第2話 ほしを掴む

「星を掴むにはどうしたら良いかな?」



 小学生の頃、クラスメートの女子からそんな事を聞かれた。その時は俺とそいつだけが残って作業をしている時だったため、今より多感だった俺は女子と二人きりという状況に内心ドキドキしていた。


 そんな中でのその質問だったため、少しポカンとしてしまったが、自分に関しての質問じゃない事にガッカリしながら俺は答えた。



「星に近いところに行けば掴めるんじゃないのか?」

「星に近いところって空?」

「そう。でも、空に行くってなんか演技でもない言い方だし、あまり言わない方が良いかもな」

「でも、飛行機やヘリコプターに乗る場合も空に行くじゃない?」

「それは……まあそうだけど……」



 ソイツの言葉に対して少々呆れながら答えていたその時、ソイツは何かを思い付いたような顔をすると、急に俺に顔を近づけてきた。



「な、なんだよ……」



 少し漂ってくる甘い香りと可愛らしい顔、そして女子と顔を近づけあっているという状況に俺の心臓がバクバクと鳴っていると、ソイツは突然俺の鼻先にキスをした。



「なっ……!?」



 突然の出来事に心臓が更に脈動し、破裂するんじゃないかと思っていた時、ソイツはにこりと笑った。



「今のでほしなら掴めたかな?」

「え?」

「だって、君の名字って保志なんでしょ? それなら今のキスでバッチリ君の心は掴めたかなって」

「お、お前なぁ……!」



 俺が怒ると、ソイツはクスクス笑いながら顔を静かに離した。



「ごめんごめん。でも、好きでもない人にはこんな事はしないからね」

「え?」

「ふふっ。それじゃあちょっとトイレ休憩してくるね」



 そう言い残すと、ソイツは教室を出ていき、教室には俺だけが残された。



「……ほしならバッチリ掴まれたっての、ったく……」



 燃えてるかのように熱い顔と激しく脈打つ心臓がその証拠であり、そんな俺の様子を少しずつ暗くなり始めた空に浮かぶ星達だけが見ていた。

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