第16話 鹿から蛇、結局ウサギ
翌日、空を覆う雲から時折太陽が姿を見せる曇り時々晴れ模様の天気。
早朝にルロレーを出た私たちは街道を外れて森の中を進んで行く。順番は1番前がココ、真ん中にケイシー、そして私だ。この順番は経験から決まった非常に合理的なモノである。
「ケイシーって凄いねー!うちが交渉するよりもずっと安く値切るんだもん。良ければコツとか教えて欲しーんだけど、どう?」
「わ、わたしで良ければ…!」
「それ、私も交ぜて欲しいな」
「わわっ!ふへ~、も、もちろん!」
雑談をしながら和やかに歩いているが、前日まで雨が降っていた影響で足元はぬかるんでいて危険な状態になっている。
そしてケイシーが一歩踏み出した瞬間、ズルッと滑った。
「そ、それじゃ、休憩の時にでも…キャ!?」
後ろに倒れてきたケイシーを私が受け止めて、ココがケイシーの手を引いて立たせる。
「ケイシー!大丈夫?怪我はない?」
「だ、大丈夫だよ。ビックリしたー」
ケイシーはこの前にも何度もぬかるんだ地面で滑って転んでいる。なのでケイシーが怪我をしないように私とココの間で歩く事になっていた。
「…今ので何回目かなー?」
「さぁ、10回を超えているのは確かだけど…忘れちゃったな」
ココとそんな会話をしながらケイシーに怪我がないのか確認をして再び歩き出した。
「足下に気を付けてねー!」
「はー…い!?」
だが、ココの注意も虚しくケイシーは返事と同時に滑る。
正直、この状況を繰り返しているケイシーと森の中に入るのは不安だが、街道では魔物があまり出てこないし薬草の採取がしたかったのもある。私とココが気を付けてケイシーを見守りつつ、進むしかない。
「イテテ…。あっ!このハーブ、肉料理に使うといいんだよ!」
「へー!そーなんだ!こっちは?」
「こっちはね…」
転んだ拍子に見つけたハーブから採取が始まった。薬草の近くに違うハーブが、山菜の側に薬草が、と採取しながらゆっくりと進んで行く。
「…エル、ケイシー!ちょっと、ちょっと来て!」
あれもこれもと採取をしていた私とケイシーに何処かに行っていたココが興奮した様子で手招きしていた。
『足音をたてないでね!』と身を屈めて進むココの言うとおりにして着いて行く。
「…ほら、見てよ!あそこ!ラッキーだよねー!!」
目的地に着いたココと静かに茂みから見る先にいたのは、絶賛食事中の緑色と茶色のまだら模様が特徴的な鹿の魔物だった。
「カ、カモフラージュディア!警戒心が高い上に自然に紛れる毛色をしていて中々見つけられないんだよね!凄いなぁ~!」
「うん、凄いよ!数頭の群れなんて、ココよく見つけられたね」
警戒心が高い、で有名なカモフラージュディアは何か違和感があると直ぐにその場から離れてしまう。
興奮のままに凄い凄いと言っている私たちを見て、ココは誇らしげな顔をしたまま弾んだ声で私とケイシーに提案する。
「今日の晩ご飯は鹿鍋にしよ!」
その言葉に1も2もなく頷き、作戦を考える。
「カ、カモフラージュディアは警戒心が高いから、1回で仕留める方がいいよね」
「挟み撃ちとかはどう?誰かが回り込んで、待ち構えている人が倒す。みたいな」
「それじゃーうちが回り込んで、エルとケイシーが倒すのがいーんじゃない?」
「そ、そうだね。それならあそこに群れから少し離れたとこに1体いるから、その1体を生い立てるのがいいと思うよ」
決まった作戦を元に全員準備をする。ココが回り込んでいる間に、私とケイシーも音を発てないように気を付けながら狙いやすい場所に移動して、攻撃の準備をする。
「~~~~♪」
モシャモシャと草を食べているカモフラージュディアを見ながら、何時でも魔法が放てるようにして待つ。
───ガサッ!ガサガサ!!
