完璧超人とは

畑中曾太郎

第1話 完璧超人とは

俺は市橋雄哉。自分で言うのも何だが、完璧超人に限りなく近いスキルを持っている。名門、白楊高校に通う2年で学業は常にトップで顔もスタイルも秀逸だ。家も超大金持ちで誰に対しても分け隔てなく接している。俺は完璧超人すぎる故、日々の生活に退屈さすら感じていた。俺にとって授業は簡単なゲームなのだ。そのあまりにも簡単なゲームにあくびが出た事もあるくらいだ。体育の時も超人過ぎる運動神経を持つため、教師に人間か疑われた事もある。俺の親は超有名なコンピュータ会社の社長で、総資産は〇兆円になる。その為欲しい物は何でも手に入るが努力して手に入れた達成感が得られない。そんな完璧超人な俺が面白く思わない生徒がいる。そいつの名は斉木洋と言い完璧超人の俺より上の存在で非常に邪魔な存在である。俺は小学生の頃から斉木を倒すと何度も決意していたが1度も勝てた試しがない。俺は必死で斉木の弱点を探ろうとしたが本の僅かな欠点すら見つけられなかった。斉木洋は、何から何まで完璧で本当に非の打ち所がない人間だった。ある夜、俺が自分の部屋でボーッと天井を眺めていると神様らしき姿をしたシルエットに突然お主は何か悩みがあるのかと聞かれた感じがした。俺はボーッとしていたせいかその現象を特に驚くこともなく斉木に勝ちたいと呟いた。すると、シルエットは不気味に笑いながら願いを叶えて信ぜようとだけ言った。俺は、斉木に勝てたらいいなと少しの期待を何となく持ちながらいつの間にか眠りについた。数日後、俺は朝のHRで担任から斉木が交通事故で両足を失った事を聞いた。それを知った俺は学年トップの座を目指す事が出来ると最高に喜んだ。俺は、テンションが上がり学業やスポーツに燃えて斉木洋の成績までも上回るようになり容姿にも気合いを入れるようにもなった。それを見た親父が息子がこれだけ頑張ってるのだから俺も頑張らなくてはと思い親父の全ての仕事の成績も上がり、総合的に斉木を大きく上回ったのである。その様な状態が何年か続いた。俺は最近物足りなさをを感じていた。それは、全ての項目において完璧超人になってしまったのでそれより上を目指せなくなり人より幸福感を感じられないという事だった。それどころか、自らのプライドの高さも相まって不幸な事が以前と比べて増えてきた感じすらある。それは超完璧境遇を何年も続けていたせいでそれが普通の生活となってしまった事から、超完璧境遇より下だと不幸を感じてしまう様になってしまったのである。ある日の仕事の帰りに俺は向こうの方から斉木が歩いているのを見かけた。斉木は歩くスピードは義足のせいで人よりやや遅かったがどことなく幸せそうな顔をしていた。彼は両足は失ったがそれと引き替えにたくさんの幸せを頂いたと言っていた。両足を失った原因は、自分には全く落ち度がなく相手のドライバーも十分気を付けていたが致し方なく起きてしまった事故だったからである。だからたまたま運が悪かったと受け入れられるのでそんなに不幸だとは感じなかった。それどころかその分幸せを感じる伸び代が出来たと言っていた。これはどういう事かと言うと人生イージーモードだった彼のスペックが下がった事により本気を出せば大抵の事が出来るレベルまで下がったからだ。つまり両足を失う前までの彼は何もしなくても人に負けたことが1度もなかったので、負けた悔しさや勝つことの素晴らしさを知らなかったのである。しかし両足を失った事により彼は、それらの素晴らしさを知る事が出来る事により物事に本気で取り組む事素晴らしさを知れたのだ。物事に本気で取り組むと言う事は同時に勝てたときの達成感だけでなくそれと同時に楽しさや嬉しさを感じるのである。これにより、斉木は本気で頑張る事の楽しさを知り両足を失う前よりも、人生が充実して楽しくすごしている。そんな斉木を見て俺はスペック的には斉木には勝ったが幸福度的に言ったら完全に負けたとつくづく感じた。

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完璧超人とは 畑中曾太郎 @dadon1955

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