第3話 スターになる

 スターになりたい。いつもそう公言していたクラスメートがいた。ソイツはクラスの中のムードメーカーで、そういう立ち位置にもいたからかクラス内のみならず他のクラスでも人気者だった。


 休み時間になればいつも誰かがそばにいて話をしていたし、授業中でも指名されて立った後に少し芝居がかった言い回しで答えてはクラス中を沸かせ、その様子に先生達も呆れながらも何だかんだで笑っていた。


 そんな奴だったからこそクラスメートの誰もがソイツは将来何らかの形でスターになるだろうと確信していたし、俺もその一人ではあった。ある時ソイツが不慮の事故で亡くなるまでは。



「アイツ、本当に良い奴だったよな」

「……ああ」



 ソイツが亡くなったと知った日の帰り道、俺はクラスのダチと一緒に帰りながらその話をしていた。やはりクラス内での存在感が強かったからか訃報にはクラス内がざわめき、女子だけじゃなく男子達も嘆き悲しんだ。言うなれば、教室が一気にお通夜のようになっていたのだ。



「スターになりたい、か……事故で亡くなってなかったら、アイツは本当にスターになってたかもしれないよな」

「……そうだな。でも、アイツはスター失格だよ」

「え?」



 ダチは驚きながら俺を見る。



「だってさ、最期にとんでもなく笑えない事をしてきたんだぜ? 最終的にスターにはなったかもしれないけど、誰もそんな形でのスターなんて望んでなかった。それなのに、アイツは……」

「……そういう事か」

「ああ」



 答えながら俺は少し星が見え始めた空を見上げる。どの星がアイツなのかはわからないけど、きっと今でもみんなを楽しませるために色々趣向を凝らしているのだろう。



「……バカ野郎。どうせなるなら、みんなを楽しませるスターになれよ。みんなを悲しませて家族を不幸にさせるスターになってどうするんだよ……」



 俺の目から涙が溢れる中、夜空の星の一つが瞬いたような気がした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る