「~~~♪…~!?」
ココが発てた音に反応したカモフラージュディアが慌てて走り出した。群れとの間から音を発てた事で群れの方向に行けなくなったカモフラージュディアは私とケイシーが待ち構える場所に向かって走って来る。
「うそ!ほぼ直角に曲がった!」
後もう少しのところで方向転換した事に思わず声が出た。ぐんぐん進んで森の中に消え去りそうなカモフラージュディアを見て、最初に発てた音で逃げてしまいもう見えない群れの方向を見て、走り出す。
「絶対に追い付こうね!」
「うん!」
ココも同じ考えだったようで、共にカモフラージュディアを追いかけた。
「ま、待ってよぅ…あ、ふぎゃ!」
そんな2人を見たケイシーは追いかけようと走り出したが偶然足下にあったぬかるみに足をとられて転んだ。
「ハアハア、どっちに行ったんだろう…?」
「ハァー!見失ったねー」
一旦足を止めて森を見渡すが、カモフラージュディアの姿は見えない。途中までは追えていたのだが、カモフラージュディアの名前の通り景色に紛れて追いかけにくく、見失ってしまった。
「おりゃあ!…あっ!エル、ココ!どうだった?」
立ち止まっていると、ケイシーが追い付いたが首を振ってダメだった事を報せる。
「ごめんね。この辺りになると薄暗くなって見失っちゃったんだ」
「そっか、で、でも良かった!2人に怪我がなくって!」
「ケイシー…!」
ケイシーも楽しみにしていただろうに、私とココを責める事なく優しい言葉を掛けてくれた事に心が暖まる。けど…
「…私はケイシーが怪我してないか心配だけどね」
「え?」
「確かにー!全身土まみれだし、頭に草どころか枝が引っ掛かってるし、心配だね!」
「ええ!?…ああ!本当だ、なんでこんなに汚れてるの…」
微妙に気が抜けたが、ケイシーらしいと思う。カモフラージュディアは諦めて、全員走って疲れたのとケイシーの服を早くキレイにした方がいい、と近くに休めそうな場所がないか探して移動していると、
「~!!」
すぐ近くからさっき聞いたばかりの鳴き声がした事に立ち止まり、辺りを見回す。
「…あっちから音がした。行ってみよう」
素早く音のした場所を特定したココの先導で、音を発てないように進む。
「カモフラージュディアと何かが戦ってる?」
「も、戻った方がいいんじゃ…」
近付くにつれて私も異変を感じた。カモフラージュディアの弱った鳴き声と、ズルズルと地面をナニかが引き摺っているような音、感じる魔力は今まで見た魔物より高い。
木の陰からそーっと覗いた先にいたのは息絶えたカモフラージュディアと、その死体を喰らっている黄色とオレンジ色の鱗を身に纏った蛇だった。
「あ、あれってボラシティースネークだよ!は、早く離れないと!」
ケイシーは頭を引っ込めると小声でボラシティースネークについての説明をする。
「ボラシティースネークはね、食べだしたら満腹になるまで食べ続けるんだよ!早く、は、離れた方が…」
「でもケイシー、もう気がつかれちゃったみたい」
「え?」
指を差した先にケイシーはゆっくりと目を向ける。
「シャアアアア!!」
そして私たちのいる方を見て威嚇をするボラシティースネークを見て顔が真っ青になった。
「ど、どうしよう!エル!は、ははっ、はやく逃げなきゃ…」
「でもあの蛇は逃がす気なんて無いみたいだしー。何とかするしかないよ!」
確かに、明らかに私たちを認識しているボラシティースネークはメインディッシュを食べる気満々だ。
「うん。でも…倒せるかな?」
「わ、わたしたちじゃ、荷が重いよぅ!」
「だいじょーぶ!」
ケイシーの機転で倒せた剣持ちのゴブリンよりも強い相手に勝てるのか、そう不安に駆られた私とケイシーにココは立ち上がると自信満々に宣言した。
「おねーちゃ…じゃない、うちに任せて!!」
ココはそう言って威嚇をするボラシティースネークの前に行き、構える。
