転生したらゾンビでしたが

@AI_isekai

本編

始まり

第1話 墓地でゾンビで老人

 目が覚めると、俺は墓地にいた。

 

 俺の名前は、勇行いさき 健永けんと

 

 俺は元の世界で死んでしまったようだ。

 俺――トラックに轢かれたんだよな。あの人、大丈夫かな。

 

 「はぁ~」

 

 身体を見渡せば、緑の体色で身体はところどころ血がついている。

 ゾンビに転生したのだろう。

 

 なんで、ゾンビなんだ?

 

 

 

 その場で立ち尽くしているよ、向こう側から、声が聞こえた。


 とりあえず、行ってみるか。

 

 向かう途中、墓が掘られ死体あさりでもしているのか痕跡があった。


 「勇者様!」


 声の聞こえた場所に向かうと、黒いローブを着た老人が見えた。

 

 (これは、勇者召喚ってやつか?)

 

 地面には、魔法陣が光り、その魔法陣の中心にはひとり美男子がいた。


 「勇者様。どうか、我らを救って下され」

 

 頭を下げて、頼みこむ老人。

 

 「嫌です。あの、なんで僕まだ生きてるんですかね?」

 

 老人に勇者と呼ばれる美男子は、秒で断った。

 

 「な、なぜ?」

 

 老人が、恐縮しつつ聞くと

 

 「いやね、魔王殺したじゃん。ん-っと、8回は殺したよね?もう、だるいんだよね。てか、今。いつ?」

 

 勇者の魔王を8回も殺した宣言に、俺も動揺する。

 ……過去の勇者を、生き返らせてるのか?

 

 「え、えっとですな。今は、聖王歴438年です」

 

 「そんなに、経ってないじゃん。え?魔王38年で復活したの?早くね?」

 

 「ですから、その……」

 

 「でも、もうやんないよ。魔王討伐」

 

 「そこを、どうか……」

 

 「じゃ。バイバイ」

 

 頼みこんでいる、老人を尻目に勇者は消えた。多分、転移魔法でも使ったんだろう。

 

 「勇者様……」

 

 老人の顔が見る見るうちに青ざめてくぞ。

 

 「もう、終わりかもしれん」

 

 もしかして、これってなんかヤバい状況なんじゃ。

 

 話しかけるべきか。悲しみに暮れる老人。強いだろうけど悲しんでる今ならゾンビでもワンチャンあるよね。

 ここにいても、仕方ないし――

 

 「そこに、いるのじゃろ?ゾンビよ」

 

 あれ?気付いておいででしたか。

 

 「は、はい」

 

 墓の裏側から、返事をする。


 「喋れるのか?返事が帰ってくるとは思わなんだな。不思議なゾンビじゃ。出て来なさい。何もせんよ」

 

 「あ、あの?」

 

 警戒しつつ、老人に近づき、質問する。

 

 「なんじゃ?」

 

 こちらを向き、何か気になることでも?という顔で返事を返した。無論こちらも気になることはいっぱいある。


 「あなたは?」

 

 「そうじゃな――」


 そう聞くと、少し考えたあと老人はこう言った。

 

 「ワシは、デイス・アストロン・ファイギル。元宮廷魔術師団長で元魔法研究会委員長。今は……死体あさりじゃな」

 

 苦笑いしつつ、そう答えを返す老人。

 宮廷魔術師?魔法研究会?おいおい、結構すごい人なんじゃ。

 

 「え、えっと、デイス?さんは――」

 

 「ファイギルじゃよ、ファイギル。デイスは、称号でアストロンは家名じゃ」

 

  デイスってなんの称号だよ。


 「いや、称号じゃないな。なんと言おうか……友からのメッセージ。じゃな」

 

 「は、はぁ。メッセージですか」

 

 名前を伺ったあと、こうも聞く。

 

 「どこで暮らしてるんですか?」

 

 「今は山小屋で一人暮らしじゃ」

 

 「なるほど」

 

 「ゾンビよ。お主も来るか?」

 

 「え?いいんですか?」

 

 「あぁ。一人じゃ生きられんだろう?」

 

 「で、では、お言葉に甘えて……」

 

 「よし、決まりじゃ。では、行きましょうか」

 

 ん?誰だ?

 

 老人だったはずの人が、女性に変わっていった。赤髪で緑色のきれいな目の女性に変身というか何というか。

 取り敢えず、美人な女性になっていた。

 

 「何か、ありましたか?」

 

 「え?いや……」

 

 心なしか、口調も変わっている気がする。

 

 「もしかして、この姿のことですか?」

 

 「え、まぁ。はい」

  

 「この姿は……」

 

 あれから、十分ぐらい話を聞いた。質問し答えが返ってくる。また質問。それを繰り返した結果やっと分かった。

 

 どうやら、普段は老人の姿で、金を取ろうとして来た悪党を返り討ちにする。

 女性の姿の時は、男性が襲ってくるそうだ。

 

 治安悪るいな。

 

 と、思ったのだが元の世界とは違うのだ。盗賊だとかが居ても不思議じゃない。

 

 殺すことはないと言っていたが、その分の金はとるけどね?とか、女性の姿で笑いながら言ってきた。

 可愛いはずなのに、何故か背筋が伸び、冷や汗をかいた。

 

 会話を終えて、お互いのことを色々話した。いや、俺はなんも言っていないんだが。

 そんなこんなで、ファイギルさんと俺は山小屋へと向かった。

 


 「ここが、山小屋です」

 

 まだ、女性の姿のようだ。老人より接しやすいだろう。とか言ってたけど、逆に接し難い。だが、外見だけなら可愛いので苦情は言わないでおいた。


 「ちょっと、待っててくれる?」

 

 「はい?」

 

 そう言って、ファイギルさんは小屋に入っていった。1分後。

 

 「偽装っと」

 

 手に、白色の粉を持ちその粉を俺にかけて、偽装とつぶやく。

 

 「あれ?もしかして、この姿は」

 

 なんと、前世の姿に戻っていたのだ。


 「あら、案外、いいじゃない」

 

 「何がですか?」

 

 「あ、いやぁー。顔が……ね?」

 

 目を泳がせながら、言われましてもね……そう思いながら感謝の気持ちを伝える。

 

 「とにかく、ありがとうございます。こっちのほうが、しっくりきますから」

 

 鏡も、持って来て確認して下さいと言ってるね。戻してほしかったら、言ってほしいそうだ。まぁ。戻すって案は却下だな。

 

 「あの?これから、俺は何をすれば?」

 

 「そうね――」

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