そんな事を呟いていたその時だった。



「あ、カササギ君みーつけた」

「え?」



 見ると、そこにいたのは僕が気になっていた子だった。



「ど、どうしたの? というか、カササギって?」

「七夕の伝説にもあったでしょ? カササギが橋渡しをしたって」

「そういえば、先生がそんな事を話してたっけ」

「それで、君の親友君たちの橋渡しをしてた君がカササギってわけ。我ながらピッタリな呼び方をしたと思うよ」

「そんな大層なもんじゃないよ。それに、君だってそれに気づいていたなら二人がくっつくように色々してたんじゃないの?」

「うん、本当に大変だったよ。好きだけど告白するのが恥ずかしいって言うしさ」

「あはは、なるほどね。それで、どうしてここに? さっきまで他の子と話してたでしょ?」



 僕の問いかけに対してその子はベンチに座ってから僕に顔を近づけてきた。



「え……」

「同じカササギ同士一緒にいようかなって。それとも、君が私の事を織姫にしてくれる?」



 その子の目は星のような輝きを放っており、僕はその言葉に頷いた後、しばらくその子と手を繋ぎながら一緒に星空を眺めた。

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七夕チャレンジ 九戸政景 @2012712

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