第2話──なんと、自分の寿命が分かります。

 寿命測定。

 日常生活の全てにAIが欠かせなくなった。いじめはAIが現行法に則って暴行や侮辱罪と判断するようになった。不当な裁判はAIの判断で逆転判決が出ることも少なくなくなった。自動車は完全自動運転に切り替わり、手動運転は絶滅した。災害予測にもAIが導入されて、災害関連死は激減した。様々なところにAIが介入したから管理社会と揶揄されているけど、その分だけ犯罪も死亡者も激減した。


私が生まれた時には既にこの社会だった。


 私たちの生活に欠かせなくなったAI技術はついに、人の寿命にも関わってくるようになった。


それが寿命測定。生まれた日に残りの人生があと何日なのか、今の情勢や健康状態などを見て計算するのだ。


 的中率は驚異の99.99%。誰もが生まれた瞬間に死を知ることが出来る。寿命が短いほど、日数までより正確に測定し、寿命が長いほどブレも大きい。測定は申請すれば基本的に何度でも受けられるから死期が近い人は終活の絶対的な指標にも使用している。


 残りの人生、あと何日ってクリスマスカウントダウンの感覚で、 自分が死に近づいているのが分かるのだ。


 導入当時は批判も多かったらしい。誰しも思っていたより寿命が短かったら絶望するからだ。それなら知らない方がいい。そのため、自分の寿命を知るのは任意だ。知ることが出来るのは本人だけで両親、親族でも当人の寿命は聞くことができない。


 寿命測定制度が出来てから、残りの日数をどう生きるかと考える人が主流になっていた。

 

「もし余命が半年だとしたらどう生きるか」とか、「死ぬまでにやりたいことリスト」とか。

 それが現実となったのだ。

 一日を大切に生きる人が増えたのと、AI技術によって人の死を未然に防ぐ仕組みが次々に発展したおかげで、日本人の平均寿命は九十歳を超えた。出生児の寿命測定でも九割以上が八五歳を超えている。

 十八歳未満、つまり大人になれずに死ぬと測定される人は0.0001%未満。


 まさに理想的な世界だ。


私がその0.0001%に入っていることを除けば。













 4月8日に生まれて、17歳の8月23日に死ぬ。


 私の人生カウントは、たったの6340日だ。

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