第35話 エピローグ

 あれから1年が経った。

 じいちゃんが亡くなったことでダンジョンに挑戦できなくなる、などということは全くなかった。実際のところ、俺は今でもダンジョンに挑み、魔法を扱うことができる。それどころか、魔法の使い手としての技術も日々進化している。


 この能力の持続は、おそらくじいちゃんの置き土産なのだろう。生前のじいちゃんは、俺が魔法を使えるようになることを強く望んでいた。そして、それは単なる技術や知識の継承ではなく、じいちゃんからの愛情の形でもあったのだ。俺に対する彼の無償の愛が、魔法の形で残されたのだと思うと、胸が熱くなる。


 じいちゃんへの感謝の気持ちは、言葉にすることができないほど深い。彼がいなければ、俺は今の自分を見つけることはなかっただろうし、こんなにも多くの人々と繋がることもなかった。じいちゃんの教えと愛情は、俺の人生の中で最も大切な宝物となった。


「貯金が……小国の国家予算に匹敵しますね」

「まさか世界的にバズれるなんて、思ってもいなかったですね。今では様々なテレビ番組に、引っ張りだこですもんね」


 あの日、じいちゃんとの決戦配信が俺の人生を一変させた。世界中のストリーマーやインフルエンサーが俺の配信を取り上げ、その結果、俺は国境を超えた人気を獲得することができた。彼らの言及が火をつけ、俺の配信は世界中の人々に受け入れられるようになった。


 今では、俺のチャンネル登録者数は世界1位を突破し、スーパーチャットの額も累計で兆を超えるという驚異的な数字に達している。この成果は、じいちゃんとの戦いと、それに続く数々の冒険があったからこそ成し遂げることができた。


 世界各国のテレビ番組からの出演依頼も増え、俺の日常生活は以前とは大きく変わった。学校に通う時間が減りつつある一方で、学業の成績は維持している。これも全て、俺を支えてくれる家族、友人、そして視聴者たちのおかげだ。


「それもこれも全て……じいちゃんのおかげだな」


 今では、時々、あの辛い日々の夢を見ることがある。じいちゃんが亡くなり、天涯孤独になったあの日、毎日のようにいじめられ、暗澹とした日々を送っていた時期。あの頃は、まるで地獄のようで、日々に光を感じることは一度もなかった。希望という言葉は俺の辞書には存在せず、毎日が涙と絶望に満ちていた。


 しかし、今の俺は全く異なる世界に生きている。毎日が楽しく、生活に充実感を感じている。大量の金銭が入ってくること、そして素晴らしいマネージャー兼友人ができたことで、俺の日々は輝いている。これまで経験した苦労が嘘のように、今では毎日を謳歌している。


 この変化は、過去の苦難を乗り越えた結果得られたものだ。過去の自分が経験した暗闇は、今の自分にとっての価値ある教訓となり、人生をより豊かにしてくれた。じいちゃんとの再会、そしてその後の冒険が俺に勇気と希望を与えてくれた。


 いま、俺は過去の自分に言いたい。どんなに辛い状況でも、未来は変えられるし、いつか必ず光が差し込むことを。そして、その変化を自分自身で作り出すことができると。じいちゃんの愛、友情、そして冒険を通じて学んだことは、俺にとってかけがえのない財産となり、これからも俺の人生を照らし続けてくれるだろう。


「今日はどんな配信をするんですか?」

「そうですね。普通にダンジョン配信をしますか」


 そう言って、俺はいつも通りゲートを開いた。じいちゃんの死後、さらなるダンジョンの深層が解放された。まるでエンドコンテンツのように、ダンジョンに最深部などなく無限に続いているのだろう。


 俺自身もいつの日か、じいちゃんのように誰かにとっての指導者となり、愛情を形に変えて残していける人間になりたいと思う。じいちゃんのように、俺もまた、後世に何かを残すことができる存在になれたらと願っている。


「さぁ、挑もうか!!」

「はい!!」


 俺たちはいつものように、ダンジョンに挑んだ。待っている視聴者たちのためにも。



────────────────────────


お疲れ様です。

作者の志鷹志紀です。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

新作を投稿したので、こちらもお読みいただけると助かります。


タイトル:過疎ダンジョン配信者の社畜、たまたま出会った人気配信者を助けたら何故かバズってしまうhttps://kakuyomu.jp/works/16818023213709685956

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たまたま発見した『魔法書』のおかげで、世界で唯一の魔法師になりました 〜ダンジョン配信や制裁配信をした結果、アホほどバズりました〜 志鷹 志紀 @ShitakaShiki

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