第14話 仕官(繁信16才)

空想時代小説 


 宮城県蔵王町に矢附という地区がある。そこに西山という小高い丘があり、その麓に仙台真田氏の屋敷があったといわれている。ただ、真田信繁(幸村)の末裔とは名乗れず、白石城主の片倉の姓を名乗っていた。その真田の名を再興するべく、信繁の孫である繁信が活躍する話である。


 年があけ、繁信は松代の真田屋敷にいた。真田屋敷は城外の北側にあり、武家屋敷が並んでいる一画にある。講武所はその敷地内にある。正式な仕官はまだだが、皆、「源四郎殿」と呼ぶようになっていた。源四郎の役目は、講武所付きというもので、講武所に関する業務全てを行っていた。事務的な仕事は、知念あらため三井知矩(とものり)が携わっていた。知念の名づけ親は、真田源斎殿が引き受けてくれた。幻次郎も真田源斎に目通りが許され、草の者(忍者)として、講武所の下働きをするようになっていた。そこに新しい仲間が加わった。真田の庄で、繁信の刀を奪おうとした円寿坊だ。

「おう、雪の中よく来たな。てっきり雪解けしてからと思っていたぞ」

繁信の問いかけに円寿坊は衝撃的な話をしだした。

「わしは山賊をしておった」

繁信は真田の庄のことかと思って笑って聞いていた。

「そこの妻女山の山賊の仲間になっていた」

「何! 妻女山とな!」

繁信の目つきが変わった。

「前に、繁信殿から妻女山に山賊がいて困っているという話を聞いていたので、昨年からその仲間になっておった。冬になり、蓄えが少なくなり、今度麓の村を襲うことになった。それを知らせたくて、抜け出してまいった」

「いつ襲う予定じゃ?」

「次の満月の夜に」

「満月というと、明日ではないか? どこの村かわかるか?」

「それがわからん。わしは地の利にうとい。村の名前が出てもどこかよくわからん。また詳しくは、お頭周辺の者しか知らされておらん」

「うーん、村がわからなければ守りようがない。ここは幻次郎の出番だな」

そこで、幻次郎が呼ばれ、繁信が小声で策を与えた。幻次郎は、風のようにいなくなった。

「ところで円寿坊殿、山賊の人数は?」

「わしがいたところは、10人ほどだった。そこに小頭という者がいて、統率されている。小頭や他の者の話を聞くと、そういう小屋が5つほどあるようだ」

「50人はいるということか」

「お頭の小屋には多くいるようだ」

「武器はどんなものがある? 種子島(鉄砲)は?」

「種子島もある。小屋には2挺あった。刀や槍、それにわしのような僧兵崩れがいて、薙刀もある。弓矢を使えるやつもいる」

「まるで野武士だな。村々を襲うのを生業としているのだな」

「そのようだ。わしは一度も襲うのに参加しなかったが、小屋の半分ほどが参加しているようだ」

「ということは、2~30人が襲ってくるわけだな。それならば何とかなるかもしれん」

「繁信殿には何か策があるのですか?」

そばにいた三井知矩が尋ねた。

「まぁ、うまくいくかはわからんがな」

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