雨漏り

神田 真

雨漏り

 古典落語に「死神」言うもんがありますが、みなさんは聞いたことがあるでしょうか

 そう、最後に蝋燭をふぅ。パタリ。ってやつです。

 あの蝋燭、どうも不安なんですよね。管理方法が。

 なんぞ死神がくしゃみして急にころり。なんてゾッとしないです。


 霧がかる川を渡らしてもらい、船頭に礼を言ってから、程なくして現れた門をくぐる。その城の中には、人気はなく、ただ男の足音だけが響いていた。

「これがあの世かぁ。なんか豪華なもんやと思っとったけど、案外ボロい宮やな。」

「ボロくて悪かったな」

「へ?!あんた、誰や?…どう見ても、人間とちゃうな。」

「せや、俺は寿命を管理している死神や。」

「あの、落語とかに出てくる、死神かいな。足元にいたら助けてよし、枕元にいたら助けるなゆうて医者の真似事させる」

「えらい具体的やな。まるで解説を誰かにしてるみたいに。…まぁええわ。お前、この後閻魔さまの前に行かなあかんねんけど、ちょっとその前にきて欲しいンや。お前には説明せなあかんことがあんねん」

「説明?長あせんといてな。寝てまうねん、永眠してんのに。永眠といや、儂なんで死んだんや?前日までピンピンしとったで」

「上手いこと言うな。それについて話をするわ、まあ来い」

 男は死神に連れられて、小さな小屋に入った。中は薄暗いが、床、壁一面を覆う蝋燭が怪しく揺れ、燃えている。短いの、長いの、細いの、太いの、多種多様に、色とりどりに。

 中に一人、風変わりな者がいた。ここにきてからは珍しく、スーツを着込んで、シチサンに分け、罪悪感を顔いっぱいに写している。

 スーツの男は死神と男を見るやいなや、頭を地面に擦り付け、大声で

「誠に申し訳ありませんでした!」といった

「なんや兄ちゃん、何も儂迷惑かけられてないで」

「いえ、貴方に貴方史上最大の迷惑をかけました!私はこの小屋、『寿命蝋燭小屋』の管理を任されていた者です!」

「ほん、じゃあ儂の命も管理してくれとったんはあんたなんか。そんな重大な役の方がどないしたん」

「貴方が死んだ理由に関することです!」

「もったいぶらんで言うてみい」

「この小屋雨漏りしたんです。」

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雨漏り 神田 真 @wakana0624

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