第10話:しっと

 もう一度ダンジョンに潜れて本当に良かった。

 ただ、バックパックの中にある非常食と水は無駄づかいできない。

 だから仕方なく、あまり美味しくない協会の食堂でご飯を食べた。


「みんなには隠し扉を確認してもらいます。

 僕が指示した隠し扉を開けてみてください」


「「「はい」」」


 僕と同じくらいの3人が返事をしてくれる。

 おばあちゃんと2人のお姉さんは付添人として背中を守ってくれている。


「隠し扉の中に、もう1つ隠し扉がある事があります。

 上、下、周囲を押し引きして、前後左右にスライドさせて、開かないか確かめて」


「「「はい」」」


 3人がていねいに探していますので、時間がかかります。

 僕だけでやった方が早いくらいですが、パーティーだからしかたありません。

 パーティーを組むときは、一番未熟な人間に合わせないと死んでしまいます。


 2人のお姉さんが驚いた表情をしています。

 隠し扉の中にも隠し扉がある、この程度の事も知らなかったのでしょうか?


「宝船聖子様、私たちも隠し扉を探してみたいのですが、宜しいでしょうか?」


 やっぱり知らなかったようです、トレジャーハンターとしては全然ダメですね。

 でも、自分でやってみて確かめようとする性格はトレジャーハンター向きです。

 

「ああ、かまわないよ、見張りはまかせな」


 おばあちゃんが見張りをしてくれるなら、何の心配もありません。

 でも、油断せずに周囲を警戒しなければいけません。


 この宝探しは、協会からF級冒険者免許を取るだけが目的ではありません。

 僕がタカラブネファミリーとして外に出ても良いのかの試験でもあるのです。

 1人で公共のダンジョンに入ってもだいじょうぶだと証明しなければいけません。

 

 2人増えたパーティーメンバーが、不意討ちを喰らわないように警戒します。

 一番強い僕がみんなを守らないといけないのです。


 先の見通せない十字路や曲がり角から敵が現れても、余裕をもって逃げられるように考えて、調べる隠し扉を指示しなければいけません。


 5人がどのようにして隠し扉を調べているか、直接は見えませんが、体の動きを見て、上手く確かめられているか判断しなければいけません。


「深雪さん、上を確認する時のスライドする角度が悪いです。

 それでは見逃す事があります。

 何度隠し扉が見つからなくても、ていねいに探し続けてください」


「ごめんなさい!」


「ルナ・ウィンターズさん、僕が次の隠し扉を指示する前に終わっても、曲がり角や十字路に近づいて探さないでください。

 亜竜が現れた時に、助けが間に合わなくなります」


「ごめんね、次から気をつけるわ」


☆世界的アイドル冒険者、鈴木深雪のライブ動画


雷伝五郎:お、配信が再開されたが、よくある事なのか?


豚キムチ:いや、こんな事は初めてだ!


みゆき命:3人の新人を入れたからじゃないか?


ゆうご:寝ないで良かった。


雷伝五郎:おい、おい、おい、さっきの超人少年が指示しているぞ!


豚キムチ:うそだろ、なんで男がパーティーメンバーに入っているんだ?!


みゆき命:殺せ、みゆき姫に近づく男は殺せ!


Kenneth:おっと、これはどういう事かな、先に来ていた人。


豚キムチ:分からない、信じられない、どうなっているんだ?!


Rafael:実力者をスカウトした、それだけだろ。


みゆき命:ダメだ、ダメだ、絶対にダメだ!


Alban:冷静になれ、イレギュラーが2回もあったのだ、ボディーガードは必要だ。


Benno:配信が中断している間に調べた。

  :タカラブネファミリーはパーティーメンバーを嫁にするようだ。


藤河太郎:その話は知っている、冒険者の間では有名な話だ


みゆき命:ギャアアアアア!


Kenneth:うるさい、黙れ!


Rafael:お前の方がうるさい、黙れ!


Kenneth:なんだと、露助は黙っていろ!


Rafael:ヤンキーこそ黙っていろ!


ノンバア:管理人、ケンカする奴は追放して!


Kenneth:ごめん、追放は許して!


Rafael:悪い、追放は許して!


Benno:悪ふざけはもう止めろ、冒険者はもっと真剣に見ろ。

  :ここにタカラブネファミリーの知識があるのだぞ。

  :隠し扉の中に隠し扉がある事を知っていた者が何人いる?

  :この動画を見ていれば、冒険者として一流になれるかもしれないぞ!


★★★★★★


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