番外編 人間の心を僕は持つ

「お、おいっ!!やめろ、なにかが肩を触ってきていないか?」


「ひ、ひぃ、なんすか?その赤いスライムは」


この男どもはなんだ?

汚いし...いかにも臭そうだな....


僕は、すぐに地上に降りて、男たちがなにをやっていたか確認する。


死体を漁っていたのか?


「お前ら....」


「ひっ!?スライムがしゃべったっす!!」


「おいっ!!たかがスライムだろ?やっちまえ」


「え、あっしがですか?」


「そうだよ...お前が以外に誰がいるっていうんだっ!!」


そういうと、ガタイのいい男がヒョロヒョロの男の尻を蹴りあげて、僕の前へと出させる。


ヒョロヒョロの男は、そっと腰に刺してあった剣を抜き出す。


「スライムくん...悪く思わないでほしいっすねっ!!」


思いっきり剣を振ったつもりなんだろうが...普通に、避ける。


弱いな...僕は...少女を思い続けている。


なら、人間の心を持っているんじゃないか?そんな期待があった....


少女を好きになり続けていい、理由が欲しかった。



こいつらで、試す?僕の、本当の姿を?


いや....流石に、決断が早すぎるか...


こいつらが、死んでしまったら、僕の心が人間と同じだという証拠にならない。


「に、逃げないでくだせぇえ。ん?スライムの体よく見ると....ひっ!?なんか、目があるっすよ!!」


「あぁ?目のあるスライムだぁ?上物じゃねぇか!!もしかしたら、取引が出来るかもしれねぇぞ」


「そっすね」


「殺すのは、惜しい。捕らえる方向でいこう」


よし...決めた。


まずは、こいつらを手下に加えてみよう。そしたら、自分の心が人間なのか....どうか...分かるはずだ。きっとそうだ。


「動かないっすよっ!!行けそうっす」


「おう、やれやれ」


ん?なにか、変な布のようなものが、僕の上に...


「つかっ!!捕まえたっす!!兄貴っ!!」


「お、おいっ!!なんか、動いてるぞ!!スライムって、視界とかないんじゃねぇのか?」


「あっしの上着っすからね...きっと、臭かったんでしょう」


「お...おう。そうか」


捕まえた?この程度で?


まぁ...いいや。とりあえず、捕まえられたていで、あとでこいつらを服従すればいいや


腕の中で、揺られながら僕は静かにその時が来るのをじっと待っていた。








「かぁ...結局、報酬をとることが出来なかったじゃねぇかっ!!」


「いやいや...これは、これでアリっすよ。」


「はぁ...俺は、金が欲しいんだよ。か・ね」


「兄貴は、お金ばっかりっすねぇ....」



やっと、着いたか...


じっとしてるのも、めんどくさいんだが



「よいしょっ....で、このスライムどうするっすか?」


「あぁそうだな...闇取引とかあんだろ?明日そこで取引しよう」


「そっすねっ!!貴族とかには、こういうのが受けそうですしね」



僕は、そっと布から出て外を見る。

どこかの一室のようだ。


ここで、炎を放つのはなんともなぁ...


角うさぎみたいに、純粋体当たりでどうにかなるか?で、本当にダメそうなら、炎で最終的に攻撃しよう。


「なっ!?スライムっ!へぶしっ!!」


「あ!クソっ!!きちんと、管理しろっていつもあれだけ言ってるのによ」


僕は、飛び出た勢いで、ヒョロ男に体当たりをする。すると思いの外ほか辺りどころがよかったのか昏倒する。


すぐに、その状況を理解したガタイのいい男は、腰から剣を抜き放つ。


「僕が、なにもしないと思ったの?」


「むしろ、今まで大人しくしていた理由を、聞きたいが?」


「お前らに、興味が沸いた。それじゃダメか?」


「はっ!!戯言も大概にしろ」


男は、僕に向けて剣を叩き下ろす。


僕は、すぐにそれを交わす。再び体当たりを叩き込もうとしたが、運動神経がよかったようですぐに立て直してバックステップで後方へと逃げる。


「避けるだけが、お前の取り柄か?スライム?」


「そっちこそ。お前たちが見たあの焼け焦げた死体を僕が、作ったと言ったら?」


「質問を質問で返すなっ!!スライム風情がっ!!」


「毛むくじゃらなおっさんには、わからないかなっ!!」


そうして、僕はひたすら体当たりをし続け、おっさんが何度も何度も剣を振り回し続けた....




「はぁはぁ....スライムの癖に....やるじゃねぇか」


「僕は、君たちと違って疲れたりしないけどね」


「時間の問題っていうのわけか....お前は、俺たちを殺す気がないのか?本当に?」


「あぁ....君たちに、興味が沸いたって言ってるじゃないか」


「ほう...分かった。なら、こうしよう。俺が、お前の一撃を受けてやる。俺が負けたら、こいつと一緒にお前の意向に従おう。ただし、俺がお前を完全に防げたらお前が俺に従え」


「........いいだろう」


こうして、男同士の熱い戦いが始まった。



おっさん視点〜


へっ...馬鹿め....俺はなぁ、体に最新式のカマトトの防具をつけてんだよォ!!スライム程度の一撃なぞ...負ける気がしねぇぜ


スライム視点〜


負ける気がしない....とか、考えているんだろうが...僕は、炎と毒を操ることができる。微量の酸をこのおっさんへと吹きかけ、体の防具が溶けてむき出しになった肌に体当たりをぶち込んでやるよぉ!!




お互いが睨みつけあう....



『はぁあああああああああああぁぁぁ』


なっ!?手甲を前に出した!?少しでも守れるように...!!これじゃあ、僕の毒が、こいつの体に...ならば!!


僕は、少しだけやつの顔面に火の粉を飛ばす。


「おわっ!?」


よし...これで...やつの腕は、安全だ。あとは、毒を吐いて...こいつの体にそのまま体当たりを食らわせるっ!!


「ふっ」


なっ!?この男!?笑っている!?いや、そんな....これ以上のなにかはないはず!!


僕は、予定通り酸を飛ばして、そのまま体当たりをぶつける。


「なっ!?」


笑っていた笑みが、一瞬にして苦悶に変わり...その場に倒れる。



「僕の....勝ちだね......!!」



僕は、勝者のガッツステップを踊っていた。





「ス...スライムの旦那ぁ!!マジやべっす!!」


「おう!!兄貴....やるじゃねぇか!!」


「あぁ!!お前らは、僕の子分だからなっ!!」



それから、僕達はメキメキと実力をつけていった。赤いスライム三人組とは僕達のことっ!!


見た目は、スライムだけどきちんと僕を人間として見てくれているこの二人は、とてもいいやつだと感じている。そんな二人に恩返しがしたくて、毎日毎日...魔物を狩って、こいつらにいい思いをさせてあげる。


そんな日々が幸せだった。


「スライムの旦那....俺たちが、死んだら...どうするんっすか?」


「そうだなぁ...俺も、それが気になってたところだ」


「あぁ?なんだ?お前ら....そうだな.....」


僕は、今更ながらどうしようか...と考える。


「俺は、お前らと一緒に死にてぇな!!だからよ、お前らが死んだら僕も死ぬよ。僕の嫌いなアイツに頼んででも」


「旦那ァ!!」

「兄貴ぃいい!!」


「バカなやつらだなぁ!!」


なんだかんだ!!この場所が、僕の居場所だっ!!




END5 スライムくんが人間たちと心を通わせた物語

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る