Day24 ビニールプール

「おにい! プール! おっきいねえ!」


 就学するまでは、プールといえばビニールプールだったという小学二年生の妹。彼女が知っている、一番おおきなプールは小学校のプールなのだそうだ。おかげで、ごくふつうの市民プールに大はしゃぎである。


「水はいるまえにちゃんと準備運動してな」

「はーい!」


 しかしオレ、なんでプールなんてきてんだろう。超インドアなのに。冷房のきいた部屋でゴロゴロしてたいのに。


「おにいもいっしょにやろ」

「はいはい」


 まあ、親の再婚によって最近できたばかりの妹にせがまれたからなんだけども。

 この、好奇心に輝いたくりくりとした目で見られると、ついなんでもいうことを聞いてやりたくなってしまう。


 兄になってはじめての夏。


「おにい! もうはいっていい?」

「まだまだ。ちゃんと足のすじ伸ばさないと。ほら、オレのマネして」

「えー、もう、しょうがないなあ」


 なんでオレがわがままいってるみたいになってんだろう……。

 まあいいか。楽しそうだし。

 もしかしてこれが、世間でいうところのシスコンてやつなのかとふと思う、高校最後の夏休みである。


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