半透明な足音

倉井さとり

半透明な足音

言い訳のようにさしだす出涸でがらしがまぶしくひかる醜い世界


おどけてもふざけてみても空回からまわる身体のなかの渇いた空気


人を見て「悲しみぞん」と言っただけカップの底が汚れていくの


遅くても光りかがやく命だと、だれもがみんな知っているのに


値踏みする孤独の傷は癒せない 雨と高架こうかに切り取られても


さみしさをワンクリックで消去する、そんな魔法にだまされながら


でまかせに心あずけてきずりに好きになっても普通だからさ


ごみ箱をあさる病みねこうみを吐き薄ら寒さにニャーと鳴くだけ


わかってた 一晩中の愛なんて時間に喰われた悲しみだって


虚しさをづるに吹き込んだって渇いた吐息腐らせるだけ


涙ごしの水溜りは過食色かしょくいろ 吐き出せないよ食欲だけが


てるてる坊主がぽつり言い残す「みんなまとめて雨にぬれちゃえ」


「空耳はあたまのなかのくちびる」と空耳が言う何度も何度も


かえりみて自己言及に溺れては暗い水底みなぞこに腕をのばす


脆弱ぜいじゃくな意思をいさめるかのように幼い影がイヤイヤをする


匿名とくめいの現実にいるというのは、だれかの楽譜がくふと旅をすること


氷色こおりいろが許してくれる治るから凍えた両手もためらい傷も


日溜りをけたいような気持ちだけ、ただそれだけで悲しくなれた


大丈夫、悩んだのなら大空が白く青く想いを明かす


旋律せんりつは夢と鼻腔びくうって、海のてへと駆け抜けていく

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半透明な足音 倉井さとり @sasugari

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