第17話 広大な自然と植物畑

 私とシュナさんは一生懸命山を登りました。

 途中現れるモンスター達をシュナさんは難なく薙ぎ払い、私を守ってくれていました。


 その表情に影はなく、本来の本分を遺憾なく発揮していました。

 赤い瞳がモンスター達の命を刈り取っていきます。


 本当はこんな姿を見たくはありませんでした。

 ですがシュナさんなりに私のことを思ってのことだと思います。


「この先ですね」


 スパッ!


 短剣で勇ましく草木を切り分けます。

 私を先導して突き進む頼りになる背中に安心して私も歩いていました。


 すると少し視界が開けます。

 何かあるのでしょうか? シュナさんは動きを止めます。


「シュナさん、何かありましたか?」

「アクアス様。見てください」


 シュナさんは少し隣に避けます。

 私にも先の景色を見せてくれました。

 すると私は、その景色に私は圧倒されます。


「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」


 私とシュナさんは声を上げました。

 草木を切り分け、視界に捉えた景色。

 険しい山を登ってきた私達にとって、これ以上ない至極の世界でした。


「凄いですね、シュナさん」

「はい、アクアス様」


 まさかここまでの景色が広がっていたとは。

 これはフィールドワークに励めます。


 龍舞山の一角。

 そこに広がるのは自然豊かな景色。

 澄み渡る風を受け、花々が揺らめき、綺麗な雪解け水の流れる川がありました。


 平地になっていて、若葉が生い茂ります。

 まさしく桃源郷。

 私にはそう映ります。


「凄いです。本当に凄いです。これだけ植物が群生していれば、きっと見つかるはずですね」

「そうですね、アクアス様」

「それでは手伝っていただけますか?」

「はい、お任せください」


 私はシュナさんにもお願いして、採取を手伝って貰います。

 どんな植物があるか分からないので、しっかりと手袋をした状態で安全に努めます。


 早速植物採取を始めようとした私ですが、何故かシュナさんに止められてしまいます。


「待ってください」


 ふと手を動かすのを止め、シュナさんは顔を向けます。


「如何したんですか、シュナさん?」


 シュナさんは周囲を警戒しています。

 眼光は鋭くカッコいいです。


「アクアス様。この辺りは危険です。先程までのようにモンスターがいつ飛び出してくるかも分からないので、私からあまり離れないでいただけますか?」

「は、はい?」

「離れないでいただけますか?」

「わ、分かりました。善処致します」


 なぜか私が怒られてしまいます。

 しかしシュナさんはそれほど私の身を案じてくれているので感謝しました。

 なのでシュナさんからあまり離れないように注意しながら、植物採取を始めます。


「凄い。コレは泥吸い臭。こっちは臭い消しに使える、香苗草。それに天ぷらにすると美味しいと言われている、季節外れのタラタラの芽。こっちは普通のヨモギのドクダミ! 凄い、凄く良いです!」


 私の手は次から次へと植物に伸びて行きます。

 どれもこれも屋敷に標本が無いものです。

 私の興奮は止まりませんでした。




 それから三十分近く、植物採取をしていました。

 シュナさんも頑張ってくれていて、持ってきていた袋の中身はたくさんの根っこの付いたままの植物達で埋まります。


「頑張りましたね」

「はい」


 お互い良い汗を掻きました。

 と思ったら、シュナさんは汗の一つも掻いておらず、ましてや疲れたなどいないように見えます。無理をしていないと良いのですが、そんな風には見えません。


(シュナさん、ありがとうござきました)


 それから少し休憩にします。

 しかし思ったものはなかなか見つかりません。

 とりあえず片っ端から集めに集めた植物達を確認します。


「どれも今回は必要のないものばかりですね。はぁー」


 深く溜息を吐きました。

 ここならきっとと思っていた旨、精神的な疲労も大きく出ます。


 顔を下に向けていた私。

 しかし頑張らないとと思い、再び顔を上げました。

 すると私は口を開けました。


「ん、アレは?」

「アクアス様?」


 私の視線があるものを見つけます。

 捉えたまま、私の足は動き出していました。

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