#038 動画制作

 ゲーム画面の撮影には2つの方法がある。1つは画面キャプチャ(撮影)ソフトを使う方法。そしてもう1つが専用の録画機材・キャプチャーボードで外部撮影する方法だ。導入ハードルは前者の方が低いものの、パソコンのリソースを使うほかパソコン内部の画像しか取り込めない欠点がある。対して後者はそれなりに高価なものの何でも取り込める利点がある。


「……だから、基本的にはソフト側で撮影するけど…………裏技って程じゃないけど、リアルタイムで録画するんじゃなくて、リプレイ映像を撮影する方法もあるね」

「あぁ、リプレイ機能があるゲームならそれでもいいのか」

「実際にはゲームのハードや、生配信や編集動画で条件が大きく変わるけどね。あと、マイクやそのコントローラーも結構高いし」


 そういって一般的に配信で使われているマイクの販売サイトを表示する。


 キャプチャーボードもそうだが、この手のアイテムは基本数万。中には数千円で買えるものもあるが、そのあたりは激安の中華ガジェットであり、素人が買う・使うのはお勧めできない。(シッカリ調べて機能や仕様を納得して買う分には、実用レベルのものも存在する)


「うげっ。安いパソコンが買えちゃうじゃない。なんでこんなに高いのよ」

「ちなみにプロが使うマイクって数十万とか数百万の世界だから、数万円ってのは充分安い入門モデルなんだけどね」

「つか、ストリーマーって皆、こんな高価な機材を使っているの?」

「ある程度売れている人は使っているはずだね。そもそも仕事道具ってそういうものじゃない? 農家が使う耕運機や、コンビニの業務用電子レンジやフライヤーとか。ちょっと違うけど、職種によってはお店の光熱費だけでも月十万こえてくるらしいし」

「「たしかに……」」


 もちろん売れていてもジャンルやスタイル次第では安い機材で誤魔化せるだろう。しかし動画のクオリティは高いに越したことはない。それになにより…………機材は経費扱いになるので税金として国にとられるくらいなら設備投資にまわすって考えもある。


「まぁ、今はそこまで難しく考える必要は無いよ。始めるだけならもっと安いものでもできるし」

「数万円って高いって思ったけど、バイトが出来るようになれば一ヵ月で一式揃えられるくらいの金額なのよね」

「そう考えると安いわね」

「「たしかに」」


 そもそも僕も、ゲーム配信はやっていないので専門外。機材もないので本当にゼロからのスタートになる。


「それよりも、まずは1本作ってみようか。幸い、ノートパソコンならこのままでも出来るし」

「え!? 今からですか」

「今からです」


 ひとまずフリー(無料)のキャプチャーソフトをダウンロードして、無料のブラウザゲームをプレイする。


「えっと、これでもう、出来るのですか??」

「あぁ、これ、たぶん音声が入っていないな。設定は、どこだろう……」


 しょせん無料ソフトなので制約はあるが、まぁそこは重要ではない。ようするに全体の流れが分かればいいのだ。


「おぉ、ちゃんと撮れていますね」

「思いっきり(ソフトの)ロゴが入れられちゃったけどね」

「あとはこの映像を編集ソフトに入れて、字幕とか入れたら完成だね」

「これ、生配信の時はどうしたらいいんですか?」

「それは配信ソフトがあるはずだから、それでキャプチャーする形になる…………はず」

「「へぇ~~」」


 録画できた映像は非常に小さく、これならスマホで撮影したほうがマシと思えるものだった。しかし技術としてはここがスタートであり、1つ1つステップアップしていけば本格的なゲーム実況動画が作れてしまう。


「つか、部長は知っていますよね?」

「え? それは、もちろん! 知っていますよ、知っていますとも。アハハハ……」

「「…………」」


 不安になる表情を見せる部長。ともあれ部長の言い分も分からなくはない。しょせんは独学であり、フィーリングでなんとなく出来るようになっただけ。その意味を説明することはできないし、使用ソフト(見た目)が変わったらもうお手あげだ。


 ともあれ、知識や技術はあるに越したことはないのだろうが…………いきなり頭の痛い勉強から入っても身に付かない事もある。まずは触ってみて楽しさを理解し、継続可能と思えるところまで進む。理屈を覚えるのはそれからでも遅くないはずだ。


「まぁいいや。基本はコレで、あとはどっちに進むかって話になるけど…………地声でいくならマイクやサウンドコントローラー、読み上げソフトでいくならそのあたりのソフトや素材を用意することになるね」

「それで続きは…………誰の家でやりますか!?」

「「…………」」


 待ってましたとばかりに師匠が期待の眼差しを向けてくる。ここから先はパソコンのスペックや機材が必要になるので、選択肢は僕か部長の二択になる。


「えっと、最初にも言ったけど配信機材は僕も持ってないから」

「えぇ~、それならせめて、エロ本探しだけでも!」

「それ、本音と建前が逆転してない?」

「しまった!」


 だから今時、エロ本を持っている人はそうそういないんだって。まぁ、薄い本を持っている人はいるだろうけど…………僕はダウンロード版しか持っていないミニマリストなので、やっぱり現物は所持していない。


「アハハ。でも、部としてもそういう活動はしっかり経験しておきたいのよね。ストリーマーの知り合いでもいれば良かったんだけど」

「そうですね。すぐには無理ですが、ゆくゆくは部室に一式揃えて、後輩にも指導していきたいですし」


 珍しく真面目なことを言う部長。いや、実際部長は志があって第二美術部の部長に志願したのだが。




 こうして動画制作の第一段階を終え、次のステップへとすすむ。

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