第2話 生徒会長ショウコ②

 「う、ッグ それで…これからどうするのよ?」ようやく泣き止んだ、ミズズが私に訪ねてきた。


 「そうね〜」

相槌を打ちながら私は、掃除用具入れから、ゴミ袋を取り出す。

「これに、キサラギさんを入れて、移動させましょ? 誰かが来る確率が低いとはいえ、このまま教室は、危険すぎるでしょ?」

「え! でも何処に?」

「取り敢えず、音楽室とか? 教室から近いし、エアコンも付いてるわ」


 そう提案する私だが、それぞれ文句を言ってきた。

「そんな! ショウコちゃん大っきいし、無理だよ!」

「サイトウさん。貴方まさか、隠し場所って音楽室じゃないでしょうね?」

「移動させるのは良いとして、そもそも隠し場所って何処なのさ?」


 はぁ~。面倒くさい。

「音楽室には、一次的に隠すだけよ。本命の隠し場所は、学校の外なの。今から移動させるには目立ちすぎるわ」

「「「…学校の外?…」」」

「さぁ。理解したなら移動させるわよ? 皆で運べば、早く楽に済むわ」


 私は、有無を言わせず、3人にゴミ袋を渡すと、渋々3人はキサラギさんをゴミ袋で包みだした。


 「私先に鍵を手に入れて、音楽室で待っているから」

それだけ告げると、私は職員室に音楽室の鍵を取りに行った。職員室も窓の鍵が壊れていて、中に入り放題なのだ。

にしてもこの学校、鍵が壊れていても直ぐに直さないなんて、無用心よね? 公立高校だから仕方ないかしら。


 さっさと鍵を手に入れた私は、音楽室に入ると、エアコンの電源を入れた。

「あぁ、涼しい」


 まったく。この蒸し暑い日に、大変な事に巻き込まれたものだ。3人が来るまで、少し休ませてもらいましょ。


 音楽室で私が、快適に涼んでいると、扉が開き3人がキサラギさんを持って、やって来た。


 「あら? お疲れ様」

「「「ゼーハー、ゼーハー」」」

玉の様な汗を流しつつ、キサラギさんを床に置いて、息をする3人。細身とはいえキサラギさんは確か、身長が170センチ近く合ったはずだ。どうやら相当重かったようね。


 「…アカネ…」

「貴方ね。鍵を開けたなら手伝いに来なさいよ!」

「いくらアタシが、陸上部でも、流石にしんどいぞ?」

愚痴り出す3人だが、今はもう6時過ぎだ。


 「ごめんなさい。後で運ぶ時は手伝うわ。それよりも貴方達は、帰りなさい」

「え!」

「はぁ? 死体はどうするのよ?」

「そうさ! 誰かが見張らないと」

「大丈夫。私が残るから。それよりも家に帰っとかないと、万が一の時、不審がられるわよ?」

「「「・・・」」」

「そうね。また、深夜3時集合で、どうかしら?」


 「わかったわ。でもサイトウさん。貴方は帰らなくて良いの?」

ミクとレイは納得したみたいだが、ミスズが余計な事を聞いてきた。


 「ミスズ、大丈夫よ。私の両親は亡くなっていて、今1人だから」

「「え?!」」

「貴方は知っているはずでしょ? ミク?」

「うん。アカネは昔、交通事故に遭っていてその時にアカネのパパとママは…」


 あら! 以外ね。試しに聞いてみたけど、覚えていたのね。流石は"元"幼なじみ。


 「そういう事だから。早く貴方達は帰るのね?」

「わかったわ」


 コチラを気にしつつ、ようやく帰って行った3人。残った私は、キサラギさんを音楽室の奥に引きずって移動させて、音楽室の電気を消した。


 「まさか、この時間から誰かが、来ることも無いでしょう。私も少し寝ようかしら」

スマホのアラームを3時に設定した私は、そのまま床で横になった。

「あぁ。涼しい。快適ね♪」


 ・・・


 「アカネ! アカネ!」

揺り起こされた私が目を覚ますと、そこには私服姿で、呆れた顔をした、3人がいた。


 「あら。おはよう」

「サイトウさん。貴方ね」

「お前。死体の側で良く眠れるな?」

「おかしいかしら? 通夜とかでも皆、仏様の側にいるし、死体が襲って来るなんて聞いた事ないわ」

「「「・・・」」」


 同意は得れないみたいね。


 「もう3時なのよね? どうかしら? 人は歩いてた?」

「ぜんぜん」

「時間も時間ですし、この辺りは、住宅街ですからね」

「どうする? 移動させるか?」


 良かったわ。人が少なくなる読みが、当たったみたいね。


 「そうね。移動させましょう! 3人で運んで、念の為1人は見張り。もちろん交代でね?」

「わかった!」

「えぇ、良いわよ」

「よし! ならこれを使おう!」


 そう言ってレイが、抱えていた大きな毛布を床に広げた。

「これは?」

「見ての通り毛布よ。これで包もうと思ってね。流石にゴミ袋だけじゃ、心許ないだろ?」

「なるほど。使わせて貰うわ。レイ」

「おう!」


 こうして私達は、キサラギさんを毛布で包むと、学校を出発した。


 「サイトウさん。貴方の案内だ向かっているけど、そろそろ何処に隠すのか、教えてくれないかしら?」

「あら? ミスズ、言ってなかったかしら? 私の家よ」

「「「?!」」」

「さっきも言ったけど、私今一人暮らしなの。それ以外の理由は、ついたらわかるわ」

「アカネ。アカネの家って確か…」 

「内緒よ? ミク? 見てからのお楽しみね♪」


 順番を変わりつつ、私達は驚くほど順調に、私の家に向かって行った。

途中一度だけ、酔っ払いとすれ違い、皆で物陰に隠れて、少しだけ肝が冷えた場面もあったが…


 「ようこそ! サイトウ医院へ!」

少しおどけながら、皆に私の家を紹介した。

「まだ…このままだったんだ」

「ここは、病院?」

「そうみたいね」


 無事に私の家。【サイトウ医院】に辿り着けたわ。そう私の家は父が医者で、開業医だったのだ。しかも今どき珍しい、自宅と医院が併設しているタイプのね。


 「さぁ。ぼ~っとしてないで、入って頂戴」3人を医院に、招き入れる私。

3人とキサラギさんを連れて、医院の奥に進むと、そこには巨大な冷蔵庫兼冷凍庫があった。


 「これって?」

「冷蔵庫? かしら?」

「まさか、コレに入れるつもりか?」

「そうよ。本来なら輸血パックやワクチンを管理する冷蔵庫なの。当然今は使ってないし、大き過ぎて移動もさせれないから、このままなのよね」


 父は元々外科医でもあり、なおかつ心配症だった。本来なら町医者の医院に、こんな巨大な冷蔵庫は要らないだろう。


 「ね? 最適な場所でしょ? 私以外住んでいないし、更に冷凍できれば、匂いとかでバレる心配も無いわ」

「た、確かに」

「土に埋めたりするよりは、安全ね」

「誰も、こんな冷蔵庫持っていないしな」


 こうして私達は、冷蔵庫の仕切りを全て取り外して、キサラギさんを中に入れた。


 「お休み。キサラギさん」


 そう呟いて、私は扉を閉めるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

4人の少女と誰かが、獣 どっちつかず @o1g9u3

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