Agatha Christie's The Mirror Crack'd from Side to Side
第1回 汝、訳すことなかれ
The Mirror Crack'd from Side to SideのChapter 1は、こんな風に始まります:
Miss Jane Marple was sitting by her window. The window looked over her garden, once a source of pride to her. That was no longer so. Nowadays she looked out of the window and winced.
おっと、初っ端から主役が登場です! この短い4つの文から情景が浮かぶでしょうか。庭に面した窓辺に、Miss Jane Marpleなる女性が座っている……。
さて、洋書を「読む」といっても、読み方は様々です。「精読」ならば、知らない単語はしらみつぶしに辞書で調べる必要があるでしょう。そして、わたしの大嫌いなあの言葉が、今にも聞こえて来そうです。
「それでは、訳してみましょう」
訳しませんよ、わたしは。英文を読むのにいちいち脳内で訳しながら読めというのでしょうか。そんなことをしていたら、まどろっこしくて発狂してしまいます(これはあくまでも、このエッセイにおけるわたしのポリシーであって、英文を訳すことが絶対悪だとかそういうことを言いたいわけではないことをご了承ください)。
一方、「多読」ならば、知らない単語はとばして、全体の意味がつかめればいいという感じで読み進めるでしょう。
自分の読み方は多読に近いです。
ただ、全く辞書を使わないというわけではなく、この表現は意味を知りたいと思った時に適宜使います。つまり、その時々で多読と精読を使い分けている。長編一冊分を英語で読む際に、多読か精読、どちらか一方を押し通さなきゃいけないなんてことになったら、どちらの場合も相当な負荷になると思います。このMirror Crack’dだって、比較的薄めの本とはいえ、ペーパーバックで291ページあります。ここはフレキシブルに行きましょう。読書は自由で楽しくあるべきです。
Kindleのデバイスで電子書籍を読む場合、単語をタップするだけで検索できて大変便利です。でも、物語の先を知りたくて仕方がないような場合は、それさえも面倒で、とにかく先に進んでしまいます。まあ、あまりいい読み方ではないのかもしれませんが、自分が物語を読む一番の目的は、続きがどうなるのかを見届けることなので。
英語の本、英語学習者用ではなく英語で書かれた本を外国人が読めば、知らない単語や表現は次から次へと出てきます。初めのうちは、わからない部分があることにあまり神経質にならない方がよいと思います。精読は、書籍という形で提供される大量の英語を読むことに慣れてから始めても遅くありません。
だから、知らない単語を読み飛ばしても内容が7割程度理解できる本を選ぶ。最初はそれが難しいのですけど、とりあえずそれを目指しましょう。幸い今はAmazonなどのオンラインショップで多くの本の冒頭何ページかを試し読みすることができますし、大きめの図書館や新刊書店なら洋書も置いているでしょうから、実際に本を手に取って眺めることもできます。
上記のChapter 1冒頭部分は、比較的簡単、といってももちろん各々の英語のレベルによって感じ方は異なるはずですが、高校までの英語教育を終えた人なら、さほど苦労せずに読める文ではないでしょうか。この場合の「読める」とは、あくまでも先ほど例にあげた多読的な読み方、知らない・わからない単語がいくつか文中に含まれるとしても、それを辞書で調べたりしなくても文章全体が意味するところは理解できる、ということです。
かく言う自分は、とにかく暗記と正確な翻訳を強いる勉強がまったく性に合わず、英語の授業中はいつも寝ていました。現在も18歳時点の英語力のままならば、きっと上記の文章でも難しすぎて早々と脱落です。13~18歳ぐらいの若さで外国語の勉強を継続できた人は本当にすごいと思います。
しかしそんな自分も、その後心を入れ替えて真剣に勉強し直したので、今は読んで理解することができるようになっています(少なくともこの小説の冒頭部分ぐらいのレベルであれば)。自分の場合は、ずいぶんと遠回りをしてしまいましたが。
正確に理解できたかどうか確認するために訳してみる、というのは、先に述べたように、あまりおすすめしません。翻訳には文学的センスが要求されますし、上手に訳すことができなかったからといって、内容を理解できていないとは限りません。通訳翻訳の仕事をしたいという野心があるなら別ですが、とりあえず、ここではできる限りストレスを少なくして英語で小説を楽しく読むことに重点を置きたいと思いますので、悪しき日本の英語教育の習慣「では訳してみましょう」は、しばし忘れてください。
とはいえ、内容に全く触れないのも不親切極まりないですし、次回はもう少し先に進みつつ、英文が意味するところにも触れてみたいと思います。
あ、それから、自分は洋書は特にKindle版を購入する場合が多いですが、それは主に値段が安く済むのと、日頃から所有物を増やさないよう心掛けているためです。あまり買わないようにしていてさえ本って勝手に増えていくものですよね。それが紙の本だと、狭い家の中が大変なことになってしまいます。紙の本が嫌いなわけではありません。決して。
いや……嫌いなわけではないどころか、むしろ大好きです。大富豪のお屋敷(洋館)にあるような書斎(英語だとLibraryとかStudyといいます)があったらと、常々夢に見ております(現実辛い)。
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