#019 パソコントレード大作戦②
「いや~、すごく快適になって、ビックリしたよね。ホント」
「そんなに違うんですか?」
「うん。ノートの時は起動に3分(体感)くらいかかっていたのが、30秒で動くようになったからね」
「「へ~ぇ」」
部室で部長の新しい中古パソコンについて話す女性陣。僕が用意したものなので誇らしい気もするが…………ノートパソコンと同価値にするため妥協に妥協を重ねたため、申し訳なさがせめぎ合ってしまう。(ちなみに、僕のパソコンは15秒で使えるようになるのだが、そこは伏せておく)
「それで、さっそく動画編集の勉強をはじめたんだけど……。ん~、難しいよね」
「息抜きでゲームをはじめたら、戻ってこられなくなったりして」
「ぐっ、それは…………そうだと思うから、入れないようにしてる」
「それが賢明ですね」
「そういえば、たっ君って、普段ゲームとかするの?」
「え? いや、最近は、ぜんぜん」
とつぜん話しかけられて、思わずキョどってしまう。一応僕も話題の関係者なのだけど、それはそれとして女性同士が話しているところに入るのは慣れないので許してほしい。
「でも、ゲームも詳しかったですよね? アニメや漫画もそうですが」
「あぁ、ゲームはストーリー解説動画を見れば済むし、アニメは評価の高いものを後からってスタイルだから」
「今時だね~」
「いや、先輩も歳は大してかわらないじゃないですか」
そもそも、リアルタイムで語り合う相手が居ないだけなのだが…………ともあれ、時間とお金を持っていかれるソシャゲは完全禁止にしている。別に、やっている人を否定するつもりは無いが、やはり生み出す側を目指す者として、そこに浪費できる"暇"は捻出したくない。
「えっと、それで…………ノートパソコンは、どうしますか?」
「あぁ、うん。まだ、ちょっと……」
渋い表情を見せる委員長。まぁ、当然と言えば当然。バイトもできない中学生にとって、パソコンはそれほど大きな買い物なのだ。
「ひとまず、借りるだけ借りてみたらいいのではないですか? 家の人と話し合うにしても、
「それは、そうなんだけどね……」
何やら問題を抱えていそうな雰囲気だが、僕は物語の主人公では無いので深入りするつもりは無い。もちろん、相談されたら親身に聞くつもりはあるが、相談されてもいないのに土足でプライベートな部分に踏み入るのは、ただの迷惑行為でしかない、っと思う、僕的は。
「一応、準備は出来ているからいつでも渡せるよ。それこそ…………ぎゃ、ギャバンが預かって、2人で触ってもいいし」
「「…………」」
「えっと、なにか?」
「いや、なんでも~」
頑なに師匠のファーストネームを使わない僕を、何か言いたげに見つめる面々。僕としてもくだらないのは理解しているけど、それでも恥ずかしいのだから仕方ない。
「はぁ~、ジュンは、相変わらずです。えっと、それではノートパソコンは私から触らせてもらうって事で…………受け渡しは、ジュンの家に……」
「公園で! 済むでしょ」
「うぅ、ミサオは、ちょっとお堅すぎます」
ちなみにノートパソコンは、許可をとるのも面倒だったので学校には持って来なかった。あと、話はそれるけど他の部員が『ミニパソコンを触ってみたい』と言ってきたけど、危ないのでやんわり断った。安いといっても、あくまで"比較的"なので(部長や師匠ならともかく)さすがに連中には貸せない。
「あっ、そういえば……。たっ君、スマホって、あれからどうしたの?」
「おぉ! ジュンのスマホ!!」
「なんで、シャルが1番興奮してるのよ」
「えっと、いちおう、用意しましたよ。中古ですし、学校に持ってくるつもりはないですけど」
「えぇ~~」
「いや、どうせ校内では使用禁止だし。"許可"もとらなくてもいいかなって」
校則を守っていない人も居るようだが、僕は破るつもりはないし、ソシャゲの周回放置をする予定も無いので持ち込み許可すら申請していない。
「そうは言っても、あると便利だし、許可くらいはとっても良いんじゃない?」
「それは、そうなんでしょうけど」
ちなみに部長は、部活動用の撮影をスマホで代用している。もちろん本格的なカメラがあった方が良いのだろうが、半端なカメラを買うくらいならスマホを使った方が便利で性能もいい。
「もしかして、高いヤツですか? それとも、すごく安いとか??」
「あぁ、うん。どっちも正解」
「「??」」
僕の買ったスマホは、高額スマホであり、現在は価値が暴落して捨て値で取引されているネタ機種だ。
「その、バルダンフォンを……」
「えっと、聞いた事がない機種ですね」
「え? バルダンって、もしかしてバルダン!?」
バルダンフォンは、高級家電メーカーのバルダンが出した高級スマホなのだが…………性能は並みのくせに無駄に高く、そのくせ独自ソフト・機能が多くて使いにくい低評価スマホだ。しかしバルダンは、もとよりブランド品スタイルで家電を売っているので、割高なのはいつもの事。問題なのは、予想以上に開発費がかさんだうえに売れなかったらしく、スマホ事業を早々に撤退してしまった点。これにより、ただでさえ使いにくいスマホがサポートさえ受けられなくなったのだ。
ともあれ、並の性能はあるわけで、それがタダ同然で売られているのだから面白半分で買ってしまった。もし本当に救いようが無かったら、改めてもう一台買う予定だ。ちなみにシムは格安になってしまったので、通信量制限の観点からも、学校に持ってくるのをやめた理由をになっている。
「ミサオは、知っているですか?」
「いや~、まぁ」
その後は、バルダンの話題で無駄に盛り上がってしまい…………今日の部活はいつも通り、何も決まらずフワっと終わった。
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