「うちがいる限り、ケイシーもエルにだって手を出させないよ!うちは強いから!」
「シャアアアア!!」
自分の背丈よりも大きく、鋭い牙を持つボラシティースネークと籠手を装備した犬獣人の女性との戦いが始まった。
上から見下ろすボラシティースネークが尾でココを薙ぎ払う。
それを避けたココは接近して一発、ボラシティースネークを殴った。
「シャアアアア!!」
「!!チッ、あまり効いてない!」
僅かに怯んだが、直ぐに復活して再び尾での薙ぎ払いを仕掛ける。2度目の攻撃にココは当然避けるが、
「なっ!?攻撃を避けるのを読んで!?」
ボラシティースネークはまだ空中にいるココに向かって鋭い牙で噛み砕こうと大口を開いて迫る。
眼前に映る獲物を目の前にした魔物のヨダレと光るキバ。
だが、獲物に喰い付くのは横槍が入った事によってまだお預けとなった。
「【ウォータージェット】!」
「シャア!?」
私が放った水魔法はボラシティースネークの顔の下、人間なら首か胸辺りにヒットして体勢を崩した。
「シャァァアア!!!ジャァァ!?」
邪魔をされて怒り心頭のボラシティースネークは私を視界に納めてギラギラとした殺意を向けたが、意識の外から飛んできた矢が尾に刺さりそれを飛ばした者に意識を反らした。
「エル、とココに、て、手出しさせないんだから!」
ボラシティースネークに睨まれたケイシーは怯えながらも、強い瞳で見つめ返す。ボラシティースネークはケイシーを警戒して距離を取りつつも、何度も威嚇をしている。
自分に矢を射したケイシーに夢中のボラシティースネークは私とココの存在なんて忘れてしまったようだった。
「エル、ケイシー、ありがとー!助かったよ!」
ココは駆け出した勢いのままに跳び上がり、鋭い蹴りを与える。
「シャァァ!」
蹴りの痛みによってココにターゲットを変更したボラシティースネークはココが着地する直前に尾での薙ぎ払いを仕掛ける。
「【ウォータージェット】…どういたしまして!」
「とおりゃ、りゃ!無事で良かったよ~!」
だが、そんな事は私とケイシーがさせない。魔法と矢が当たり、薙ぎ払いが出来なかったボラシティースネークは思い通りにいかない怒りに満ちていた。
「ジャアア…!」
私とケイシーとココ。3人を視界に納め、見下ろし自分の優位性を誇示する。
「ジャァァーー!!」
そして次に攻撃の標的にしたのは、
「こ、ここっこっちに来る~~!!みぎゃ!」
ケイシーだった。
慌てて距離を取ろうとするがぬかるみに滑って転んでしまう。ココが走り出したが間に合う距離ではない。
「シャァァ!!」
「ヒィ!!ど、どうしよ…」
追い付いたボラシティースネークは余裕の態度でケイシーを見下ろし、逃げられないよう器用にケイシーの周囲を身体で囲むと喰らおうと大口を開けた。
「エルっ!」
涙目のケイシーが私を見て、助けを求めるように名前を呼んだ。
「ッ!!【ウォーターアロー】!!!」
咄嗟に放った魔法の形は矢だった。
それは一直線に飛んで行き無防備なボラシティースネークの背中に深々と突き刺さった。
「ジャア、アアアア!!」
あと数メートルで食い物にありつけた貪食の蛇は激痛にのたうち回る。
「ジャァァ…シャァァアア!!」
痛みに苦しみながらも私を視界に入れた瞬間身体をうねらせ真っ直ぐ迫り、その勢いのままに喰おうとする。
それを集中して見つめ、タイミングを見計らう。
「っ!今!!」
大きく横に跳んだ私の背後から聞こえた音に冷や汗をかきつつ、少し離れて振り向く。
「シャアァァ…!!」
土埃から現れたのは何もない場所を空噛みしたボラシティースネークだった。
ここまでくるとこのボラシティースネークの性格が何となく掴めてきた。そしてそれは私以外の2人も同じのようで、
「ジャァァアア!!」
もうさっきからずっと怒り心頭状態が続いているボラシティースネークは怒りのままに叫び、再び私に迫る。
