第12話 ポーラ帝国軍団長

 「進め!!魔王軍は、目の前だ!我らの屈辱を晴らすのだ!」

 「ううおおお!!」


 大きな声が聞こえ、軍靴が鳴る。まさしく、戦場。

 トゥラースの森の中央では、魔王軍とポーラ帝国軍がお互いに大きく陣地を組み今まさに衝突を始めていた。


 「師匠、魔王軍はあっちにいます。裏から回りますか?」


 「いいえ、その前にポーラ帝国の友人に会いに行くわ」


 「友人ですか?」


 「ええ、ポーラ帝国に転移したとき、少しお世話になった人がいるの。彼女、ポーラ帝国軍の団長らしくてね、多分だけどここにいるはずよ」


 「なるほど」


 師匠はそう言って、ポーラ帝国の陣地へと来るように俺を誘導した。

 ポーラ帝国の陣地へと向かうと、師匠はポーラ帝国の兵士たちに自らの身分証明を示す名札を、見せて回り目的地へとたどり着いた。


 「ここに、団長殿がおられます」


 「すまない、ここまでの案内感謝する」


 師匠は、ある兵士に陣地の中央に存在する団長の陣幕に案内させるとそこへと入っていった。ここに、師匠の友人がいるのだろうか?


 「失礼するわ、私はデイス・アストロン・ファイギル。ここにいる軍団長メガリア・フェルガを訪ねてきたんだけど」


 「久しぶりね、ファイギル」


 師匠の呼びかけに反応したのは、青い目をした銀髪の女性騎士だった。


 「久しぶりメガリア、魔王軍強いでしょ?」


 「強いわよ、でもこれぐらいは予想してたこと。数ではこっちのほうが多いわ、戦場が森のせいで防衛側が強いけどいつかは戦線を突破できるはずよ。それよりも、あなたの隣にいるその青年は?」


 「彼は、ケント。イサキ・ケントよ。私の弟子ね」


 「よ、よろしくお願いします。メガリアさん」


 「こちらこそよろしくね、ケントくん。それでファイギル、私のところ来たってことは何か用があるんでしょ?」


 「私達も魔王軍との戦いに参加させてほしいの」


 「え?逆にいいの?」


 「こ、この戦争には聖王国も参戦してるのよ?もちろん、ありがたいことだけど」


 「それでもよ」


 師匠は、強い眼差しでそう答えた。どうやら、俺の心配は無用だったらしい。


 「それじゃ、これを付けておきなさい。ポーラ帝国軍、それも指揮官の地位を示す物よ」


 「あら、いいのかしら?」


 「あなたをそれだけ信用してるってことよ、期待を裏切らないでよね?」


 「もちろんよ、ありがとう」


 師匠は、メガリアさんから青く光るバッチのようなものを二つ貰い片方を俺の胸に、もう片方を自分の胸に付けた。


 「それじゃ、行ってくるわ」


 「大丈夫でしょうけど、気をつけてね」


 「ええ」

 「ありがとうございました」


 師匠と俺は、メガリアさんに返事を返すと陣幕から出て魔王軍の陣地へと一直線に向かった。

 無論、その道中は多くの魔族を殺しながらついには魔王軍の中央へと辿り着いた。

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