疾風迅雷の颯は女子高生のはず!

健野屋文乃(たけのやふみの)

【起】 綺麗な顔立ちの少女。

新学期が始まったばかりの頃。


高校の混雑した満員の食堂で、

「ジロジロみないで」

と、斜め横に座る、綺麗な顔立ちの少女が俺に言った。


綺麗な顔立ちの少女。

その姿を見れば、誰でもそんな印象を持つだろう。


しかし、俺には大きな長槍を振り回しながら、凶悪に薄ら笑う若武者に見えた。

そう、この少女の前世の姿だ。


遠い昔の戦場で、俺の騎馬隊は、こいつの裏切りで全滅、俺は捕獲され処刑された。

俺は刑場で、怒りと絶望の中、絶命した。

俺は、この強い恨み抱いたまま、生まれ変わった。


その強い恨み故に、この前世の記憶を維持できたと言っていい。

そして、俺はこの裏切り者に会うために、この世に生を受けたと言っても過言ではない。


そう言った経緯故、尋常ではない表情をしていたであろう俺の顔を見て、綺麗な顔立ちの少女の隣のさち薄そうな少女は言った。


「めっちゃ怒ってるよ、この新入生。

相当カツカレー食べたかったんじゃない、愛衣めいのカツカレーが最後だったし」


「えーーーそんな事でーカツカレーが最後だったのは、仕方ないでしょう。

早いもの勝ちだし・・・でも、カツ程度で、この形相?!」


「食べ物の恨みは怖いのよ」


「はあ~いいよ、一切れあげる。入学祝いって事で・・・・はい、入学おめでとう」


愛衣めいと言う綺麗な顔立ちの少女は言うと、俺のカツの無いカレー皿にとんかつを一切れ載せ、

「もうカツくらいで、怖い顔しちゃダメだよ」

と言って微笑んだ。


前世で裏切られた恨みが在るが・・・・しかし、しかし、しかーし!

その微笑みの可愛らしいさと言ったら、もーーーーー俺はつい微笑んでしまった。



すると愛衣めいは、ふっと笑い言った。

「変わらず・・・甘ったる、それは死んでも治らなかったらしい」


その言葉が、俺の心にズーンと沈んだ。

さらに愛衣めいは言葉を続けた


「しかし、乱世の習わしとは言え、その愛すべき甘ったるさを、守れなかったのは、私の弱さ。その件に関しては許して欲しい」


愛衣めいの隣のさちが薄い子は、

「何言ってるの?」って顔をしていた。



つづく

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