「そうだろうと思ったよ!!」
だが、先回りしたココにさっき私が攻撃した傷を殴られた。
「ジャアア!」
「つ、次はわたしっ!とりゃ!」
直ぐ様ココに狙いを変更したボラシティースネークに矢を飛ばしたケイシーは5射目で尾に矢を当てた。
「【ウォーターアロー】」
ケイシーに向かう前に私が魔法を撃つ。そうすればほら、ボラシティースネークは今1番新しい攻撃をした私に狙いを定めた。
このボラシティースネーク、頭に血が上りやすいのか1番新しい攻撃をした者に狙いをつけるクセがあるようなのだ。
なので私が攻撃したらココかケイシーが攻撃を、ココが攻撃したら私かケイシーが攻撃を、ケイシーが攻撃したら…と攻撃を回せばボラシティースネークはコロコロと標的を変え、その所為で攻撃が出来なくなっていた。
そうして、ボラシティースネークに攻撃をし続けてしばらく。そろそろ倒せるだろうといった頃合いでケイシーが攻撃をして、ボラシティースネークの標的になった。
魔法を撃つ準備をする私にココが話しかける。
「2人には助けられたしー、あの蛇にお礼をしたくってねー。うちに譲って欲しいんだけど…いーかな?」
「うん!いいよ。思いっきりお礼しておいで!」
「ありがとー!」
笑顔でお礼を言ったココは駆け出すと、ボラシティースネークに近付いて籠手を打ち鳴らした。
「さて、うちの戦技を浴びて貰おうか!!」
高く、ボラシティースネークの頭よりも上に跳んだココは拳を構え、ボラシティースネークの頭上に落ちていく勢いすら攻撃に乗せて籠手の戦技を放った。
「【ワンファイト】!」
「ジャァァアアア……」
ズドン!と音が轟いた。
脳天に強烈な衝撃を受けたボラシティースネークはグタッと全身から力が抜けていき、地面に横たわった。
数秒、全員が固まってまた動き出さないか固唾を飲んで見守る。
「し、死んだ?」
「たぶん?いちおー確認しよっか」
「うん。石とか枝とか投げてみよう」
「そうだね。き、急に動くかもしれないしね」
動き出さない事に安堵しつつもまだ警戒は解かずに手頃な石や枝を次々に投げつける。
何分強かった魔物なので警戒し過ぎても損はない。数回投げても、投げた石が頭や口に当たってもピクリともしないのを見て、大丈夫そうだと近付いて解体の準備をする。
「…はぁ、倒せて良かった」
「そ、そうだね。か、解体始めようか」
「うん。ボラシティースネークの毒は一部にしかないから今日はディアからスネークに変更かな」
「そうなるかもね。お、大きいから早く作業しないと」
ケイシーがそう言ってナイフを取り出し早速解体を始めた。私も手伝うが大きくて苦戦する。
「ココ、手伝って欲しいんだけどいいかな?」
「いーよ!どこ手伝えばいいの?」
「えーっと、そ、そこを……」
ココにも協力して貰い、そんなこんなで解体を進める。
「ふんふふーん!蛇鍋!楽しみー!…ウッ!?な、何?この臭い!!」
鼻歌を歌って上機嫌だったココだが、血抜きを始めて血液が流れ出た途端に鼻を摘まんでボラシティースネークの死体から離れる。
「臭い?…確かに、何か嗅いだ事の無い変な臭いがする?」
「そ、そうだね。……もしかしたら」
「も、もひかひたりゃ?」
難しい顔をしたケイシーに鼻を摘まんだまま訊くココと次の言葉を待つ。
「…これ、もしかしたらルロレーで話した魔物かも」
「ルロレーっていうと、おかしな強さだったりする変な臭いのする魔物?」
「そう。ボラシティースネーク自体、この周囲にいくらでもいる。けど、このボラシティースネークはおかしかった」
考え事に耽りながら、思考を整理しているかのように時折言葉を詰まらせてケイシーは自分の考えを語る。
「ほら、えっとこの大きさにしては、なんだろ…幼稚?っていうのかな。喰う為ならどこまでも狡猾になるボラシティースネークにしては直情的で視野が狭かった。だからこれはルロレーで聞いたや、つ…」
