#024 ペンタブレット

「へぇ~、これがペンタブ(レット)ですか」

「お絵描きをするなら必須だし、一部のFPSゲームとかでも使うと最強とか言われているね。まぁ、そっちは詳しくないから忘れてほしいんだけど」


 今日は部室に、自前のペンタブレットを持ってきた。これはセンサー付きのボードで『手描き感覚でパソコンを操作できる』という代物になる。お絵描き系の作業をするなら必須級のアイテムとなるのだが、今はタブレットも進化したのでソチラで作業する人も増えたそうだ。


「ぐふふっ、これで毎日、ジュンは自家発電を……」

「してないから!!」

「たっ君も、男の子だね~」

「だ~か~ら~」


 実際問題、僕の実力では……。


 それはさて置き、今日は委員長や妹さんは風紀委員の活動に参加している。2人がこの話を聞かずに済んだことに安堵する反面、居なかったからこそタガが外れてって可能性もある。


「基本的にお絵描き用だけど、動画編集でも素材の加工や、それこそサムネを作るのに使うから、あってもいいですね」

「うう、またお金が……」

「一応、液晶無しのモデル、通称"板タブ"なら5千円以下でもありますよ」

「けっこう安いものなのですね」

「ちなみに画面に直接書き込める液晶タブレット、"液タブ"は2万円くらいからになるね」


 このあたりのアイテムは中古も出回っているので安く入手する手段は多い。


「2万円は、ちょっと……」

「でも、2万ならモニターを買うのと同じくらいじゃないですか?」

「たしかに!」

「あぁ、液タブをモニターとして使う事は出来るけど、やっぱり画面が小さいから作業には向かないかな。サブモニターとしては充分使えると思うけど」

「なかなか上手くいきませんね」


 液タブは多少高くなるけど、やはり感覚的に理解しやすいので注目度は高い。しかしデメリットもあるので脳死でオススメできないのは悩みどころだ。


「あと、机に置いて作業するから姿勢が悪くなって、そこから体を痛めちゃうし…………あと、本当に直接描き込んでいるわけじゃないから、使ってみると見た目と若干ズレるんだよね。画面中央で作業する分には良いんだけど、フチの方に行くと安いヤツはかなりズレるから」

「うぅ、難しいんだね」

「まぁ、この板タブは部室に置いておくので、自由に試してください」

「助かります」

「まぁ、古いし安物ですけど」


 無償で資材を提供するのはトラブルの元なのだが、これはあまり価値は無いし、何より捨てようと思っていたものなので例外としておく。部室に置いておくと、誰かに盗まれる心配がでてくるが…………まぁ、様子見と言うか、将来的には部のパソコンを用意する予定なので、その管理の予行練習だ。


「それじゃあ、サクッとセットアップしちゃいますね」

「「お願いします!」」


 師匠のノートにタブレットを繋ぎ、ドライバーをインストールして使用可能な状態にする。この時点でマウスかわりに使えるのだが、あとはお絵かきソフトで筆圧調整などをすれば本領も発揮できる。


「そういえば、カグラはどうするのですか? パソコン」

「あぁ、神楽は上手い事、パパにおねだりしているみたい。でも……」

「??」

「本当はお絵描きがしたいってトコは、たぶん言えないんじゃないかな~」


 作業をしながら2人の会話に耳を傾ける。


 僕としても、お絵描きが恥ずかしいと感じてしまう気持ちは分からなくもない。普通の絵画ならまだマシなのだろうが、やはり二次元キャラだと風当たりは強くなるし、親なら勉学に専念してほしいと思うだろう。


「才能はやってみないと分からないので、そこは第二美術部ここで確かめればいいんじゃないですか?」

「それはそうなんだけど、神楽、人前で絵を描くの、すごく恥ずかしがるから」

「あぁ、まぁ、そうですね。わかります」


 僕だって気持ちは分かるが、こればかりは慣らしていくしかない。誰しもいきなり完璧な絵が描けるわけでは無いので、むしろ不完全な時期に作品を発表して、批判される受け皿を作っておくのは良いと思う。もし高いところを目指すなら…………心なき意見とも上手く付き合っていかなければならないのだから。


「えっと、これで使えるようになったので…………軽く、なにか描いてみますか?」

「おぉ、これでマンガが描けるのですね!」

「本格的なのは、ちょっとスペック不足だけどね」




 そんなこんなで僕たちは、ノートパソコンでお絵描きを出来るようにし、大まかな創作活動の流れを学んだ。

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