第9話 ダンジョンとオフ会3

 オフ会当日。

ダンジョン付近にあった遊具の全然無い公園に集まることになっている。


 一応、ダンジョン前にも待ち合わせ用の椅子と机はあるけど、あそこは出入りが多い上に土日は人も多いので慣れた人じゃないとかえって大変だということになった。


 さて、公園には既に何人か集まっていて、少しだけ目立っている空間がある。多分……あそこが目的地だ。


 なんていうか、見た目も性別も、職業やら年齢とバラバラではあった。けど、話してみると、この人は知っている人間だという認識になるから不思議なものだろう。


 とりあえず、予約していたレンタルルームにて物資のやりとりや簡単な加工を行う。


 レベル的な話でも、施設的な意味でも金属加工などは出来ない為あくまで日曜大工レベルではあるけど、かんしゃく玉やら一部の装備品なども受け取る。


 じゃあレベリングしに行きますかという号令と共に、2層の狼スポットに向かう。


 まあ、うん。しっかりと装備を身に付けた彼らに混じって普段着の8人がぞろぞろと歩いているから人によってはギョッとされたりもした。


 これを買ってきたんだとハカセが犬笛を見せてくる。犬笛で呼べるの?という疑問には分からないから試すのさといい笑顔で答えてくれた。


 交流会かつ検証会だからそうだよねって珍品やら珍装備が飛び出す中、俺の手元には宅急便で送ったバッタの足のなれの果てが握られることになった。


 そう、バッタの足を木の棒にくくりつけたバッタ斧というネタ装備である。


 たまに明らかにネタ装備にしか見えないグラフィックのくせに割と実用レベルだったりする装備で、序盤は使う人も居るんだとか。


 ただし、耐久は恐ろしく低く、10回くらい叩きつけるとガタガタと怪しい感じで壊れかけるので、今回はそこで止める予定だ。


 何でかというと、壊れかけのバッタ足の斧というアイテム名の装備を元に、虫系統のネタ武器は強化出来る謎の仕様があったからだ。


 こっちにもあるのかの検証も兼ねて、なにより、このバッタ足の斧が実用レベルかどうかもテストするのである。


 人の少ない端の方で森に入り、しばらく歩く。そうすると、ポツポツと木が植わっていない小さい広間のような空間がある。


 露骨に敵とエンカウントして交戦する為に用意しましたというような、不自然な空間である。


 今回は大幼虫が3匹ほど草を食べていた。アゲハチョウの幼虫のような緑色の幼虫ではあるが、体長50センチと非常に大きく、人によっては嫌悪感を覚えるレベルで割とキモい。


 俺達にとってはボーナスモンスターみたいなものなので、各自で攻撃を行い瞬殺する。8対3だし何の反撃も貰うこと無くモンスターは消滅した。


 さて、この広間で犬笛を吹いて、狼を呼ぶわけだけど……笛を吹いて、しばらくすると草木をかき分けるようなガサガサとした音が近付いてくる。


 方向が分かれば、先ほど調合して分配してきたかんしゃく玉を投げる。ゲームとは異なり上手く当たらない可能性も考えて全員で贅沢に投げる。


 結果として、過剰に投げつけるとそれだけで倒せることが分かった。あと、俺達もくしゃみやら鼻水でちょっと被害が出た。3メートルは軽くあったのに……。


 コツが分かれば呼んで、投げて囲んで叩くと作業のように事を行った。最初は動物を叩くのに出来るかな?と不安だったメンバーも、狼を見ると容赦なく叩いていた。


 いや、あれなんだ。可愛さとか全然感じない。野生の獣特有の匂いに血走った目、黄ばんだ歯と牙、よだれまみれの口、犬感はまるで無いしこちらを食ってやるという殺意と敵意まみれで実物は凄かった。


 割とびびったけど、凄まじき特攻アイテムといったところだった。


 何度かやると、そこは運動とは多少疎遠な俺達、というかゲーマー集団あるあるでもある肉体の疲労に襲われた。


 ちょっと運動するとツカレチャッテェ……と目を丸くし出したので撤退することに。


 レベルアップしたかは全然分からないけど、ドロップアイテムという意味では割といろいろ入手出来たので実入りとしては満足だ。


 最後に皆でオレンジを回収してダンジョンから帰る。


 この後はメンバーの知り合いが経営する小さな居酒屋を貸し切りにしてくれているとのことで、そちらに移動することになった。


 楽しい時間はあっという間というか、リアルなダンジョンアタックで事故らなくて良かったというべきか……。まあここは伊達にダンアタを何年もやってないとイキッておくほうがありかもな。

 


※キャラが固まらなかったので今回は意図的にセリフを抜いて書いてあります。

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