「どうかした?」
「あ、あわわ。わわわ!と、取り敢えず解体!か、かかっ解体しよう!それで分かるはず!」
突如、冷静沈着だったケイシーはアワアワし始め解体を再開する。
解体したボラシティースネークからは話に聞いた通り、甘ったるくてスッキリして酔ってしまいそうで、でも頭が冴える、そんな臭いがしたので正式に食べるのはヤメになった。
「ええー!なんでって、分かるよ!分かってるけど!鹿鍋でも蛇鍋でもなくなるなら今日は一体何鍋になるのーー!!」
鼻が私たちよりも利くココはその強烈な臭いで理解してはいたものの、食べられない事に落胆して叫んだ。
という訳で一部の使っても大丈夫そうな皮と魔石以外は埋めて森を歩き、日が沈み掛けた頃に森の中にある冒険者等が使う野営地に着いた。
周辺の安全確認と魔物避けの薬を蒔き終えた私たちは、夜ご飯の準備を始めた。
ココが焚き火用の枝を拾いに行き、ケイシーが荷物番兼料理を担当して、私は自分の水筒と鍋を取り出して、水を汲みに行った。
「あ、お帰り!エル!だ、大丈夫だった?」
「お疲れー!鍋持つよー」
戻ってくると既に戻っていたココと食材を切っているケイシーが迎えてくれた。水が入った鍋にケイシーが切り終えた食材を入れて煮込む。徐々に良い香りがしてくるようになった。
「美味しそうな香り」
「だよねー!お腹が鳴ってきちゃった」
今か今かとスープを見ながら、機嫌良さげにペンダントを触っているココは機嫌が戻ったようだ。
ここに着くまでの間に何とか確保出来たウサギを見ても鹿と蛇に想いを寄せていたのに、今は隠しきれないニコニコの笑顔で座っている。
「ココ、良い事でも…」
枝を拾いに行った後に何かあったのか、と訊こうかと思ったがすんでのところで止める。何も直ぐに訊く必要は無い。リュスペに着いた頃に改めて訊けば良い。その頃には今よりも仲が深まっていると思うから。
「ん?なーに?エル?」
「……いや、ケイシーが値切りのコツを教えるって話をしていたでしょ?」
「ああ!!確かにしてたねー!」
「私はココに体術を教えて欲しいなって思うんだけど、どうかな?」
森を歩いていた時に話した事、さっきのボラシティースネークにした【戦技】を思い出して頼んでみる。
私の出来る体術は簡単な受け身くらいだ。ボラシティースネークのように速い魔物にこれから出会った時、立ち止まって魔法を打つ事が出来なくなるかもしれない。そんな場面が来た時の備えになれば、と考えての事だった。
「もっちろん!オッケーだよ!でも…代わりにうちに薬草の事を教えて!簡単なのしか知らないんだよねー」
「うん。いいよ。ふふ、みんなで教えあいっこだね」
「えへへ、何かイ、イイね!!」
「ねー!早速食後から始めよー!誰からにする?」
ケイシーから値切り交渉術を、ココから体術を、私から薬草の知識を、3人でそれぞれの得意な事を教えあう事がなんだかいいな、と感じた。
完成したキノコとウサギ鍋を分けて、食事の前に祈る。
「自然を創りし神に」
「自然を育てし精霊に」
「目の前にある命を頂く事に」
「「「感謝を捧げて食します」」」
これは食べる前の祈りで、私もケイシーもココも特定の信仰対象はいなかったのでそのまま神と精霊と言ったが、信仰している神又は精霊がいたらその名前を当てはめて祈れる為、広い範囲で使われている。
「んー!美味しー」
「美味しい!お肉が柔らかい」
「良かった、う、美味く作れて、えへ」
キノコや木の実を入れて煮込まれたウサギ肉は出汁を吸って美味しかった。運動後の私たちは黙々と食べて鍋の中身は空となった。
そして夜ご飯の後、最初に教えて貰う事に決定したケイシーの値切り交渉術を聞いて眠りについた。
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