Day29 名残

 からっぽになった部屋にやってくる

 あなたを送れなかった人たちが、あなたの名残を探してやってくる


 疲れたとき、へこたれそうなとき

 あなたの顔を見るだけで笑顔になれた


 言葉を失い、判断力を失い、意思の疎通もままならないのに

 あなたの存在そのものがわたしたちを癒やしてくれた


 わたしの手で、あなたの身体を清め送りだせたこと

 とてもとても、しあわせに思います


 約百年、ほんとうにお疲れさまでした

 どうぞ安らかに

 心深く、感謝と敬意をこめて


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る