第11話
「んっ……!!」
俺の腕の中にいる黒川さんの甘過ぎる声が脳内中に響いた。
その声に触発されるように、唇や手が……自分の欲望のままに動く。
いやいやいやいやいやいやいや。
何やってんだよ、俺。
これは――。
「ちゅっ、はぁ……はむ……」
キスに夢中になっている黒川さんの体が……腕の中でモゾモゾ動くたびに、おっぱいがむにむにと動く。
エロいエロいエロいエロいエロいエロい。
あと……俺なんかにそんな蕩けた瞳を向けないで欲しい。
マズいマズいマズいマズいマズいマズい。
どうして――、どうしてこうなった?
どこで、対応を間違えた?
ただ、俺はブリザードが吹きやめばよかっただけなのに。
◇
と、とりあえずキスを止めて、状況を整理しよう。
うん……。
でも、どうやら黒川さんに火が付いているようで、俺からは止めれそうに、ない……。
頭が上手く回らないが、そうも言ってはいられないので状況整理を無理矢理始める。
まず、ぐすん……。
花さんに置き去りにされただろう。
その後は――コアラ女が如何に俺をこき使っているかを話した。
黒川さんからは「恋愛感情はあるの?」と質問をされたけど「そういう目で見たことないな」と答えたら、やや機嫌が直った黒川さんは、今度は少しずつだが自分の悩み事を話してくれた。
その悩み事の内容は、俺が思っていたよりも酷い内容で。
黒川さんがすげー気の毒になった。
だから、黒川さんが気持ちを吐き出せるように、最後まで黙って話を聞くようにした。
そしたら「天童君と別れたい。どうすればいい?」と相談されたので「天童みたいなプライドの高いタイプは、他に好きなヤツが出来たから別れて欲しいと言うのが一番効果的だと思う。理想を言えば、好きなヤツと付き合うまで出来ればいいけどな」
あと天童よりイケメンなら、尚良しだ。
それなら周囲の人間達からの同調圧力も回避出来るはすだ。
マウントを取って他者を従えようとする人間達には、悲しいけど逆マウントを取るのが手っ取り早い。
それが事実、というか真理と言いますか。
でも、まー。
俺の好きではないやり方ではあるけどな。
しかし、天童以上のイケメンか……。
この案件は、そうだな……。
五郎ちゃんに頼むか?
野球部の大会前で忙しいって言ってたけど、俺が五郎ちゃんに貸してる数々の貸しを帳消しにして、駅前の中華料理店「福福」の大盛りワンタン麺を十杯くらい奢れば……。
これなら、一か月は黒川さんの好きな人兼彼氏役を引き受けてくれるかもしれない。
さすがの天童も五郎ちゃん相手だと霞むしな。
それに五郎ちゃんと黒川さんなら美男美女でお似合いだ。
我ながら、名案じゃね?
そう思って……提案したんだよな……。
なのに。
「彼氏役をして貰えるなら……柏田君はダメかな?あと、もし良かったら役じゃなくて……」
「…………」
「あたしと……共犯になってくれると嬉しい……」
それからは……よく覚えていない。
ただ、ただ甘いだけの空気が流れて、スローモーションのように黒川さんの潤んだ瞳が閉じられて、現在に至っていた。
◇
お読みいただきありがとうございます。
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