番外編 星の色が光るまで

これは....果たして復讐だったのだろうか。


分からない。


この手に残る魔法の感触が、自分を責め続けている。

あの時僕は、火竜のことをお・父・さ・ん・と呼んでいた。


ほとんど、感覚的に呼んでいた。


虚しさが、ずっとずっと心中で燻っている。


「破壊神....みな、そう呼ぶだうな」


空っぽの体に、なにを詰め込めば満たされるのだろう。


なにも残っていない空虚な瞳に、なにを埋めればキラキラと光るものになるのだろう。


果てしない、無為が....僕の心を埋めつく。


復讐は、終わった。だから...もう、解放されてもいいだろう....





神になってから...魔物は、知性を持たないことが分かった。とにかく、殺して回る。残虐な生き物だ。


僕は、そんなものになんてなりたくなかったのかもしれない。


あの日、龍にあった泉に自然とやってきていた。


ぼんやりと、月が湖の中に見える。いつの間にか、あの龍がまた来るかもしれない。


なんて思ったりして...自分で殺しておきながら、やってしまったことに後悔なんて...




近くになんとなく祠があるのが、わかった。きっと竜の場所へと通じる道なのだろう。


でも、もう彼はいない。


ゆっくりと、祠に近づいてそれの周りを彷徨くといつのまにか、火竜の住処に着いていた。


「暑いな....僕は、なにがしたいんだろう」


少し上の方に、穴が空いているのがわかった。ここから、侵入者を監視するわけだ。


随分原始的だな。


その穴の中を通って、火竜がいたであろう場所につく。


「お....おぉ.....広いな。そして、さらに暑くなったな」


火が、ボコボコと湧き出している。ここは、そうだ。山の中で竜が寝ていた場所じゃないか?


ふと、下の方に大きな卵が置いてあるのが見えた。


あの竜が、置いていったものなのか?

いや、あいつが卵とか....ないよな?


そっと触れる。暖かい。


「生きているのか?」


すると、パキパキと中から音がする。


中には、キィキィと叫ぶ赤と青の色が混ざった竜がいた。なんというか.....どうしよう。


「よしよし...大丈夫だよ。大丈夫だから」


こ、このまま、この中に置いておいて大丈夫なのか?


お母さんは....あ、あの初めに襲ってきた水竜か?


「はぁ......」


盛大なため息をつく。仕方ない。


あいつが、置いていった大事な宝物だ。生まれたこいつに罪はない。


僕が、手をつけて大丈夫なのだろうか?色々な不安はあるな。


「ごめんな。僕が君を育てるから...そのあとで、僕を殺すというなら、受け入れよう。いや、復讐をしてくれ」


君が僕を殺すその日まで、君の面倒を見ていてあげよう。




「お父さんっ!!」


「お父さんは、やめてくれ....僕は、君のお父さんじゃない。お兄さんって言うんだよ」


「じゃあ、お父さん」


「だぁかぁらぁなぁ?」


青と赤のコントラストが綺麗なドラゴン。

竜に名前などなかったので、僕から付けることもないあえて言うなら...


「レッド・ブルードラゴン?ちょっと、長いな。」


「変なこと考えてないでっ!!あっ!!ほら、あそこに小さな魔物が、いるよ。倒そう倒そうっ!!」


「はぁ....まぁ、倒す分にはいいんだけどなぁ....」


赤と青い色のブレスを放つ。標的に命中すると、そのブレスが爆発した。


「す.....すごいな。君は、お父さん以上の存在になれるよ」


「?お父さんは、神様でしょ?」


「......そうだ....な......」


久しぶりに、レッドドラゴンのことを思い出したな。


あいつは、あの世で元気にしてるかな。

今こんなことをしてる僕を殺したいかな?

少女のことも、忘れられない。


あの時の思い出も、大切な思い出だから....


「あっ!!人間がいるっ!!あれも、倒すっ!!」


「あ、おい待てっ!!」


俺は、レッドブルードラゴンの首根っこを引っ張る。全く...戦闘狂ったら、ありゃしないな....


「お前に、一つ教えたいことがあるんだ。」


「?なに?」


「ドラゴンのあり方の話だ。」


それから、レッドドラゴンが言っていた。


高潔さについて話をした。少しだけよく分かってなかったが....何度も教えた。もう、聞きたくない...と言うほどに。





「また、その話かよ....」


「大事なことだからだ。」


まだ....まだ、君は僕には勝てない。僕に勝つなら、もっと執念深くなくちゃちけない。


「なんで、お義父さんを殺さなきゃいけないんだよっ!!」


「だから、お前の仇が俺だからだ」


「嫌だっつてんだろっ!!」


いきなり、地面を蹴りつける。大きなクレーターのようになるが...その程度、僕でもできる。


「なんで....なんで君は....僕を殺そうとしないんだ....君に、僕を殺してほしいから、ここまで頑張って育ててきたのに.....」


「......んなのっ!!決まってんだろっ!!」


そうして、義理の息子は言ってきた。


家族だからだよ。と....




END2 スライムくんに、子供ができた物語

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